すみれ

読むこと、書くことが好きな社会人3年生。 大切な想いを忘れないように。のんびり紡いでい…

すみれ

読むこと、書くことが好きな社会人3年生。 大切な想いを忘れないように。のんびり紡いでいます。 活動中🐿 ▷ベリショーズ

マガジン

  • あなたとわたしの日々、

    誰かと誰かの大切な日々を。紡いでいます。登場人物たちのモデルは皆、私の大切な人たちです。それぞれが紡ぐ日々に触れていただけたら嬉しいです。

  • 真夜中と、独りごと。

  • シネマ06

    “シネマ06”。ここは、映画館?いや…。「大切な人を“主人公”に」そんな思いで、身近な人たちをモデルにした物語を紡いでいます。あなたも、“シネマ06”で不思議で、なんだかあたたかい…そんな体験をしてみませんか? どうか、あなたにとって素敵な夜になりますように。

記事一覧

固定された記事

貴方と。日々を綴る、書き手でいたい。

 「貴方と。日々を綴る、書き手でいたい。」  そう思ったのは、いつだっただろうか。“貴方”が作ってくれたチーズいっぱいのホットサンドを、ふたり頬張った日だったか…

すみれ
1年前
47

あいをこめて、

 遥か彼方、天使たちの内緒話。  「こないだ、神さまがね…」  「ぼく、おはなをかいたんだよ!」  「…ぼくも!ぼくも、とどけたい!」  柔らかい風が背中に触れて…

すみれ
1日前
6

ぼくらがとどけるよ

 なんとなく寄った本屋さんで、なんとなく見つめた棚の隅っこ。一冊だけ妙に古びた藍色の背表紙。なんだか懐かしくて。記憶を探ってみるけど何とも結びつかなくて困った。…

すみれ
3日前
8

午後8時のオーブンのなか、

 「クッキーを焼こう」  ふと思い立ったのは、午後8時。  トコトコと台所に向かい、手をきちんと洗う。洗いたてのふんわりとしたタオルで手を拭いて、小さく「よし」と…

すみれ
3か月前
13

時を編む、

 「おじゃまします」  「すう、いらっしゃい〜」  今日は、編み物をするために紬さんのお家に。  「どうする?何を編む?」  そう尋ねられ、  「まんまるのコースタ…

すみれ
4か月前
7

ちょっとだけご褒美

 ピンポーン。  無機質な音が来客を告げて、涙目で覗いたドアアイ。小さな窓の外、抱き締めてほしい黒髪が揺れた。  開いたドアからひょこっと顔を出して、私を見つめ…

すみれ
6か月前
13

落花生を茹でながら、

 あのね、今日あなたがいない間に落花生を茹でたの。隣のおばさんがね、落花生が採れたからってボウルいっぱいにくれたの。最初ね、小さいザルを持っていったら「そんな小…

すみれ
6か月前
9

金木犀の花言葉

 金木犀の匂いをすーっと抱き締めたとき、小学校の校庭がぼんやりと。思えば、学校は大嫌いで、教師なんかもっと大嫌いで。なのに私は学校の先生になった。きっかけになっ…

すみれ
6か月前
8

出会ってくれて、

 午前九時。雨音が窓の外から聞こえてきて、傘がないことに気づいた。それを「ま、いっか」のひとことで片付け、瞼に蜜柑色のアイシャドウを纏わせる。少しの間、街で暮ら…

すみれ
1年前
21

戯れ。

 “戯れ”。  国語のことを勉強だと思うことなく。言葉たちとの“戯れ”だと、ずっとそう思って歩いて来れたのは紛れもなく母のおかげだと感じる私を、湿度80%の風が追い…

すみれ
1年前
46

大好きなみんなへ。

 大好きなみんなへ。  「なんだがお日さんぼやっとして来たな」と宮沢賢治の声が聞こえてきそうな十六時半。洗濯物をクローゼットにしまおうとしたその刹那。視線は、大…

すみれ
1年前
12

シネマ06 素直な心

 意味もなく進むのは、久しぶりだ。  鋭さを感じる風。透き通る空。  パラパラと、脳内の古語辞典が捲られる。  「冴ゆ」  左に行こうか。右に行こうか。いや、真っ…

すみれ
2年前
15

シネマ06 あなたを想って

 「やばい、もう五十分!」  「大丈夫でしょ。まだ十分もあるし…」  「それね、大丈夫。大丈夫〜」  「もー、ふたりとも。のんびりしてないで!」  いつの間にか、…

すみれ
2年前
33

シネマ06 感じるままに

 「どんな足枷があったとしても。私たちなら……」  水溜りに映る月を見ていた。色なき風が通り過ぎて、月が揺れ動く。  時計の針は、駆け足で進む。二十三時五十分。…

すみれ
2年前
23

シネマ06 夢の途中

 「おーい、すみれ。こっち、こっち!」  ずっと、ずっと遠く。道の向こうで、私を呼ぶ声がする。私は、その声を知っている。あたたかくて、懐かしいその声を。  路地…

すみれ
2年前
10

シネマ06 素敵な笑顔

 「あ~、楽しかった~」  「ほんと、ほんと。笑いすぎてお腹痛い」  “八月会”。そう名付けたのは、どちらだっただろう。八月十七日生まれの私と、八月二十日生まれの…

