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子どもの貧困対策~学校にできること・できないこと~


 貧困が子どもに与える影響は、発達の遅れや教育機会を奪うなど、早急に解決しなくてはならない問題が山積している。

 特に、義務教育期において貧困ということは、今後の人生に多大な影響を及ぼしかねない。家庭からのアプローチが困難だとしたら、この時期の子どもたちが多く過ごす“学校”は、一体何ができるのだろうか。できないことがあっても、そこから何が見えてくのかを考察していきたい。

 
 学校にできること・できないことの中心的なテーマとして述べたいのは、貧困によって教育機会が失われてしまっていることである。富裕層や比較的経済的に安定している層の親をもつ子どもたちは、塾や予備校に通え、社会的に地位や安定した教育機会を与えてもらえる学校へとアクセスできる。

 一方で、低所得層から貧困とは言えないが余分なお金は使えない層の人々は、限られた教育機会のなかでできることが限られてしまう。

 学校には「就学援助費」という制度があり、母子家庭や貧困に苦しむ過程に学用品・通学費・学校給食費などを支給してもらえる。しかし、公教育に関する範囲内の援助はされても、よりよい教育機会を得るためにはさらにお金が必要になる。

 

文部科学省の「平成24年子供の学習費調査」によると補助学習費(家庭教師費や学習塾費など)は、公立学校の中学三年生で平均30万ほども使われている

 

 このことから分かることは、学校外教育がいかに今の教育には必要不可欠になってしまっている事実である。学校は、あくまでも義務であり、それ以外の教育は外部に任せることで教育機会のアクセスを増やそうしている。


 上述したような内容が背景にあるとした場合、学校ができることを一つあげるとしたら、国を挙げて放課後の教育内容の充実を図ることだと考える。

例えば、イギリスのシュア・スタートやアメリカの早期介入プログラムなどを参考に放課後教育を作っていく。もちろん、幼児向けの内容がほとんどであるためどのように活かすのかは、その運営の仕方や子どもやその親たちのアプローチを学び、初等教育・中等教育に活用していくという具合である。授業終わり後の空き教室で、16時から20時ぐらいの間を学習支援・生活相談室・多様な習い事(地域のボランティアを招き)などの多様なプログラムを毎日行う。学校開放ということと同時に、学校を地域の中心に戻す役割も担える。

学校という教育機関を使うことで、無料あるいは極限まで低コストで行えるという点は、貧困層の子どもたちだけではなく全ての子どもたちに遍く与えることができる。学校という場所に対して“嫌悪感”を抱く子どもたちには、土日のどちらかを彼ら彼女らのためだけに開放する日をつくり、積極的に関係を創り、教育や社会から離さないようにしていくことが重要であり必要なことである。


 多くの学校は我々の歩いて行ける範囲にあり、学校という場所が多様で多目的に、そしてアクセスしやすいという利点ばかりがある。公共交通機関を使うにもお金はかかるものであるし、学校が一つの“教育のデパート”になるようになることができれば解決の糸口は見つかると考える。


 しかしながら、学校にできないことも多く存在する。それは、意識に対して干渉できないことと強制することができない点である。学校がいくら学習や文化的なものを用意しても、そこに参加しようとする意思がなければ関わること、参加を強制することはできない。そして、社会的排除されている貧困層の子どもたちを、社会的に排除しないように社会に働きかけていくような動きはできないと考えている。

 もしも、それが可能だとしたならば競争・選抜といった序列化を生むような社会制度も構築されることはないからである。意識を変えるということは、本来の学校の機能であれば可能なのかもしれない。

 しかし、久富(1993年)がいうように、依然として教育現場には「低所得層といった特別な見方は教育現場にふさわしくない」といった風潮がある。貧困層をどうにかしていかなければならないとする一方で、やはり腫れ物には触りたくないという矛盾した感情を抱えているのだろう。

 
 学校ができること・できないことには、視点を変えることで「できる・できない」が変わるようにも考えられる。私自身は、貧困ではなかったが一般的な家庭よりも少し貧乏であった。それでも、困ったと思う機会もなかったし、上を見ればきりがないことも十分に理解していた。

 しかし、もっと自分に合う教育をお金があればできただろう。また、教育によって迷うことになる私の人生にも違った道が示されてかもしれない。学校は、希望と絶望が入り混じる空間であるが、貧困の子どもたちにとって希望を与える空間であってほしいと願うばかりである。


―引用・参考―
 盛満弥生 2011 「学校における貧困の表れとその不可視―生活保護世帯出身生徒の学校生活の事例に」教育社会学研究第88集より、久富善之 1993 「学校から見えるヴェール一重」青木書店 pp147-148
 埋橋玲子 2011 「イギリスのシュア・スタートと日本の課題―貧困問題と就学前のワンストップ機能」 部落解放研究 No.192 pp40-51
雁咲子 2012 「子どもの貧困とセーフティーネット―就学援助制度を中心として」 跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 第14号 pp91-123
 文部科学省 2014 「子どもの学習費調査」

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