マガジンのカバー画像

It's my favorite.

99
何回も読みたい何回も観たい 迷子にならないように保管
運営しているクリエイター

#404美術館

月が降りてきた夜に絵描きがみたもの

月が降りてきた夜に絵描きがみたもの



猫の眼は瞑らない
猫が木に登る夜は 月が降りてくる

清潔な絹糸が 時を刻む

黄金比に切りとられた 

星空に刻印される音

アイロンの蒸気が

君のブラウスのリボンをほどく

殺菌された 猫の眼に映りこむ

クレーターの底で 

泳ぐ魚に色を塗る

ブリキの月のはり金と

ニセモノの猫の爪を ひっかけて

釣ったエモノは逃さない

マンドリンのアルペジオが

ピタゴラスを奏でる

ぼくはシ

もっとみる
曖昧な夜に絵描きが思うこと

曖昧な夜に絵描きが思うこと


曖昧なヨル

曖昧なヨルに

曖昧なへやに居ると

曖昧が押し寄せてくる

昼間の喧噪と秩序の左脳を閉じ

曖昧に右脳だけが目醒める

ことばの意味もわからない

ただそこには

かたちといろがある

指と筆の境界線

筆とキャンバスの境界線

溶けていく

混ざっていく

柔らかく凍ったおとが聴こえる

からだ中の骨が共鳴する

やがてからだが溶けていく

残ったひとみだけが

空と化したかた

もっとみる
貧しい絵描きの御伽噺2(短編全2回)

貧しい絵描きの御伽噺2(短編全2回)

 翌朝、扉の外に見慣れない小さな箱が置いてありました。
 絵描きがおそるおそる開けてみると、中には幾重にも重ねられたビニール袋の中に、ギウギウに詰まった何色かの絵の具らしきものが、まるで何かの内臓のようにありました。
 絵描きは、この一見恐ろしげに見える、内臓のような絵の具らしき物を訝しみましたが、もしやこれは、夢の中の炎の女神からの贈り物ではないかと気づきました。
 急いでビニール袋をメリメリと

もっとみる
貧しい絵描きの御伽噺1(短編全2回)

貧しい絵描きの御伽噺1(短編全2回)

 今から少し前、あるところに、心の病でからだが動かなくなった絵描きがおりました。
 絵描きは絵描きですから、絵を描くことしかできません。
 絵を描けなくなった絵描きは、自分がもう、何の役にも立たないのだと悲しんで、消えることばかり考えていました。
 けれども、絵描きには小さな子供がありましたので、役に立たなくても消えることはできませんでした。
 子供は絵描きに言います。
「しぬまで絵を描きつづける

もっとみる
絵描きがいい気になって投稿す

絵描きがいい気になって投稿す


圭果さん♡ アッシュさん♡投稿しちゃいました〜

おふたりのありがた〜いコメントでいい気になり、昔のタブローをうっかり投稿しちゃいましたぞ。

激しい盛り上がりを見せる、秋の俳句大会#白杯。
のろまの弘生はようやく数日前に、三句の応募投句を終えました。
ホッ……

そんな中、#白杯の応募記事のトップ画像に使用した絵の全体像を見たいと仰る奇特な西野圭果さんとさらに背中を押して下さるアッシュさんがい

もっとみる
絵描きはしばしばいつもの場所に戻る

絵描きはしばしばいつもの場所に戻る

一握の産土を持ち歩くこんにちは。絵描きの弘生です。
足元の石畳から、可憐ながら力強く咲く濃いすみれ色のすみれを撮りました。かわいいですねぇ。
名付けるとしたら、

「すみれ色の菫」ってところでしょうか。
数年前、そんな愛で甲斐のあるすみれ達が、自治会の草取り行事で無残に根こそぎむしり取られ、驚いた私は、根ごと抜かれたすみれ達を持ち帰って、ベランダのプランターに植え替えたことを、ふと思い出しました。

もっとみる
絵描きの日記をめくって下さい

絵描きの日記をめくって下さい

ずっと産土を探している
昨日9月8日、東京都美術館での展覧が最終日を迎え、ようやく少しホッとしているところです。
その準備に加え、やりたいこと、やらねばならぬこと、やれと言われること、目白押しで、2ヶ月近くに及ぶ寝不足、不摂生。体調不良は当然といえば当然ですが、動けるということは素晴らしい!

今回発表の作品は、5点でひとつの作品になり、展示空間や気分で、並べ方を変えることができます。全体像ではあ

もっとみる
月の無い夜に絵描きが思うこと

月の無い夜に絵描きが思うこと


月の無い夜
月の無い夜は

魂の計画をたてよう

次の世界があるのなら

今度こそ正直に生きてみよう

土から這い出た蝉の子のように

曖昧な部屋から這い出したら

地上にはみ出た根っこに

翻弄されている年老いた木に

語りかけてみる

昼間の痛いほど眩しい青空は悲しい

咲き誇る花が多すぎるのは悲しい

川岸から聴こえる讃美歌は悲しい

三角形の気の遠くなる重なりを

くぐり抜けさえすれば

もっとみる