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酒場学 by Syupo

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酒場について、より深く考察した記事です。メンバーシップ「Syupo酒場部」にご入会頂くと、すべて自由にお読みいただけてオトクです。
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ビアホールか、ビヤホールか【酒類ライターを悩ます表記揺れ】

ビアホールか、ビヤホールか【酒類ライターを悩ます表記揺れ】

マニアックだけどおもしろい各社の表記違い言葉を発信するという仕事をしていると、同じ意味でも表記が微妙に異なるものに注意するようになります。

ボージョレヌーボーなのか、ボジョレー・ヌーボなのか。このように、外来語ではとくに"揺れ"が多く存在します。

アサヒ:ボージョレ・ヌーヴォ
キリン:ボージョレ ヌーヴォー
サッポロ:ボージョレ・ヌーボー
サントリー:ボジョレー ヌーヴォー

そんなのは、書き

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酒場の相性

酒場の相性

学生時代に専攻した理系の分野とは全く無関係の「酒」の世界に浸っているので、学友とは疎遠になっていた。

それでも、皆がマジメな道を歩むわけでもなく、酒にハマり、私が文字通り浸っている酒と酒場の世界にやってくる人がときどき居る。(無論、酒が不真面目だと言うつもりはない。ただ、なんとなく酒飲みのほうが肩肘張らずに付き合えるから好き)

元気だった?今何しているの?昔から酒好きだったよね。
そういう基本

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野毛はなぜ飲酒レジャーの街になったのか

野毛はなぜ飲酒レジャーの街になったのか

サントリー傘下の飲食部門を担当する株式会社ダイナックの秋山武史社長が、「大衆すし酒場 スシマヅメ」 オープン時に話した言葉です。

野毛だけでなく、赤羽や立石、大阪の京橋、天満も、酒場の聖地と呼ばれるようになり、休日は若い世代を中心に、お昼から梯子酒を楽しむために遠方からもどっと押し寄せるようになりました。

すっかり観光地です。

もともと街の飲み屋さんは文字通り「大衆の酒場」で、仕事帰りに一杯

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ガラパゴスで何が悪い。日本の缶酎ハイは世界一

ガラパゴスで何が悪い。日本の缶酎ハイは世界一

欧米発のRTDをはね除ける国産酎ハイ欧米でブームとなった「ハードセルツァー」というお酒のジャンルをご存知でしょうか。セルツァーとは炭酸水のことです。ハードは、ソフトドリンクに対する表現で、アルコール入りの炭酸水を表しています。

「なんだ、酎ハイじゃん」
はい、その通り。酎ハイです。きっちりとした定義がなく、ベースのアルコールはウォッカなど様々。日本の酎ハイが「ウォッカ」や「焼酎」ベースなのに対し

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店主の人柄

店主の人柄

常々、大衆酒場は属人的商売の極みだと思っています。

「対話を大事にするバーのほうが人柄はでる」
「いや、ありふれた大衆酒と乾き物で楽しませられるスナックのほうが属人的だ」
などの意見もあるかと思いますが、日常の延長で考えれば酒場が一番ではないでしょうか。

アフターコロナで売上を回復させたのは個人経営の大衆酒場でした。チェーン店はいまだに2019年比で80%程度にとどまっているところが多いと聞き

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骨太コンセプトの酒場が最後は残る~生き残る店の特長

骨太コンセプトの酒場が最後は残る~生き残る店の特長

膨大な軒数の居酒屋を取材したことで、だんだんと「続く店」、「淘汰される店」の傾向が見えてきました。

帝国データバンクによると、2023年の居酒屋・カフェ倒産件数は過去最多。そもそも需要に対して店が多すぎると言われている居酒屋ですが、さらに酒類を含む仕入れコストの高騰、人手不足など、コロナ禍以前よりも経営環境は厳しさを増しています。それでいて利用者は、コロナ前の水準で"コスパ"をみてくるため、増加

