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【第1話】ふたごの兄は能力者

#創作大賞2024
#漫画原作部門

【あらすじ】
双子の兄をもつ小学6年生の「わたし」マナカ。
わたしの兄は2人とも能力者
1人はアスペルガー。もう1人はADHD。
そう。これはファンタジーじゃない。

兄たちはその能力で、わたしにはできないようなすごいことをしてみせる。喧嘩するときだって、普通の喧嘩とちょっと違う。

でも……時にはその能力を持て余して、能力の暴走を止められずに苦しんでる。それに、外で能力をおさえるのにはすっごく体力がいるんだって。

わたしだけが知っている、兄たちの普段の姿。
こんなにかっこよくて、ちょっとおバカで、優しい兄たち他にいない!

発達障害✖️能力者✖️バトル✖️妹
これを読んだら発達障害への見方が変わる!?
サクサク楽しめる一話完結型。

***

わたしには双子の兄がいる。
2人とも能力者で、わたしだけが凡人。


世間では兄たちみたいな人を発達障がいとも言うらしいけど、それより能力者の方が合ってる、とわたしは思ってる。



おっと……!!詳しい説明はあとで。
今日も始まったみたい。2人のバトル。
さぁ、実況を始めようか。


■第1話 並んだ本とソファー■


「誰だよ、これやったの!」

2階の子ども部屋、本棚の前でりゅうが口火を切った。
わたしはすぐさま状況の確認に走る。

先に生まれた方の兄。にいにって呼んでいる。中学1年生。

本名はあるのだけれど、家では自分のことをブラストドラゴンと呼んでいる。長くて呼びにくいので、りゅうとしよう。龍は背が高く、ひょろりとしていてメガネをかけている。

いつも左手に本を抱えている。主な生息域は図書館・布団の中・自分の机。
龍の能力はアスペルガーという。知略ちりゃくにすぐれ、口論ならだれにも負けない。尊敬する人は諸葛孔明しょかつこうめい黒田官兵衛くろだかんべえ。将来の夢は検察官。

見ると、本棚には兄たちお気に入りのマンガが並んでいる。

にいに、どうしたの?」
「見ろよマナカ。これ、俺が昨日1巻から順番に並べたはずなのに、8巻だけないだろ?」
確かに、8巻だけが列から抜かれて消えている。

あたりを見回すも、どこにも落ちていない。
探すまでもない。子ども部屋の左側、龍の空間は床に何もない。
龍はあらゆるものに対して、順番に、美しく、理路整然に並んでいることが大切だと思っている。
龍はあるべき場所にその物がないと気が済まない。


「8巻は、ここになきゃダメなんだ、絶対に。」
ふむ。龍の怒りレベル、10段階の4ってところ。


「絶対、白虎びゃっこのしわざだ!オイ!白虎!!!」
龍は子ども部屋から、1階のリビングにいるはずの白虎を呼んだ。

「白虎!!白虎ー!聞いてんのか!?」


・・・。


いくら龍が呼んでも白虎の返事がない。
「わたし見て来るね。」
わたしは1階のリビングにいる白虎のもとへ走った。


白虎はリビングのソファーに座り、テレビでYoutubeを見ていた。

白虎はもうひとりの兄。お兄ちゃんって呼んでいる。やっぱり中学1年生。

これまた本名はあるのだけれど、家では自分のことを白虎びゃっこと呼んでいるので、そのまま白虎としよう。全く厨二病ちゅうにびょうってやつは厄介な病気だね。

白虎はとにかく運動神経がすさまじく良い。無駄な肉が一切なくて、アスリート選手みたいな体つきをしている。主な生息域は大きな公園・サッカーグラウンド・押入れの中。
白虎の能力はADHDエーディーエイチディーという。素早い脚、強い力、白虎から逃げられるものはいない。尊敬する人は三苫薫みとまかおる大谷翔平おおたにしょうへい。将来の夢はプロサッカー選手。



白虎お兄ちゃんにいにが呼んでたよ?」
白虎の返事がない。

「ねぇ!白虎お兄ちゃん!聞いてる?」
白虎の返事がない。


「ねぇってば!!!」
白虎の返事がない。


そこでわたしはハッと気づいた。

すでに能力が発動されている・・・・・・・・・・



これは……あれだ!!


