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愛し愛され輝いて生きるガイドブック

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#女

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」最終話 空気を吸うように愛を吸う

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」最終話 空気を吸うように愛を吸う

空気を吸うように愛を吸う

今、私は肉体を手放し、ひと休みしているの。
これまで生きてきた人生を走馬灯のように振り返り、あなたにお話ししたの。
あなたにお話ししながら、私の魂は色が抜け落ちるように少しずつ薄く軽くなっていく。
魂は思いがたくさん詰まったままだと、重くて上に上がれない。
現世であった様々な思いを手放し軽く、軽やかになり、風船のようにすうっと、極楽浄土に行く準備をしているの。

こうや

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十八話 お金に復讐される

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十八話 お金に復讐される

お金に復讐される

「私、天樹院様さえよろしければ大奥に戻らず、ずっとこちらに住みたいです」

生まれたばかりの赤ん坊は長松と名付けられた。長松を抱っこした夏殿が私に懇願した。私はおやっ、と彼女の顔を見た。夏殿が言うには、窮屈な大奥での暮らしより、ここでの自由で息のしやすい生活が自分のためにも子供のためにいいのでぜひに、との事だった。私は夏から赤ん坊を受け取り、抱っこした。

ふっくらした頬をもつ

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十七話 女で生きていく覚悟を決める

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十七話 女で生きていく覚悟を決める

女で生きていく覚悟を決める

突然天秀尼を失った私は、片方の翼をもがれた鳥のようにエネルギーを失った。
彼女がいたからこそ、共に手を取り合い、女性の救済に向けて力を注げた。
その場所として東慶寺だった。
私と彼女は母と娘というだけでなく、同じ志を持つ同士としての絆でも無すまれていた。かけがえのない同志を失ったのは、夫や子を失った時とはちがう、帰る家を失った子供のように寂寞とした気持ちだった。
彼女

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十六話 すべては光と影の表裏一体

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十六話 すべては光と影の表裏一体

すべては光と影の表裏一体

その後、私は東慶寺をよりよい寺にしたいと考えた。そこで目をつけたのが東慶寺の伽藍だった。東慶寺の伽藍は古びて、腐りかけていたの。伽藍とは、皆が集まり仏の道を説きながら修行する場所。
言わば、東慶寺の「顔」となるメインスペース。
そこが汚く古びていたら、東慶寺のイメージが悪い。
だからこそ加藤明成にも見下され、攻め入る隙を与えてしまったのね。私はこの伽藍を女性の救済の役に

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十五話 愛してくれてありがとう、愛させてくれてありがとう

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十五話 愛してくれてありがとう、愛させてくれてありがとう

愛してくれてありがとう、愛させてくれてありがとう

扉の開いた二十メートル先に先に、弟で現将軍の家光がいた。私はずらりと並ぶ家臣達を観客に見立て、ランウェイでウォーキングするモデルのように優雅に、そして凛として歩いた。家光の前まで進むと座って頭を下げ、いきなり口火を切った。
「家光殿、お尋ねしたいことがあります。
東慶寺は幕府公認の縁切寺で、間違いなかったですね?」

「確かに、東慶寺は幕府公認の

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十四話 神様は後からちゃんと、答えを用意している

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十四話 神様は後からちゃんと、答えを用意している

神様は後からちゃんと、答えを用意している

当時、幕府から縁切りが認められた駆け込み寺は、天秀尼のいる東慶寺と私が豊臣とのご縁を切った満徳寺だけだった。
この時代の離婚制度というのは、きわめて女性に不利な仕組みなの。離縁したくてもできない妻が、夫から逃れこの縁切寺に駆け込む。
縁切寺は妻から離婚請求を聞き妻を保護したのち、寺は夫に、離縁の示談を薦める。
それでうまくいけば離縁が成立するけど、夫がご

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十話 今の自分を超えたい!

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十話 今の自分を超えたい!

今の自分を超えたい!

