【第2話】ふたごの兄は能力者
■第2話 大岡裁判■
わたし、マナカ。小学6年生。
今算数の宿題をやっているんだけど……。
どうしても分からない問題があって困っている。
これはもう、兄に頼るしかない。
わたしは2階の子ども部屋のドアをそっと開けた。
整然と揃った左側の空間、机に向かう龍の姿があった。龍は何やら難しい顔をして本を読みふけっている。
(龍は忙しそう。白虎に聞いてみようかな)
同じ子ども部屋の右側はもう1人の兄、白虎の空間。
龍とは真逆で、机がどこにあるか分からないくらい、物がごちゃごちゃにあふれている。どうして机の上にくつ下が……?そしてなぜか、白虎はその机の下にいて、狭そうに体を縮めてマンガを読んでいる。時折肩を揺らしながらへへへと笑う白虎を見て、白虎なら大丈夫そうだと思った。
「白虎、今いい?」
「なに?」白虎はマンガから顔をあげずに、ひゃひゃひゃと笑いながら答えた。
「勉強、教えて欲しいんだけど。」
「んー……。ちょっと待って…っぷ!くくくっ」
白虎はマンガから目を離さない。
(これ、聞こえてないな。)
わたしは白虎の能力、ハイパーコンサントレ―ション*を思い出し、白虎に教えてもらうのを諦めることにした。(*第一話に登場した能力)
「龍、ちょっと勉強教えて欲しいんだけど…。」
真剣な顔をして本を読んでいた龍に声をかけると、案外すんなりと顔をあげ
「いいよ。どれ?」とこちらに向き合ってくれた。
「ありがとう!これなんだけど。」
わたしは龍の椅子の隣に、小さなスツールを用意して座った。
「あぁ。これな。これはまずこの計算式……」
と、その時。
「マナカ!勉強分かんないんだって?教えてやるよ!」
白虎が後ろからわたしの肩をたたいた。
「あ、でも、いま龍に……」と言い終わらないうちに龍が白虎を制した。
「今、オレがマナカに勉強を教えようとしているところだ。」
それを聞いた白虎は
「は?でもマナカ、最初にオレに教えて欲しいって聞きに来たよな?」
と、片方の眉を吊り上げた。
「でも、白虎はマンガ読んで……」
とわたしが言い終わらないうちに、またしても龍が
「お前がマンガ読んでて教えてくれないからマナカはオレに聞きに来たんだ。」と白虎を制した。
「もう読み終わったからオレが教えてやるって!」
『いいや、お前はもういい。今オレが教えるところだから。』
「なんでだよ!?マナカはオレに教えて欲しかったんだろ?な?マナカ?」
「あの、でも……」
『さっきはな。でも今はオレだ。』
(ちょっとわたしにしゃべらせて欲しい)
「お前は本の続きでも読んでればいいだろ?マナカに勉強を教えるのはオレだ!」
『いいやオレだ!』
「いいや!オレだ!!」
あぁ。今回も始まってしまった……。
そしてわたしが止める間もなく(今回はわたしが原因で?)能力が発動してしまった。それも、2人同時に。
白虎の能力 Ⅱ
ヘルプフルインパクト!!
龍の能力 Ⅱ
エクスポーションノウレッジ!!
2人はなおも、「オレだ!」「オレだ!」と言い合っている。
(うーん。正直どっちでもいいんだけど……)
わたしはオレオレ言い合う2人を見ながらため息をついた。
2人ともわたしの為に勉強教えたがってるけど……結局喧嘩して教えてくれない。
「もう!どっちでもいいんだけど!?」
「「よくない!!!」」
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