白虎の能力 Ⅰ


ハイパーコンサントレ―ション過集中


これはADHD能力者の白虎が持ち合わせるバリア的な能力で、ハイパーコンサントレ―ションが発動されている時の白虎は、外の世界のすべてを遮断できるのだ。これが発動されている間はどんなに話しかけても、目の前におやつを置いても、白虎には届かない。ある時はその能力を使って、1週間もかかりそうな分厚い本を1日で読んでしまった。その間、食べるのも、寝るのも忘れていたようだった。


「白虎!?オイ!!」
まずい。龍の怒りレベルが5に上がってる。
2階からリビングに降りてこようとしている。


白虎お兄ちゃん!!ねぇ!にいにが怒ってるよ!」
肩をゆすっても白虎には届かない。


バンッと音がして、龍がリビングの扉を開けた。
しまった、間に合わなかった。


「白虎!聞いてんのかって!」
龍はテレビの前に立ちはだかった。

「邪魔。どいて。」
「だから、聞けって!」
「邪魔だって。テレビ見えねぇだろ。」
「おまえに話があるんだよ!」
龍は白虎のハイパーコンサントレ―ションを解こうとしているが、うまくいかないようだ。


いつまでも話を聞かない白虎に対し、ついに龍は強硬手段に出た。


テレビの電源を消したのだ。


「何すんだおまえ!!??」
途端、白虎の怒りスイッチが入った。そのレベルは7。わりとやばい。




「俺のマンガ、8巻読んだのおまえだろ?どこやった?」
「しらねーよ!テレビつけろ!」
「しらねーじゃねぇよ!8巻、どこやった!?」
「しらねーもんはしらねーよ!」


あぁ、また口論が始まってしまった。今日はお母さんもいないし、止めるのは私しかいないみたい。さて、どうしようか。



ふと見ると、白虎が座っていたソファーにマンガの8巻が見えた。

「あの、にいに、8巻あったからさ、ほら。」

わたしは喧嘩を止めようと、ソファーの方を指さす。
それがまずかったみたい。


「ほら見ろ!おまえ今知らないって言ったよな?じゃぁどうして、白虎が座っていた・・・・・・・・ソファーに・・・・・8巻が置いてあるんですか・・・・・・・・・・・・マナカ、読んだ?読んでない?だよな?俺も読んでない。そして俺はマンガを読んだら必ず棚に戻す。順番にな。ということは、だ。俺か、マナカ以外がマンガを読んだことになる。そして、白虎。お前は今までこのソファーでテレビを見ていた。そのソファーにこの8巻が置いてある。つまり、この8巻を読んだのは白虎、お前しかいない。犯人はお前だ!!


で…でた!!!
ここで炸裂……!!



龍の能力 Ⅰ


ソードオブライトアーギュメント正論の剣


正論。龍はこのようにして、反論できないほどの長文・正論で相手を論破させるのだ。時には論破させるための材料集めまでして相手を徹底的に叩き潰すこともある。


龍の正論はいつも痛い。見ているわたしまで、責められている方被告人がかわいそうになるほど。わたしが犯人だったら龍にだけは取り調べられたくない。すぐに降参してしまうと思う。



しかも今の白虎はバリア能力を使っていなかったから、この攻撃をモロにくらったはずだ。

「う……うるせぇぇぇ!!!!!」
白虎の怒りメーターが8を超えた。このままいくとつかみ合いの喧嘩が始まってしまう。なんとしても10を超える前に止めなくちゃ。
さらなる能力が発動する、その前に…!


「待って!!2人とも!マンガ見つかってよかったね! 白虎お兄ちゃんにいににマンガ返してYoutubeの続き見たら?ね?ね?」


わたしはそう言いながらテレビの電源を再び入れる。2人は鼻息荒く見つめ合っていたが、今回は若干白虎の分が悪い。
さらに白虎はYoutubeのつづきが気になるようだ。



「チッ……そらよ。」
白虎がマンガを龍の足元に投げた。


第2ラウンドの始まりだーー

■マナカの苦労が水の泡。 そんな彼女を待ち受けるさらなる苦難とはー…? 次号!




▼第2話

▼第3話



※文中のイラストはcanvaAIを利用して作成したイメージ画像です。






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