落花生を茹でながら、

　あのね、今日あなたがいない間に落花生を茹でたの。隣のおばさんがね、落花生が採れたからってボウルいっぱいにくれたの。最初ね、小さいザルを持っていったら「そんな小さいのじゃ入らないよ、もっと大きいのにしておいで」って笑われちゃった。だから今度はさっきよりも大きめなボウルを用意してね。そしたら、おばさんが「山盛りにしちゃうね」っていっぱいくれてね！ボウルから落ちちゃうくらいだったのよ。
　茹でて食べるってことだけ知ってたの。でもよくわからないから「Hey,Siri 落花生の茹で方を教えて」ってSiriに話しかけてね、教えてもらったの。…なんで笑うの！「君らしくてかわいい？」ふーん。
　採れたてだったから砂がたくさん付いてて。だから、大きめなザルを用意してそのなかでゴシゴシ洗ったの。…大丈夫！ちゃんとやったよ。自分で食べるならテキトーにやるけど…二人で食べるでしょ。だから丁寧にしたんだよ。
　洗えたらね、大きい鍋に水を入れて、茹でる水の三〜四パーセントの塩を入れて。くるくるかき混ぜて。そのなかに落花生を入れたの。ここで、びっくりしたのがね、なんと三十分も茹でるんだって！！そんな茹でる？って驚いちゃった。……なんでここで気づいたかって？レシピを見てからやり始めたんじゃなくて、レシピを見ながら作ってたから…。
　茹でる時間長いなって思ったの。暇じゃん、待つ間って。でもね、違った。コトコトと鍋のなかで音を立てる落花生たちを見てね、気づいたら琉飛りゅうひ、あなたのことを考えてたの！琉飛りゅうひがいつか口ずさんでいた「曲がりなりで良かったらそばに居させて」を歌いながら…。
　……初めて会ったときのこと覚えてる？私ね、「なんか懐かしい」って思ったの。不思議だった。あったかくて。見てるだけで安心するような、包み込まれていくような…。「この人だ」って思ったんだよ。……それから、色んなことがあったね。感情が溢れちゃったとき、いつだって一緒に掬ってくれたね。どんなことがあっても、「俺“は”大好きだからね」って抱き締めて、ずっと味方でいてくれた。ずっとずっと、私の隣で優しく笑って、そして私の手を握り続けてくれた。…琉飛りゅうひ、私はあなたとだから今ここで、“家族として”色んな日々を積み重ねていけてる。本当にありがとう…。

　気づいたらね、そんなことを想ってたんだよ。あ、そうそう。Siriにね、もうひとつ聞いてみたの。
　「Hey,Siri 落花生の花言葉を教えて」
　そしたらね、“仲良し”だって教えてくれたよ！これからもずっと仲良く一緒にいてね？

　「とっておきも出来合いも残さずに全部食らいながら〜」
　って楽しそうに歌う穂乃歌ほのかを見て、愛おしいなと思った。右手から左手になった約束の印に「大丈夫、ずっと一緒にいるよ」とそっと誓う。

引用　Official髭男dism「ミックスナッツ」

あとがき
久しぶりにお友達とその旦那さんがモデルの、穂乃歌ほのかちゃんと琉飛りゅうひくんを描いてみました。結婚しましたって左手を見せてくれたお友達が可愛すぎて…。
これからも、二人にとって素敵な日々でありますように、と願いを込めた作品。私が願うまでもないと思いますが…。
また読んでくださったみなさんとお会いできる日を楽しみにしております。