すみれ
2年前
12
貴方と。日々を綴る、書き手でいたい。

貴方と。日々を綴る、書き手でいたい。

 「貴方と。日々を綴る、書き手でいたい。」
 そう思ったのは、いつだっただろうか。“貴方”が作ってくれたチーズいっぱいのホットサンドを、ふたり頬張った日だったかもしれない。“貴方”と、思わせぶりに振り回されるMVに、ふたりため息をついたあの夜だったかも。「すみれがしたいことをしなさい」と“貴方”が背中を押してくれたあの日かもしれない。大好きな“貴方”と創り上げた物語が、“貴方”の目に留まったときか

もっとみる
あいをこめて、

あいをこめて、

 遥か彼方、天使たちの内緒話。
 「こないだ、神さまがね…」
 「ぼく、おはなをかいたんだよ!」
 「…ぼくも!ぼくも、とどけたい!」

 柔らかい風が背中に触れて、ふと空を見上げた。そのとき、ぐーっと私のお腹を押す、君の元気な印。愛おしさいっぱいでお腹に手をやると、「あっ、たんぽぽ」。下を向くことは悲観的なイメージがあったけれど。君と一緒に下を向いたときはいつだって、つま先で春の訪れを感じたり、

もっとみる
ぼくらがとどけるよ

ぼくらがとどけるよ

 なんとなく寄った本屋さんで、なんとなく見つめた棚の隅っこ。一冊だけ妙に古びた藍色の背表紙。なんだか懐かしくて。記憶を探ってみるけど何とも結びつかなくて困った。でも、絶対に買わなきゃって想いだけはあって。愛しさで溢れた想いと一緒に、静かに手を伸ばしてみた。

 帰り道、待ちきれず。たんぽぽ揺れる公園のベンチ。テイクアウトしたカフェインレスのコーヒーとそっと撫でる背表紙。
 その本は、絵本のようで。

もっとみる
午後8時のオーブンのなか、

午後8時のオーブンのなか、

 「クッキーを焼こう」
 ふと思い立ったのは、午後8時。
 トコトコと台所に向かい、手をきちんと洗う。洗いたてのふんわりとしたタオルで手を拭いて、小さく「よし」と呟く。

 薄力粉が120g欲しい。シンク下の棚をごそごそと漁る。これでもない、あれでもないと、しなくてはいけないのは、恋人が色んな小麦粉をコレクションしているからだ。恋人は、ラーメンやパスタを麺から作る。加水率が何%だの、ひとりで楽しそ

もっとみる
時を編む、

時を編む、

 「おじゃまします」
 「すう、いらっしゃい〜」
 今日は、編み物をするために紬さんのお家に。
 「どうする?何を編む?」
 そう尋ねられ、
 「まんまるのコースターがいいです」
 と答えることができ安堵。
 私はよく声が詰まる。初めて、二度目まして問わず、緊張を感じると苦しくなる。でも、紬さんと話すときは不思議と大丈夫。喉が渇いて苦しくなることもないし、自分の声がちゃんと届いてる感じがする。きっ

もっとみる
ちょっとだけご褒美

ちょっとだけご褒美

 ピンポーン。
 無機質な音が来客を告げて、涙目で覗いたドアアイ。小さな窓の外、抱き締めてほしい黒髪が揺れた。

 開いたドアからひょこっと顔を出して、私を見つめて。
 「百合、焼きそば食べよ」
 ニカっと笑う彼ー健斗ーを見て、涙がボロボロと溢れる。「大丈夫、大丈夫」って私の頭を撫でる健斗。ゆっくりと安堵が胸の奥底に着地して、やっと言えた。
 「なんで…焼きそば?」

 キッチンに立って、健斗は焼

もっとみる
落花生を茹でながら、

落花生を茹でながら、

 あのね、今日あなたがいない間に落花生を茹でたの。隣のおばさんがね、落花生が採れたからってボウルいっぱいにくれたの。最初ね、小さいザルを持っていったら「そんな小さいのじゃ入らないよ、もっと大きいのにしておいで」って笑われちゃった。だから今度はさっきよりも大きめなボウルを用意してね。そしたら、おばさんが「山盛りにしちゃうね」っていっぱいくれてね!ボウルから落ちちゃうくらいだったのよ。
 茹でて食べる

もっとみる
金木犀の花言葉

金木犀の花言葉

 金木犀の匂いをすーっと抱き締めたとき、小学校の校庭がぼんやりと。思えば、学校は大嫌いで、教師なんかもっと大嫌いで。なのに私は学校の先生になった。きっかけになった先生の背中を思い出して、くすり。理科室に吹き抜ける朝の風とニカッとする先生を思い出す。そういえば、あの人も理科の先生だ…先生との共通点を見つけて金木犀がまたゆらり。

