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三毛猫ミーのクリスマス

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クリスマスイブ。猫と、人間が共存する島を舞台に、猫たちが、冒険をくり広げます。 「この島で亡くなった猫たちが眠るネコロポリス」 「パワーキャンドルを隠した深い森の猫ヶ森(ねこが… もっと読む
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三毛猫ミーのクリスマス 第1話 幽霊の正体!見~た~ニャア~

新企画“三毛猫ミーのクリスマスのご案内当ブログのメイン記事「マーケティング編」に続き、新しい企画が始まりました。

しかも、ビジネス記事ではなく、小説。ネコを主人公にした小説です。

では、どうぞ、お楽しみ下さい。

(ここから物語が始まります。読み終わるまで5分くらいかかります)

 

クリスマス・イヴの前夜らしからぬ、お化《ば》けでも出そうな、生《なま》あたたい風が吹く夜でした。

 静まり

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三毛猫ミーのクリスマス 第2話 カ~ラ~ス~なぜ鳴くの~?その理由は猫にとって恐怖なのニャ

https://note.com/tanaka4040/n/n143adf1a9ec0から続く

ギャア!
 ギャアギャア!

 けたたましいカラスの鳴き声に目を覚ました《あたし》が、音源《おんげん》の方角《ほうがく》を見やると、数羽のカラスが、朝焼けの空を旋回《せんかい》しては、急降下《きゅうこうか》を繰《く》り返していた。

 急降下の先の草原では、小さな黒猫《くろねこ》が、転《ころ》げまわっ

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三毛猫ミーのクリスマス 第3話 三毛猫はメス猫の証!オス猫は普通いニャ

https://note.com/tanaka4040/n/n64a85b505acatから続く

影の出処《でどころ》をたどると、そこには、三色の丸々と太った大きなブチ猫が、ふんぞり返っていた。背後には、子分らしき十数匹のオス猫たちが控《ひか》えている。

 その一群を見た黒猫クーは、あたしの後ろへサッと素早く隠れ、
「あいつ、嫌われ者の、ブチ猫ブーだよ」
 と教えてくれた。

 その声が聞こえ

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三毛猫ミーのクリスマス 第4話 島の広さは千葉ネズミーランド半島の約二倍ニャ

 https://note.com/tanaka4040/n/n64b63b8a5ce8から続く

あたしたち猫にとって、散弾《さんだん》銃の重低音《じゅうていおん》は、虎《とら》のような捕食《ほしょく》動物の咆哮《ほうこう》を連想《れんんそう》させる。まだ耳鳴《みみな》りが止《や》まない。

「銃で撃《う》つなんて、ひどーい」

 あたしは砂埃《すなぼこり》を払いつつ、正確には、舌《した》で毛繕

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三毛猫ミーのクリスマス 第5話 幸せな自分を感じられるパワーキャンドルが胸に

https://note.com/tanaka4040/n/nce4904ba0eddから続く

使い古しの廃材《はいざい》で建てられたような木造《もくぞう》の平屋《ひらや》が三棟《みむね》、中庭《なかにわ》をコの字に囲んでいる。この、隙間《すきま》風が吹き込みそうに寂《さび》れた家々《いえいえ》が、ローコー大統領の邸宅《ていたく》だという。
 豪華《ごうか》な屋敷《やしき》を想像していたあたしは

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三毛猫ミーのクリスマス 第6話 どうしてブチ猫ブーのみ水をかけたニャ?

https://note.com/tanaka4040/n/n5d8629863c48から続く

「世の中に、不味《まず》いもんなんて、あらへん。お腹が空《す》けば、何でも旨《うま》い。腹ぁ減《へ》っとりゃせんのに、もっと食べようとするから、不味《まず》う感じるんやろな」
と、モンクーが、両前足の肉球《にくきゅう》を合わせ、
「ごちそうさん」
と、頭を下げて立ち去る姿を見送りながら、アメリカンショ

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三毛猫ミーのクリスマス 第7話 あんたに勝てないと思えば誰もいじめニャー

https://note.com/tanaka4040/n/n83b36a3b1dbfから続く

「おーい、大丈夫かーい?」
 黒猫クーと、アメリカンショートヘアのショーと、ロシアンブルーのシャドーの三匹が、あたしを心配して駆《か》け寄《よ》ってきた。あたしは舌《した》で毛繕《けづくろ》いしながら、
「大丈夫」
と答えたが、解《げ》せないことがあって、気持ちは塞《ふさ》いでいた。どうして、スケサー

