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ルンバの誕生秘話:スター・ウォーズから始まったロボット革命

ルンバは、世界中で愛用されているロボット掃除機です。しかし、その開発には多くの困難と決断がありました。この記事では、大谷和利著『「ルンバ」を作った男 コリン・アングル 共創力』をもとに、ルンバの開発経緯について紹介します。


コリン・アングル ロボットへの夢

ルンバの生みの親は、コリン・アングル氏(1967〜)です。彼は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学とコンピュータサイエンスを学びました。彼がロボットに興味を持ったきっかけは、スター・ウォーズの中に出てくるMSE-6という箱型ドロイドでした。デス・スターの中を縦横無尽に動き回り、物を運んだり修理をしたりするロボット。彼は、このような目的をもって仕事をするロボットを作りたいと思うようになりました。


BB-8

1990年、彼はMITの仲間とともに、アイ・ロボット社を設立しました。この会社の目指すところは、人間と同じぐらいの知性をもったロボットを作ること、そして、思い描いたロボットを社会実装することでした。しかし、それは誰も行ったことのない前人未到の構想でした。そのため、設立から6年半、ロボットでなくては解決できない課題を見出すことができずにいました。


機雷除去や災害救助 ロボットにしかできない仕事

1990年は、湾岸戦争が始まった年でもありました。機雷が設置されたことで米軍の上陸が阻まれるという問題が生じていました。そこで、コリンたちは、機雷除去や災害救助こそ、ロボットにしかできない仕事だと考え、これらのロボットを開発しました。開発したロボットは、米国空軍のミッションなどで使われました。福島第一原発の建屋に、事故後初めて入ったのも、彼らの災害救助ロボットでした。

社員のアイデアから生まれたルンバ

社員の中には、もっと身近なロボットを作りたいという思いがありました。
ある日、社員の何人かが、コリンに、ロボット掃除機を作りたいと提案してきたのです。
コリンは、プロトタイプの作成のために、15,000ドルの予算と3週間の時間を与えました。できてきたプロトタイプをみたコリンは、開発にGOサインを出しました。しかし、それは大きな賭けでした。ロボット掃除機が消費者に受け入れられるかどうかは、誰にも分かりませんでした

コリンは、自分の関心・興味を起点に、これまでにないコンセプトの製品を開発する、アート思考によるイノベーションを実践しました。国防関連事業と異なり、ニーズがあるかわからなくても実行したところが興味深いです。

ルンバの成功と決断

ルンバは2002年に発売されましたが、アイ・ロボット社の利益のほとんどは、災害救助ロボットの売り上げからもたらされていました。

しかし、コリンはさらに大胆な決断をしました。国防関連事業を売却して、「ルンバ」とそれ以降のコンシューマー向け製品に注力することにしたのです。彼は、全く異なる2つの事業にリソースを分散するのは得策ではないと考えたのです。

この決断が功を奏しました。ルンバは人気を集め、今では多くの家庭で愛用されています。日本でのシェアは71.1%にもなります。

アイ・ロボット社の未来

ロボット掃除機では大成功をおさめたアイ・ロボット社ですが、今後はどのようなことにチャレンジするのでしょうか?

コリンは、メッシュホーム(MESH)というビジョンを語っています。それは、自宅が見えないロボットになり、環境を維持し、お金とエネルギーを節約し、安全で健康的な場所にしてくれるというものです。

次の展開でも、社員たちの興味・関心から、あっと驚くイノベーションが生まれるでしょうか。

C-3POのような存在感のあるロボットが家の中を歩き回っているとけっこう目障りです。ルンバのように目立たず、人がいないときに働くロボットが家の中で見守ってくれるものこそ受け入れられるに違いありません。存在を感じさせないけれど、いないと困る、そんなロボットが私たちの暮らしを変えていくことでしょう。

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