名字 (1分小説)
イタリアから来日した、三ツ星レストランのシェフによる講習が開かれた。
まずシェフは、フライパンを熱した。
「タカハシ、油、玉ねぎ、ニンニク入れる」
片言の日本語の指示に従い、高橋は、フライパンに油、玉ねぎ、ニンニクを入れた。
「ヤマダ、火、強く強く」
山田は、ガスコンロの火を最大にした。
「スズキ、焼く」
鈴木は、フライパンの柄の部分を持とうとした。
「違う!」
シェフは、すぐさまその手を振りほどいた。
「タカハシ、スズキ、焼く!」
高橋は、鈴木を丸裸にして、フライパンの上に座らせた。
「違う!!」
シェフは本気で怒った。
「ヤマダ、スズキ、焼く!」
山田は、鈴木を救出し、冷蔵庫にあった魚のスズキをシェフに見せた。
「そう、それ!」
こうして、やっと『スズキのアクアパッツァ』ができあがった。
高橋は、やけどをした鈴木に詫びた。
「別にいいよ。全国の飲食店に勤める鈴木たちは、こんな扱いに慣れてるから」
鈴木は、大人の余裕をみせた。
「あれっ、佐藤は?佐藤はどこ?」
みな、顔を見合せた。そして黙りこんだ。
※みなさんへ。
今年も一年、ありがとうございました。よいお年を☆
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