 金木犀の匂いを身体いっぱいに取り込んだ私は、ぼーっと空を眺める。南の

もっとみる
出会ってくれて、

出会ってくれて、

 午前九時。雨音が窓の外から聞こえてきて、傘がないことに気づいた。それを「ま、いっか」のひとことで片付け、瞼に蜜柑色のアイシャドウを纏わせる。少しの間、街で暮らすことになった。はじめての街暮らし。人の多さや聳えるビルに、毎日ドキドキさせられる。少しでも見たことのある街並みにしたくて、今私は、冒険に出かける支度をしている。

 午前十時。アスファルトには、ほんのりと湿り気が残っている。もう雨はどこか

もっとみる
戯れ。

戯れ。

 “戯れ”。
 国語のことを勉強だと思うことなく。言葉たちとの“戯れ”だと、ずっとそう思って歩いて来れたのは紛れもなく母のおかげだと感じる私を、湿度80%の風が追い抜いて行きました。肌に張り付くじめっとした質感も、言葉にしてしまえば、案外カラッとするもので。紙の上では、再現度も、載せる想いの量も…全て私に託されているのだと改めて感じます。託されているかと言っても、なんでも思い通りになるわけではない

もっとみる
大好きなみんなへ。

大好きなみんなへ。

 大好きなみんなへ。
 「なんだがお日さんぼやっとして来たな」と宮沢賢治の声が聞こえてきそうな十六時半。洗濯物をクローゼットにしまおうとしたその刹那。視線は、大切にしているみんなからの手紙の方へ。遠く離れていても、書き記された言の葉たちはみんなの声をそれはそれは丁寧に届けてくれます。この瞬間が私はとても好きで、だからこそ言葉と戯れ続ける道を歩いているのだと思います。…みんなへの想いが溢れて仕方ない

もっとみる
シネマ06 素直な心

シネマ06 素直な心

 意味もなく進むのは、久しぶりだ。
 鋭さを感じる風。透き通る空。
 パラパラと、脳内の古語辞典が捲られる。
 「冴ゆ」

 左に行こうか。右に行こうか。いや、真っ直ぐか。
 はらり。今度は、国語辞典の出番。
 「…揺蕩う」

 夜を歩くと、言葉たちの囁きが聴こえてくる。
 言葉たちは、風や草木など色んなものの影に隠れている。「見つけてよ」と手を振るもの。「ここだよ」と、か細い声を震わせるもの。五

もっとみる
シネマ06 あなたを想って

シネマ06 あなたを想って

 「やばい、もう五十分!」
 「大丈夫でしょ。まだ十分もあるし…」
 「それね、大丈夫。大丈夫〜」
 「もー、ふたりとも。のんびりしてないで!」

 いつの間にか、ポストに投函されていた、褐色の封筒を手に、雨上がりの街を行く。水溜りに映るもうひとつ街に、小さく「せーのっ」。水溜りとつま先が触れ合って。揺れ動いた世界に、月が顔を覗かせる。視線は、空へ。今度はちゃんと。月と目線を合わせて「こんばんは」

もっとみる
シネマ06 感じるままに

シネマ06 感じるままに

 「どんな足枷があったとしても。私たちなら……」

 水溜りに映る月を見ていた。色なき風が通り過ぎて、月が揺れ動く。
 時計の針は、駆け足で進む。二十三時五十分。ちょっと、散歩にでも、そう思って出てきて、もう一時間。……そろそろ、帰ろうかな。と、もう少しだけ、がぶつかり合う。あっ、私。こんなことでも、迷ってる。ここのところ、迷ってばかりだ…。
 思い返す。ちゃんと、目標だってあった。やりたいことも

もっとみる
シネマ06 夢の途中

シネマ06 夢の途中

 「おーい、すみれ。こっち、こっち!」
 ずっと、ずっと遠く。道の向こうで、私を呼ぶ声がする。私は、その声を知っている。あたたかくて、懐かしいその声を。

 路地裏を行く。まん丸や楕円。色んな形の水溜りたちが、道に装飾を施している。…やっぱり、あのスカートを買おうと、買うか迷っていた水玉模様のスカートをお迎えするために、立ち止まる。ほしい物リスト、カート、と進んで…決済へ。思い立ったら即行動なのが

もっとみる
シネマ06 素敵な笑顔

シネマ06 素敵な笑顔

 「あ~、楽しかった~」
 「ほんと、ほんと。笑いすぎてお腹痛い」
 “八月会”。そう名付けたのは、どちらだっただろう。八月十七日生まれの私と、八月二十日生まれの葉月。八月になると、なんとなく集まって互いの誕生日を祝う。名前の由来は覚えていない。
 ふたりで歩く二十三時五十分の街並みは、高校生の頃よりも大人になったことを教えてくれているみたいだ。服装も、髪型も。あの頃はしていなかったメイクも…私た

もっとみる