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ホンモノの角打ちとは

ホンモノの角打ちとは

私が考える最高の角打ちとは、地域の人のたまり場になっている店です。近所の人が集まり、ちょっとしたコミュニティができている店は、飲みに行く価値があります。

なぜなら、私が酒場や角打ちを選ぶ理由は、その場所が持つ「地域性」にあるからです。

地域性と言っても、アンテナショップが意図的に作り上げた“土地の色”とは異なります。 アンテナショップは、ハイクラスの地酒や地元の珍味を取り揃え、丁寧な接客の店員

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最速で名酒場にたどり着く方法

最速で名酒場にたどり着く方法

口コミ情報サイトの上位掲載の店に向かったら、予約で満席だった。
誰もが一度は経験することです。

インターネットでお店を探すことが当たり前になった今、考えることは皆、同じです。

良いお店をみんなで共有できることはとても良いことですが、その分、お客が集中するようになり、繁盛店とそれ以外の差が開いてきました。その傾向はこれからも続くでしょうが、誰も幸せにならないように思います。

口コミが集まる居酒

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酒場は人なり

酒場は人なり

「文は人なり」は、文章に書き手の人となりがわかるという意味ですが、これは酒場にも当てはまると思いませんか。

几帳面な大将の店は、店先から店内までピシッとしています。醤油差しに入る醤油は常に補充されていて、液垂れなんて皆無。暖簾はアイロンがかけられ、品書きの文字も丁寧です。そうした大将の人柄を感じてか、客層もピシッとしたタイプが多く、全体的に引き締まった雰囲気に包まれていきます。

いい酒場は、い

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初めての酒場の入り方

初めての酒場の入り方

誰だって、初めて入る酒場は緊張します。「気になる店があったけど、勇気がなくて入れなかった」という話をよく聞きますが、当然のことだと思います。

居酒屋はチェーンと個人店で役割が全く違うレンタル会議室的存在

個人経営の居酒屋から漂う"入りにくさ"を徹居的に排除しサービスを均一化したから、チェーン居酒屋は戦後これほどまでに広まったわけです。飲み屋の雰囲気を楽しみたいのではなく、飲食できる"会合場所"

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薄づくりグラスや平盃はなんでも美味しくなるのか

薄づくりグラスや平盃はなんでも美味しくなるのか

東京・銀座にあるサッポロ黒ラベルのアンテナショップでは、比較的薄いグラスで提供され、「これが、私たちサッポロの考えるPERFECTです」というスタンスをとっています。

同じサッポロでも、銀座ライオンは昔ながらの分厚いジョッキで提供し、「これが、伝統のサッポロライオンの生です」と伝えてきます。嗜好品ですし、気分によって印象が変わるお酒は、数学的な「これが一番美味しいグラス」はないと思うので、こうし

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 昭和の酒場は儚い存在 ~時代の変化に無縁ではいられない~

昭和の酒場は儚い存在 ~時代の変化に無縁ではいられない~

長年の続いてきた街に根付く個人系飲食店(居酒屋・酒場・食堂・町中華)の減少に歯止めがかかりません。物価高騰、日本経済の停滞、高齢化、要因は様々ですが、昭和に築かれた日本の外食文化は消滅の危機に瀕しています。

経営者・店主の高齢化と後継者問題最大の問題は、店主の高齢化です。いま、注目を集めている店や、これを読むあなたの行きつけで、後継者候補が店を手伝っている店はどのくらいあるでしょうか。

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首都圏梯子ライン ベスト10(後編)4位~1位

首都圏梯子ライン ベスト10(後編)4位~1位

おまたせしました。一日券を買って各駅を飲み歩きたくなる、首都圏梯子ラインランキング、いよいよ4位から1位をご紹介します。このランキングは、駅前の酒類提供飲食店の軒数に、50年以上続く老舗酒場のようなランドマーク級飲食店の存在を加味してまとめています。

4,常磐線(首都圏)4位は常磐線。上野からはじまり、北千住や松戸、柏、取手とベッドタウンを経由し、郊外や土浦、水戸、さらには日立、いわき、仙台まで

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酒場カウンター図鑑

酒場カウンター図鑑

一般的な飲食店は純粋に食事の美味しさやコストパフォーマンスが評価軸になりますが、酒場の場合は情緒感が加わります。ここで言う情緒感は、そこにいて「あぁ、いいなぁ」と心を動かすなにか。

「emotional(エモーショナル)」のひとつだと思うものの、最近の"エモい"とは違います。いまの"エモい"は、新海誠アニメやジブリアニメ的な画や、レトロ感、黄昏的なものを表しますが、酒場で感じる情緒感は、そこに人

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