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こころ

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ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
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#京都

家庭教師などのこと

家庭教師などのこと

まだあの頃は、家庭教師の仕事があった。京都ならでは、だったのかもしれない。家庭教師を、名だたる大学ではない凡庸な学生に頼む、というのも不思議ではある。家庭教師のニーズがあることについて、考えるところはあるが、軽々しい邪推で偏見を呼んではいけないので、呟くことはしないことにする。
 
大学からの紹介で、すぐに下宿を決めた。古い建物だった。自炊ができて、空間があり、家賃が安いとなると、満足だった。もち

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何が言いたいのか

何が言いたいのか

この人は、要するに何が言いたいのか。京都人は、それを察知する文化をもつため、その能力を身に着けている。素朴に、ひとの言うことを表面の意味で受け取りはしない。
 
さすがにぶぶ漬けをいま言う京都人はいないかもしれない。でももしもあれば、それは単なる「帰れ」では済まされない嫌みをこめて言われている、という覚悟でいる必要があるだろう。箒を逆さに立てもしないだろう。だが、日常の様々な場面で、本音を直接言わ

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であいもん

であいもん

2022年春から始まったテレビアニメでは、『SPY×FAMILY』が際立って注目されているが、じっくり見るタイプの人々から非常に評判がよいのが、『であいもん』だという。京都の和菓子店を舞台に、ひとの心が集まって、美しいハーモニーを呈する物語だ、と一応しておこう。さすがKBS京都(とほぼ同一の神戸のサンテレビ)はテレビ放映しているが、ほかはネット配信ばかりであり、私もその恩恵に与っている。地味な物語

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京都の先輩の話

京都の先輩の話

福岡から、京都の大学に来た私をあたたかく迎えてくれたものは、たくさんある。まず逆の意味から言えば、田舎者の私を騙すような輩に出会うことがなかったのは幸いであった。そのうち、学生を大事にする京都の風土があるのもよく分かった。大学に紹介してもらったアパートは、自炊ができるという条件で探した、古いもので、その分家賃もいくらか抑えられていたが、私には決して安くはなかった。一か月の食費は、家賃の半分で賄った

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平家物語にハマっている

平家物語にハマっている

アニメーションが、今年1月から放映されている。幸い福岡の地上波テレビでも放送され、欠かさず見ている。もちろん、日本の古典文学と言えるあの『平家物語』であるが、語り手たる架空のキャラクターを入れて、巧妙なアレンジを呈している。
 
語り手は「びわ」と呼ばれるようになった、琵琶弾きの少女。平家の武士に父を殺されるが、清盛の長男の平重盛に拾われて平氏と共に暮らすようになる。母を探す目的もあったが、平家の

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長男

長男

長男の出産は、とにかく初めてのことなので、一つひとつが驚きであり、冒険であった。父である私ですらそうだったので、母たる立場の妻からすれば、なおさらであったことだろう。
 
「こんにちは、赤ちゃん。私がママよ」というような言葉を、産まれた後で告げるのは、男ですよね。作詞者の永六輔さんは、ある女性に見破られたという。女性にとり、赤ちゃんは、外に出る前からずっと呼びかける対象であるから、産まれてからいま

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