お笑いの話。7話。
有効期限切れのクーポン券を渡され後輩に恥をかいた先輩は激怒していた。
激怒の相手はクーポン券を持っていた先輩だ。
それより激怒の相手の先輩テレビで見たことあるぞ!
今、めっちゃ売れてる先輩だ!
何でこんなところに!
いや、そりゃそうか。そりゃそうだ。そうだよな。
お笑い芸人の舞台劇場にいるのだから。
それを巻き込まれないように影からそっと見守った。
「クーポン券の期限が切れてるのわかってて絶対わざと渡したでしょ!」
『ギャグや、ギャグ。笑いや、笑い』
『芸人なんだから、ギャグって気づくでしょ、芸人なんだから』
『ギャグってわかるでしょ』
「ギャグの守備範囲越えてます!」
「サッカーで例えるならオフサイドです。オフサイドトラップです!」
「それはギャグでも何でもありません!」
『何やスポーツ例えツッコミ言えるぐらい元気じゃないか』
『てことはそれほど怒ってないってことやな』
『それもギャグって事やな』
「ギャグじゃないです!」
「気まずくならないように言ってるだけです!」
『何やそれ』
『わっーた、わっーた!』
『いくらや』
「いくらや?何がですか」
『だからいくらやって。クーポン券が使えなかった差額の金額』
「どういう意味ですか」
『わからんやっちゃなー』
『これで足りるか?』
その手にしていた金額は一品300円のお得な店、ご飯代の割り勘代金より、合計金額より多めの金額だった。
『おい、どうした?』
『いいのか?』
意地とプライドか。それとも金額か。
先輩は迷っていた。
それほど騒いでいれば気づかない人はいないはずだ。
その姿を見てないふりして、その場にいる芸人は見ていた。
どっちだ。意地とプライドか。それとも金額か。
金額か。金額か。
いや、プライドか。でもプライドで飯は食べれない。
さあ、さあ、さあ、さあ、さ、さあ、さあ、
どっち!どっちだ!
「まあ、これからは気をつけてくださいよ」
先輩は金額を選んでいた。
マジかよ。
その姿を、その場を見ていた芸人からマジかよ。
とため息が聞こえてないけど聞こえていた。
夢はnoteの売上でキャンプすることです。 後、ニンテンドースイッチです。 後、書籍化です。