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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2021年12月の記事一覧

『ベツレヘムの星』(宮田光雄・新教出版社)

『ベツレヘムの星』(宮田光雄・新教出版社)

古書店で偶然に見つけ、宮田光雄さんの名を見て、これは知らなかったと思い、購入した。「聖書の信仰」の著作集は全部読ませて戴いたが、本書はエッセイによる辞典のようで、魅力に思えたのだ。サブタイトルは「聖書的象徴による黙想」とある。クリスマスの黙想と称した序章の中で、そのクリスマスの記事の中に出てくる星だの光だのが、聖書では何かを象徴しているに違いない、という辺りから、聖書を象徴として読み解いていくこと

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『聖書と村上春樹と魂の世界』(上沼昌雄・藤掛明・谷口和一郎・地引網出版)

『聖書と村上春樹と魂の世界』(上沼昌雄・藤掛明・谷口和一郎・地引網出版)

偶然の出会いだった。「聖書」というキーワードで本を探すのは日常なのだが、遊び心でそこに「村上春樹」と加えてみた。するとヒットしたのが本書だった。2013年刊。でも知らないぞ。なんだ、これは。どうせまた興味本位で、素人同然の人が思い込みで何か書いているのに違いない、と詳細を見てみると、予想は裏切られた。聖書神学舎という保守的な団体で仕事をしている人、聖学院大学という立派なミッションスクールの教授で心

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『聖書を読んだら哲学がわかった』(MARO・日本実業出版社)

『聖書を読んだら哲学がわかった』(MARO・日本実業出版社)

著者の肩書きは表紙に書かれている。「上馬キリスト教会ツイッター部」である。いま一時の勢いは静かに落ち着いたようだが、それでも10万人を越えるフォロワーがいるツイートというのは、キリスト教関係では異例である。つまりは、クリスチャンでない人にたいへんな支持を受けているということだ。
 
それは、キリスト教らしからぬ、おふざけと、若者の感覚のツボを突いてくる、気取らない呟きなのである。教会そのものは、極

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『ろうと手話』(吉開章・筑摩選書)

『ろうと手話』(吉開章・筑摩選書)

てっきり、手話通訳者かそれに準ずるような人が書いたものかと思っていた。しかし肩書きなどからすると「やさしい日本語」の推進をメインにしている人のようだ。つまり、外国語を母語とする人が日本語の環境で生活する必要になったときに、必要なことは、できるだけ分かりやすい日本語で生活情報が得られるような仕組みである。福岡の柳川でその事業を行っているという。西日本新聞に時折「やさしい日本語」によるニュースの運動が

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『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(中村哲・NHK出版)

『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(中村哲・NHK出版)

サブタイトルだか、題名の一部なのか曖昧なままに、「中村哲が本当に伝えたかったこと」と記されている。2019年12月4日。その知らせは突然に届き、私たちの心の中央を貫いて穴を空けた。中村哲さんが、殺害されたのだという報道は、しばらく信じられなかった。
 
200頁余りの本書にあるのは、中村哲さんの生の声である。声ではなくてもちろん文字であるが、これはNHKの深夜番組「ラジオ深夜便」の音声が見つかった

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