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読書記録

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ジャンル問わず。読んだ本の記録、紹介。
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2023年2月の記事一覧

深い河 遠藤周作~読書記録248~

深い河 遠藤周作~読書記録248~

1993年に発表されたカトリック作家・遠藤周作の小説。

出版社の紹介より
喪失感をそれぞれに抱え、インドへの旅をともにする人々。生と死、善と悪が共存する混沌とした世界で、生きるもののすべてを受け止め包み込み、母なる河ガンジスは流れていく。本当の愛。それぞれの信じる神。生きること、生かされていることの意味。読む者の心に深く問いかける、第35回毎日芸術賞受賞作。
人は皆、それぞれの辛さを背負い、生き

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私の考え~読書記録247~

私の考え~読書記録247~

2020年に発行された国際政治学者・三浦瑠麗氏のコラムを加筆修正して編集された本である。

率直に言うと、「朝まで生テレビ」の話ばかりだったなの読後感であった。
三浦瑠麗氏が、田原総一朗氏を信頼しているのだな、と伺えた。

田原総一朗さんを措いて、この番組を「らしく」できる人はいない。田原さんは番組内でつい、自分の思いのたけをぶちまけてしまう。彼は司会者なのだが、審判のような仕事だけではなく、自身

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ひかりごけ~読書記録246~

ひかりごけ~読書記録246~

『ひかりごけ』は、武田泰淳の短編小説。1954年(昭和29年)3月に雑誌『新潮』で掲載され、同年7月に『美貌の信徒』に収録された。実際に起こった食人事件(ひかりごけ事件)を題材に書かれたレーゼドラマ。紀行文、戯曲第一幕、戯曲第二幕の三部構成となっている。

武田泰淳は、浄土宗僧侶でもあった。
作者はこの作品を通して落ち着いた日常生活の背後にある、戦時下の惨劇を生き延びたものとしての自覚を示した。

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続・病院で死ぬということ~読書記録245~

続・病院で死ぬということ~読書記録245~

1993年に刊行された山崎章朗医師による著。

1990年に前作「病院で死ぬということ」が刊行され、その後、著者はカトリックの修道院の作った病院でホスピス医として働くことになった。

前作と同じく、各個々人のエピソードもあるが、ホスピスとはどういうものである科の心がまえが以前と違っていると感じた。

それが、前著で書かれていた著者自身のイメージと実際に働き始めてからの対比で表されている。

著者が

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水の子 1863年 キングスレイ~読書記録244~

水の子 1863年 キングスレイ~読書記録244~

イギリスの牧師 チャールズ・キングスレイによる子ども向けのおとぎ話・ファンタジー小説。
19世紀の児童文学で最も知られている作品の一つである。 1862年から1863年に『マクミラン』誌に連載され、1863年に出版された。

主人公は煤だらけの煙突掃除の少年・トム。施工先でエリーという名前の上流階級の美少女に遭遇し、彼女の家から追い払われ、川に落ちる。そこで彼は溺れ、「水の赤ちゃん」に変身する。そ

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日本に絶望している人のための政治入門  ~読書記録243~

日本に絶望している人のための政治入門  ~読書記録243~

2015年、国際政治学者の三浦瑠麗氏の著作。

私は、政治学や国際政治理論というものを生業にしている人間で、理論というのは、複雑な世の中を理解するための視座を提供するという事です。
(本書より)

私が一定の知能指数がないからだろうか。
「政治入門」と言うには、難解すぎて、よくわからない本であった。

わざと難解にしているのだろうとも読み取れるのは、カタカナの濫用だ。

パソコンで調べながら記録し

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軽いお姫さま~読書記録242~

軽いお姫さま~読書記録242~

イギリス人の作家。ジョージ・マクドナルドが1863年に書いた童話。
マクドナルドは、アンデルセンの影響を受け、宗教的な作品が多い。

マクドナルド,ジョージ
1824‐1905。スコットランド生まれ。『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルなどともにイギリス児童文学の黄金時代をきずいた作家の一人。サセックスでしばらく牧師をつとめた後、ロンドンに出て文筆生活に入る。『ナルニア国ものがたり』のC.