忠刻ダーリンを失った本多家は、跡取りを弟の政朝様が継ぐことに決まった。私は勝姫を連れ、政朝様にお祝いの挨拶に行った。
おめでとうございます、と頭を下げた私に政朝様は恐縮し、笑顔で言った。
「義姉上、いつまでもこの姫路城に留まり下さい」
政朝様も忠刻ダーリンに似て心優しい方なの。
政朝様のすぐ横に座っていた義父上は、最愛の妻熊ママを失いげっそりとやつれていた。そして勝姫を手招

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十九話 涙は明日への力になる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十九話 涙は明日への力になる

涙は明日への力になる

「千姫様、あなたは亡くなった秀頼公のお恨みをかっております」

その言葉を聴いた時、背中がゾッと泡立った。
この人の言うことを聞いてはいけない、という思いと、すがりたい、という思いが強烈に交差した。
本能は「近寄ってはいけない!」と赤信号を出し続けた。でも、私は彼女の前に座ってしまった。すぐそばには、ピタリと刑部卿局が張り付いていた。

私の中で、ワイルドフラワーは確かに咲

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十七話 自分だけでなく、大切な人達のために強くなる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十七話 自分だけでなく、大切な人達のために強くなる

自分だけでなく、大切な人達のために強くなる

その頃、私は姫路の民たちから「播磨姫君」と呼ばれているのを知って、
くすぐったく思った。けれどそれは播磨の地に受け入れられたことだと思い、誇らしくも思った。
その地で妊娠した私は嬉しさより、戸惑いの方が大きかった。
以前の結婚で妊娠と流産を味わい悲しい思いをした私に「妊娠」は必ずしも喜ばしい出来事ではなかったの。
もし、また流産したらどうしよう、そんな

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十六話 見つけ、選び、決め、覚悟する

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十六話 見つけ、選び、決め、覚悟する

見つけ、選び、決め、覚悟する

私の結婚の裏側で密かに起こっていたことは、後に「千姫事件」と呼ばれる出来事だった。
私は一歩間違えば、略奪される花嫁になるところだった!
あとでこの話を聞き、心底ぞっとして震えた。
「ああ、私、神様を味方につけておいてよかった・・・」
神様は私の味方、昔そう決めた自分を褒めたわ。

千姫事件の首謀者は、おじいちゃまが私との結婚を反故にしたあのおっさん、坂崎直盛だった

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十五話 それを、ご恩送り、という

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十五話 それを、ご恩送り、という

それを、ご恩送り、という

私の気持ちを確認した刑部卿局の動きは、目を見張るほど早かった。
おじいちゃまに私と公家とのご縁つなぎをストップしてもらい、おじいちゃまの孫で私の従姉になる忠刻様のお母様、熊姫様に話をした。
熊姫様は「願ってもないご縁です!」と、積極的にこの話を進めて下さった。もちろん、忠刻様のご意思を確認済みの上でね!
刑部卿局がしみじみ言った。
「忠刻様も初めて船の上で姫様に出逢って

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十四話 今すぐ幸せになる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十四話 今すぐ幸せになる

今すぐ幸せになる

おじいちゃまに啖呵を切った私は、自分の部屋に戻り窓から秋の澄み切った空を眺めた。のびのび広がる雲を見ていたら、いつの間にか彼の顔が浮かんだ。

もし、もう一度結婚するなら、あの人みたいな男子がいいわぁ~
あの人って言うのは、ほら、桑名の七里の渡し船で出会ったイケメンの彼。
彼と一緒なら、私は笑顔でいられそう。
あの彼、本田忠刻さん、今どうしているのかしら。

そんなことを雲のま

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十三話 私の人生はもう一度、ここから始まる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十三話 私の人生はもう一度、ここから始まる

私の人生はもう一度、ここから始まる

「お、おじいちゃま、それは・・・・・・あの坂崎なんとかという五十代くらいのおじさんでしょうか?」

ドンピシャ思い当たる人物を思い浮かべ、恐るおそる尋ねてみた。
おじいちゃまは「しまった」という渋い表情で、肩をすくめてうなずいた。その顔に、後悔先に立たず、と書かれていた。
「な、なぜに?!」
私はあっけにとられた。
「すまん!千!!」
おじいちゃまは、またわた

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十二話 恋は落ちるもの

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第十二話 恋は落ちるもの

恋は落ちるもの

奈阿ちゃんを東慶寺に預けたことで私はホッとしたのか、熱が出て寝込んでしまった。
秀くんと、大阪城を失った私の心と身体のダメージは大きかった。
私は高熱の中で、燃える大阪城を何度も見た。
鳥かごの中で交わした秀くんとの最後のキス。一人鳥かごを出たわたしは、鳥かごの中に残っている秀くんに「逃げて!」と叫んだ。でも秀くんはフリーズしたように動かない。私はがんがん鳥かごを揺さぶり、鍵を探

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