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破天荒な父。父の遺品

僕と父親の、破天荒で少し笑える話です。

■■■ 父の遺品 ■■■

父が亡くなってから数年後のことだった。
僕が使っているタンスの奥底から父の日記が出てきた。

僕のタンスに日記を隠したということは、父は僕にこの日記を見て欲しいからだと解釈した。
少し気が引けたが、僕は日記を見ることにした。

うん、どうやら僕には異母兄弟が世界に20人ぐらいいるみたいだ。

そのうちの5人は実家の同じ町内に住んでいるらしい。
確かに実家周辺は僕に似た顔が異常に多かったし、父が隣の家から出てくるのを何度も目撃していた。

さらに4人は、父の会社にいた女性従業員のもとにいるらしい。
小さい頃、父の会社に遊びに行った時、父の部屋から慌てた様子でお姉さんが出てきたことがあった。そういうことだったようだ。

あとは中国、北朝鮮、ロシア、フィリピン、香港、韓国にいるらしい。

父は近場が好きなようだ(笑)

僕は嬉しかった。父は亡くなっても、脈々と父の血がこの地球上に広がっている気がしたからだ。

日記の最後のページにはUSBメモリが挟まっていた。

僕はドキドキしながら中身を開いてみた。

中から「宝物」「宝物MAX」という2つのフォルダがでてきた。

まずは、恐る恐る「宝物」を開くと、僕の写真が入っていた。

子供の頃の写真は何百枚も時系列順にスキャナーされていた。
これだけの量を一枚一枚とり込むのは相当な時間がかかったと思う。

大人になって一緒に過ごすことは少なくなったが、それでも会う度に撮られていた写真は全てこの中に入っていた。

時を越えて父の想いが伝わり、止まらないほどの涙が出た。
鼻水がズルズルになり、僕の想いは一気に溢れた。

父は僕を本当に大事にしてくれていたんだなと改めて思った。

お父さん、ありがとう。
僕はお父さんの下に生まれて本当に良かったと思ってる。

父のように後悔せず、自分らしく今を精一杯いきようと僕は強く思った。

涙と鼻水まみれになったまま、次に「宝物MAX」を開いてみた。

「宝物」をはるかに凌ぐ量の写真が入っていた。

全て女性との写真だった。

涙と鼻水は一瞬で止まった。

人間の生理現象はこうも急にブレーキが効くとは。
せめて形だけでもいいから、「宝物MAX」の方を僕のフォルダにしておいてくれよ。

そう思ったが、なんだか父らしい一面を見て、また僕は笑顔になってしまった。

宝物MAXには、さらにフォルダ分けがされており、非常に綿密に管理されていた。
同じフォルダにExcelが格納されており、全ての写真に対して「喜」「怒」「哀」「楽」「エロ」「和」「洋」「中」の基準で写真に点数がついていた。

喜怒哀楽やエロはまだしも、和洋中ってなんだ。和洋中って。

ちなみに、「怒」と「哀」が10点満点の写真は、金属バットを持った女性と、足を骨折して松葉杖の父が、笑顔で並んでいる写真だった。

もし僕が人生でどれだけ辛い状況になっても、この写真があれば絶対乗り越えられると確信した。それぐらいの傑作だった。

父からは、「和洋中」という言葉は料理以外にも使えることを学んだ。

続く

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