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きりこについて 西加奈子~読書記録241~

きりこについて 西加奈子~読書記録241~

2009年 角川書店より発行。書き下ろし。

出版社より紹介文

きりこは両親の愛情を浴びて育ったため、自分がぶすだなどと思ってもみなかった。小学校の体育館の裏できりこがみつけた小さな黒猫「ラムセス2世」はたいへん賢くて、しだいに人の言葉を覚えていった。ある事件がきっかけで引きこもるようになったきりこは、ラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。夢の中で泣き叫んでいた女の子を助けるために……。

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白山信仰の謎と被差別部落~読書記録240~

白山信仰の謎と被差別部落~読書記録240~

著者は、前田速夫氏。北陸、福井県の出身だ。

北陸の白山信仰については、かなりの本を書かれておられる。
ご自身が福井県出身ということで、ルーツというか、1つの事に真剣に突き詰める姿勢に感服した。

白山信仰は白の神秘を宿している。一般には虫歯治しの神様、疱瘡治しの神様、縁結びの神様、子供好きの神様、お産の神様として崇められている白山神だが、熊の信仰が「黒い宗教」なら、白山信仰は「白い宗教」であろう

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なめとこ山の熊 宮沢賢治~読書記録239~

なめとこ山の熊 宮沢賢治~読書記録239~

宮沢賢治の童話だ。

岩手県にある、なめとこ山で漁師をしている男の話だ。
宮沢賢治は、熱心な日蓮宗の信者であったことが知られている。多くの作品にも仏教的な法が織り込まれている。

この話も、私個人の考えであるが、「命の尊さ」「人だけが偉いのではない」「動物も植物も皆が尊い」という、仏教的なものを感じるのであった。

呪文 星野智幸 2015年~読書記録238~

呪文 星野智幸 2015年~読書記録238~

星野智幸による小説。

出版社による紹介
それは、希望という名の恐怖――寂れゆく松保商店街に現れた若きリーダー図領。人々は彼の言葉に熱狂し、街は活気を帯びる。希望に満ちた未来に誰もが喜ばずにはいられなかったが……。

舞台は、寂れて行く商店街。
主人公は、その商店街でメキシコ料理店を営む霧生であるが、出て来る登場人物各人を章ごとに丁寧に表現している。

21世紀という時代を感じさせる作品であった。

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パパ活女子 中村淳彦~読書記録237~

パパ活女子 中村淳彦~読書記録237~

2021年に発行されたノンフィクションライター中村淳彦氏のルポ。

「パパ活」とは、女性がデートの見返りにお金を援助してくれる男性を探すこと。主な出会いの場は、会員男性へ女性を紹介する交際クラブか、男女双方が直接連絡をとりあうオンラインアプリ。いずれもマッチングした男女は、まず金額、会う頻度などの条件を決め、関係を築いていく。利用者は、お金が目的の若い女性と、疑似恋愛を求める社会的地位の高い中年男

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国民国家のリアリズム~読書記録236~

国民国家のリアリズム~読書記録236~

2017年、国際政治学者・三浦瑠麗氏と、元東京都知事(当時)の猪瀬直樹氏による対談本。

国家の将来のビジョンを描いた上での国防や国益の議論がなされていない昨今。注目を集める国際政治学者とナショナリズムをテーマにした作品を世に送り出してきた作家が、トランプ時代の日本の針路を考える。
(角川書店による紹介文より)

率直な感想を言えば、猪瀬直樹氏が先導し、三浦瑠麗は猪瀬直樹氏を実に気持ちよくさせる為

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赤毛のアン 1993年 松本侑子訳~読書記録235~

赤毛のアン 1993年 松本侑子訳~読書記録235~

元テレビ朝日社員(ニュースステーションで初代天気予報キャスター担当)の松本侑子さんが、1993年に訳された本。
一言で言うと、訳者の気迫を感じた。
今までの訳は、ところどこと省略して紹介されていたらしい。
(村岡花子訳を愛してきたので、初めて知った)

深町眞理子先生のエッセイを読んだ時にも抱いた感想であるが、海外の作品を読む場合、どうしても翻訳者の視点を通して私たちは読む、知る事になる。
だから

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