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三毛猫ミーのクリスマス 第8話 猫ヶ島へ寄付せずんば猫で儲けるべからず

https://note.com/tanaka4040/n/n4c9291cf9b53から続く

 ネコロポリスをあとにしたあたしたちは、狭《せま》い吊《つ》り橋を縦《たて》一列に並んで渡っていた。
 吊り橋といっても、厳密《げんみつ》には、植物の蔓《つる》で橋桁《はしげた》を両岸《りょうがん》から支えている原始的な斜張橋《しゃちょうきょう》で、猫四匹が乗っても少々ゆれる。
「ネコロポリスって、猫

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三毛猫ミーのクリスマス 第9話 それさえ知らずに来たのかニャ

https://note.com/tanaka4040/n/nfb5d0eec4cbaから続く

 どうせチンケな港《みなと》だろうとたかをくくっていたあたしは、思わず目を見張《みは》った。中々どうして、立派な商港《しょうこう》である。
 それもそのはず、荒波《あらなみ》うねる外洋《がいよう》を快適《かいてき》に航海《こうかい》できる七千トン級の船が発着する港湾《こうわん》である。
 小型船舶やボ

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三毛猫ミーのクリスマス 第10話 猫の毛で毛糸を作る?そんなに猫の毛は集まるの?

https://note.com/tanaka4040/n/nc4323f3b18d2から続く

 さながら、お祭りの縁日のような賑《にぎ》やかさだった。
 埠頭《ふとう》いっぱいに陽気な音楽が流れ、何十もの屋台が密集し、さまざまな猫の着ぐるみが愛想を振り撒《ま》き、人々は笑い、語らい、食べ、飲み、時に歌い、歓声を上げ、猫との触れ合いを楽しんでいた。
 写真撮影で人気が集まる着ぐるみは、毛長《けな

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三毛猫ミーのクリスマス 第11話 後悔したところで遅せえ!時間は売ってニャア

https://note.com/tanaka4040/n/n2eb15e3db100から続く

 港を埋め尽くす観光客の九割が、船内に一泊し、明日のクリスマスに帰る。
 残り一割は、次の船まで一週間、あるいは、それ以上、長期滞在する。
「観光客は、どれくらい来るの?」
「船が週に一往復ですから、月間五千人。加えて、各国からの視察や、旅行。ペット業界が主催するツアーなどで、年間十万人くらいです」

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三毛猫ミーのクリスマス 第12話 弓矢のクロスボウ?これはヤバイかもニャ

https://note.com/tanaka4040/n/nbe786336889eから続く
(今回は、猫が危険に陥るシーンに遭遇します。怖いシーンが苦手でしたら、読まないようお勧めします)

 港の至る所で、猫が顔を洗っていた。猫が顔を洗うときは、雨が降る予兆《よちょう》か、あるいは、満腹になった証拠《しょうこ》。
 猫は、腹が満たされると、寝ぐらを求めて、姿を消す。そうして、一匹ずつ、いつの

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三毛猫ミーのクリスマス 第14話 間違いなく助けを求めてる!急ぐのニャ

https://note.com/tanaka4040/n/n2716cb3e174dから続く

外に出ると、黒猫クーにバッタリ出くわした。もの知り猫のリューも一緒だった。
 あたしは、堰《せき》を切ったように、ローコー一味《いちみ》の陰謀を語って聞かせた。
「……というわけなのよ。これって、やばくない?」
 それを聞いた黒猫クーと、もの知り猫リューは、お互いの顔を見合わせ、笑った。
「何を笑って

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三毛猫ミーのクリスマス 第15話 守ってあげたくなるメス猫になりニャ

https://note.com/tanaka4040/n/n8b0f7d5553d7から続く

 あたしたちは、吊り橋へ急いだ。しかし、吊り橋の上からは、猫一匹見えない。
「おかしいなあ。確かに、声が聞こえたんだけど」
 聞こえた方角は合っている。
「誰もいませんね」
「だったら、逆転の発想で、吊り橋の下から見上げてみよう」
「それ、名案かも」
 あたしたちは、急斜面を駆け降りて、川辺に立った。

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