空想日記

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酸欠

ばたばたばた、目まぐるしい日々なのです。
楽しくて、浮かれて、走り回って、息切れして。

正直酸欠でもう前が見えないくらいなんだけど。
貧血起こして解像度下がった視界みたいに、耳鳴りでよく聞こえない世界みたいに、どこか遠くに見える目の前の景色。

ああ、一生忘れないんだろうな、なんて無責任に考える。

永遠の約束も、絶対の誓いも、全てはユートピア。
いつか蜃気楼みたいに消える。
消えなかった時にだ

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やりなおしドリンク#3

昨日俺は確かに会社を無断欠勤した。
何度も震えたポケットの感触や、留守電に残された番号の記憶は真新しいと言っても過言ではないほどに。

なのに、昨日、俺はなぜか会社に出勤したことになっていて、あろうことか周りの同僚たち——上司や後輩を含む全員である。——も俺が出勤していたとそう信じ込んでいるようだった。

俺は、まさしく狐につままれたような感覚に陥った。
現実に、こんなに俺にばかり都合のいいような

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やり直しドリンク#2

ゴミ収集車の呑気な音楽とともに、現実に戻される。
俺は昨日、命よりも大事にしていたお守りをなくしてベコベコに凹んでいた。そんなおり、コンビニで見かけた謎の栄養ドリンクのその謳い文句に目を止めた。

『これを飲めば一つだけ、過去の出来事を無かったことにできる』

ホレグスリンだの、アタマヨクナールだのといったジョークグッズと思った俺は最初それを無視したのだけれど、なぜか、コンビニのクジでそいつを引き

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やり直しドリンク#1

『これを飲めば一つだけ、過去の出来事を無かったことにできる』

そんな謳い文句の栄養ドリンクを見つけたのは、たまたまだった。
夜勤明け、人気のないコンビニ。僕はぼうっとする頭で、何が欲しいわけでもなく先ほどからお菓子の棚を行ったり来たりしていた。

いつもなら、疲れた自分にささやかなご褒美なんて言ってロング缶のビールとつまみでも見繕っている頃合いだったが今は到底そんな気分になれない。
俺は今日、後

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深海のクラゲは太陽の夢を見た。

クラゲは太陽を見てみたかった。
一目、一目でいいから見ることができたら、きっと何にも変えられない幸せあるだろうなと思うほどであった。

ある深海魚はこう言った。
『太陽に焦がれるなどなんて愚かな!きっとお前はかの太陽の、熱で焦がれて死んでしまうぞ。』

ある甲殻類はこう言った。
『太陽を一目見たい?きっと目にした瞬間光で眼が焼け切れるだろうよ。』

ある海藻はこう言った。
『太陽はきっと、美しいだ

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ハニー・レモン・ハニー

レモン輪切りにして砂糖にダイブ。
雪と氷に包まれる。
透明のガラス瓶に反射するきらきらしい黄色。
仕上げに琥珀色した蜂蜜とぽとぽ。

ハニー・レモン・ハニー

元気が出るおまじない。
しゅわしゅわ弾けるソーダでも、ほっと暖かい紅茶でも、添えるだけで心ときめく簡単にできるおまじない。

思うところがいっぱいある時、溜まった気持ちが溢れ出る時、無心で作るハニーレモン。甘酸っぱくて少し苦い。今日はちょっ

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夏の月

胸がとびきり苦しい時のが、世界はいっとう美しい。
“行かないで”その一言を、飲み込んだ情けない自分にため息をつく。

こんなに辛いのに、月が綺麗だ。
こんなに悲しいのに、花が咲いてる。
こんなに怖いのに、なぜだか笑いが止まらない。

泣きながら笑って空を見る。
星はほとんど見えないけれど、雲ひとつない晴れ空だってこと、夜の中だけどはっきりわかる。

見上げることしかできない背中、遠くの方で見つめる

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宝石泥棒

猫は街の街の宝石屋の軒先でよく見かけられた。
ガラスのショウウィンドウの前にひとり、お行儀よく座って顔を見上げる。
視線の先には赤い宝石。
ライトアップされて、キラキラと輝いている。

猫は別に宝石が欲しいとかそういうことを思っていた訳ではないただ、退屈そうに輝く宝石が面白くて、ちょっかいをかけたらどんな反応をするのか見てみたかっただけだった。

赤い宝石は、人気者だった。
それ故高慢で、そして孤

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秘密

黙っていようと思った言葉を、誰も見てないと信じ込んで空に吐き出す。
地面に穴を深く掘り、王様の秘密を叫んだ彼のように。私は私の心に蓋をする。
通じるだけが想いじゃないから。

宛先のないラブレター、そっと焚き火の糧にする。ぱちぱち弾けてごうごう燃える。
私の言葉は灰になる。

美しい、と私は思った。

ラブ、を込めたとびきりのレター。
恋じゃない、そういうんじゃない。
うまく言えない、言おうとも思

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やけど

君の体温で低温やけど、心が溶けて落っこちた。
ケロイドみたいに跡に残るのは、あの日の記憶。
焼き付いて離れない、ヒリついて、痛い。

水膨れが破けるみたいに、薄く腫れ上がった皮膚が破けて、体液が決壊する。このまま、流れ続けたら、膿んだ気持ちも出し切れるかな。

忘れたいのに傷跡が思い出させる。
忘れたいのに痛みがそれをさせてくれない。
忘れたいのに、憎いくらいで、だけどどうしようもなく愛おしい。

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