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教会の問題

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キリスト教会はとても居心地のよいところです。でも、満点を期待してはいけないでしょう。たくさんの問題を抱えています。とくに内側にいると見えないものを、なんとか見ようとするひねた者が…
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#本

『光かがやく未来へ』(千葉明徳・イーグレープ)

『光かがやく未来へ』(千葉明徳・イーグレープ)

本書を読み始めて、最初に言い様のない違和感に襲われた。目次はいいとして、最初に出会う文章が、「推薦のことば」であった。それが10頁もある。5人が寄せている。教会や保育園をつくったということで、大きな働きをした著者だということは分かる。だが、これほどの推薦文を冒頭に並べる本は、ちょっと記憶にない。
 
「はじめに」は「死刑囚からの手紙」であった。すでに回心した死刑囚が、著者を呼び、若い人たちに福音を

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『牧師、閉鎖病棟に入る。』(沼田和也・実業之日本社)

『牧師、閉鎖病棟に入る。』(沼田和也・実業之日本社)

本書を探した経緯がある。簡潔にいうと、心を病む牧師についての資料はないか、という探し方をした。本当は、精神的に病んだ牧師をどう扱うか、というキリスト教的な対処が知りたかった。あるいは、牧師が心を病まないようにするためにはどうすればよいか、という観点の予防について知りたかった。
 
ところが、そういう本が見当たらない。かなり検索を掛けたが、なかなか引っかかってこない。アメリカにはそうした専門のカウン

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入門

入門

「哲学入門」というタイトルの本は、実に多い。シンプルにそれだけでも沢山あるが、もしそれにいくらかの飾り言葉が付くものまで含めると、数え切れないほどである。
 
何かを真面目に考えたい、という気持ちが、人々に「哲学入門」を手に取るように仕向けるのかもしれない。中には、哲学だったら、自分の考えをどんなふうに言い述べても構わないのだろう、と勘違いしている人もいる。科学であれば、いくら自分の信念を述べても

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『信じる者は破壊せよ』(キャスリーン・ニクシー;松宮克昌訳・みすず書房)

『信じる者は破壊せよ』(キャスリーン・ニクシー;松宮克昌訳・みすず書房)

これはキリスト教全体に関わるような批判の書である。キリスト教が、ギリシアやローマの文化をいかに破壊したかを示す。
 
もちろん、ローマ帝国の許で、キリスト教は不遇な扱いを受け続けてきた。だが、ローマ帝国自体の弱体化もあり、その他多くの事情が重なって、ついに帝国公認の宗教となる。つまり、権力者がこの宗教をメインに扱うようになったのだ。
 
権力を有するようになったキリスト教会が破壊をした――のかどう

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仏教のすすめ

仏教のすすめ

奇を衒った題を掲げてしまったように見えるかもしれない。これは、小冊子のタイトルである。書店に置いてあり、無料で持ち帰ることができる。非売品である。
 
サイズはA5で、130頁を超える。キリスト教系のブックレットの同サイズのものはいまや千円を超えるから、かなりの資金が必要になる規格と言えるだろう。
 
内容の殆どは、本の広告である。最初の十数頁に、東北福祉大学学長の千葉公慈氏による、「仏教という生

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説教で本を紹介するとき

説教で本を紹介するとき

礼拝の壇上で、説教者が本を紹介することがある。遠慮がちに、「よかったら読んでみてください」と口にする。パワーをもつ立場の者が、「読め」と命ずることは、圧力をかけることとなる。他方、牧師も教会からすると雇われの身であるとするなら、あまり思い切ったことは言えない面もあるだろう。それだから、「この本を……」と紹介するというのは、かなり勇気の要ることなのではないかと想像する。本当は、めちゃくちゃ読んでもら

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間違っているのは私のほうだろうか

間違っているのは私のほうだろうか

「サン・ジョルディの日」である。書店が瀕死の状態になっているというが、私もそれに加担している以上、聞こえのよいようなことを言うつもりはない。せめて本を買うことに関してだけでは、出版界に参与していると言わせてもらえれば、と願っている。
 
先日、あるキリスト教関係の出版社のサイトを訪ねて、ある本の紹介文を読んでいた。すると、文意が解せないところがあった。
 
その本がAという本だとしよう。その本は、

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『神の国』

『神の国』

アウグスティヌスの『神の国』を読み始めた。ふと、読みたくなったのだ。あまりにも高価だと手が出ないし、大きな本の塊の購入は、家族に叱られる。これは五巻あるが、文庫本である。お許しを戴こう。古いものなので、定価よりも安く手に入るものが多い。第一巻は、少し質の悪いものしか買えなかったが、読むのには何も差し支えない。
 
これが、なかなか面白いのだ。ドイツ観念論や現代フランス哲学と比べると、あまり深く考え

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証し

証し

いま、たいへん気になっている本がある。『証し 日本のキリスト者』というものである。
 
著者はキリスト教の信徒ではない。ノンフィクション作家だ、と言ってもよいだろうか。キリスト者135人を取材し、その「証し」を集めた。教会関係者でもないし、出版社はKADOKAWAである。そこでキリスト教関係者も、あまり気づいていないように見える(もちろん紹介している人もいる)。
 
私は書店で実物を見、魅力を覚え

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『世界 説教・説教学事典』

『世界 説教・説教学事典』

(W.H.ウィリモンとR.リシャー編・加藤常昭と深田未来生日本語版監修・加藤常昭責任監訳・日本基督教団出版局・¥15500+税・1999年2月発行)
 
もちろん中古で購入。しかしこれのどこが、中古本の評価で「良い」程度なのであろうか。良すぎるのである。中身は新品同然である。よく見ると、函の一部が少しだけめくれている。だがそれが何であろう。価格は、元の数分の一であった。
 
以前の教会の棚にあるの

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