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「三つ子の魂、百まで」

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2019年に「保育の専門性を高める会」より子育て、家族、田舎暮らしをテーマにコラム執筆を依頼されて書いた処女作です。私たちの実体験の一部をピックアップした内容になっております。地… もっと読む
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記事一覧

『三つ子の魂、百まで』vol.1

『三つ子の魂、百まで』vol.1

価値観を変えられた、あの日

2011年、3月11日に発生した東日本大震災を僕は地元東京で経験した。

地下での仕事中に大きな揺れを感じ、これはただ事ではないと直ぐに外へ飛び出した。目の前にあった軽量鉄骨造りの2階建てアパートは並びの建物にぶつかりそうな程、左右に大きく揺れていた。

その後、短い間に余震が何度か続き突然、雪が降ってきた。初めて経験する天変地異に身体が震えたを覚えてる。

あの日の

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『三つ子の魂、百まで』vol.2

『三つ子の魂、百まで』vol.2

布団と寝袋

移住する少し前、長男を妊娠している事が判明し、一先ずカミさんを東京に残して、地元の友人と古民家のリフォーム工事へと向かった。時季は3月初旬、季節としては春だが、集落の中でも"日陰"という屋号で呼ばれる我が家は昼間でも外へ出ている方が暖かい。

日が暮れてからは囲炉裏で火を起こし暖をとったが、外部との気温差が小さい為、布団の中に寝袋を入れて眠っても夜中、寒くて目が覚めてしまう程だった。

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『三つ子の魂、百まで』vol.3

『三つ子の魂、百まで』vol.3

ビギナーズラック

野菜作りを始めた場所は、何年も手付かずで放置されっぱなしだった。田畑で使われていた訳でもない荒れ地を畑として使える様にする為、先ずは片付けと整地作業から始めた。整地が終わるとその場所をぐるりと囲むように獣避け対策の柵を張った。

過疎化が進む里山では人間よりも獣の方が多く、柵を設けないと獣に農作物をやられてしまう。集落の人曰く、ほんの20年前までは向こうの山まで見渡せるほど山の

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『三つ子の魂、百まで』vol.4

『三つ子の魂、百まで』vol.4

minobu town

僕たちが暮らし始めた(現在は市川三郷町に居住)身延町という町は山梨県の南に位置する。県土の7%を占め人工は約一万三千人、半数近くが65歳以上の高齢者で少子高齢化が進む。平成16年9月に旧下部町、旧中富町、旧身延町が合わさり現在の身延町となった。

旧身延町では日蓮宗の総本山である久遠寺、旧下部町では下部温泉、旧中富町では西嶋和紙が有名である。

おわりのはじまり

遡るこ

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『三つ子の魂、百まで』vol.5

『三つ子の魂、百まで』vol.5

田舎暮らしの課題

田舎暮らしを始め様々な課題に直面するようになってきたが、幼子抱えて生きていく為の生活資金を稼ぐ亊が一番の課題だった。ノリで勢い良く地元東京を飛び出したものの、仕事面では東京に片足突っ込んだままの状態が暫く続いた。

移住した年に長男が誕生し家族が増えると、東京と山梨を往復するのも億劫になってきたので、山梨で仕事をみつけたかった。地元東京で大工志亊を学び、独学で木工を始め手に職は

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『三つ子の魂、百まで』vol.6

『三つ子の魂、百まで』vol.6

林業のはじまり

林業の歴史は今から五百年余り前、天下統一を果たした豊臣秀吉の時代から始まった。

大昔の時代は自然に芽吹いて大木にまで育った木を伐り出して木材利用し、伐採した後は自然の再生力に任せるものだった。

伐り出す量も一年間の木の生長量を下回るものだったので十分に山の木々達は再生出来たが、戦乱が終り木材の需要が爆発的に高まり乱伐された結果、一年間の自然の生長量を上回ってしまったこれでは荒

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『三つ子の魂、百まで』vol.7

『三つ子の魂、百まで』vol.7

汝、自身を知る

都会で生活していた頃は人の目や評価、どう思われているか?をとても氣にしていた様に思う。小さな事に固執していたちっぽけな自分を根底から変えたい氣持ちで田舎暮らしを始めた。

最初に借りた古民家での暮らしでは、集落の人々が当たり前に衣・食・住すべてに自分達の手を入れて生きている事に驚いた。だから僕たちもなるべく人に頼らず自分で自分の問題を解決するよう様々な術を模索した。そうやって自分

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『三つ子の魂、百まで』vol.8

『三つ子の魂、百まで』vol.8

吾唯知足

移住した2013年に長男が生まれ、その二年後、2015年に長女が誕生した。長女の妊娠を機に古民家を離れ小さな町で団地住まいをしている(現在は中古物件をリノベーションして暮らす)。古民家のある集落とは違い近所にスーパーも薬局もあり、徒歩で買い物に行ける便利な場所だ。

古民家で暮らした三年間で色々な亊に氣付き、自分達に必要な亊とは何かを見直せた。不便で創意工夫なしでは生きられないリアルを

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『三つ子の魂、百まで』vol.9

『三つ子の魂、百まで』vol.9

全国1位の空き家率

これまで僕たちの里山ライフのエピソードを幾つか紹介してきました。現代生活様式での里山ライフのメリット・デメリットを包み隠さず少しでもリアルに感じてもらい、田舎の素晴らしさが伝わる様な文章構成を意識して記事にしてます。実際、僕たちも暮らしてみるまで田舎暮らしは何処か浮世離れした憧れの別次元世界だと思い込んでいた節もあり、暮らしていく中で苦労した事も多数ありますが、有りのままをお

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『三つ子の魂、百まで』vol.10

『三つ子の魂、百まで』vol.10

子供達との出逢い

我が家には7歳の長男と5歳の長女がいる。お兄ちゃんは気は小さいが優しく気が利く、長女はわんぱくでひょうきん。有り難い事に結婚して直ぐ長男の妊娠が判り、引っ越しのタイミングで悪阻全開であったが妊娠生活は喧騒から遠く離れた山の中でストレスフリーな生活を送り、無事に里帰り出産で産まれた。

長女は山梨生まれの山梨育ち、生粋の山梨っ子である。長女の妊娠を機に山から下りて小さな町に移り住

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『三つ子の魂、百まで』vol.11 最終回

『三つ子の魂、百まで』vol.11 最終回

持続可能な暮らしを求めて

自然って何者なのか考えた事はありますか?空気や水、獣や草花だってそう、自然といっても沢山あり私たち人間もその一部の存在だと私は思っています。

森林で林業作業中に考えることが多いんだけど、おそらく自然って何者でもないんです。自然について考え出すとやがて地球、惑星の事から宇宙に至るまで話が進みます。

宇宙銀河だってまた何かの一部なのかもしれない。大地震を経験して自然のお

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