#8.ロロは気まぐれ屋さん
あさ、ロロを預かりにお隣へ向かう。
そのまま家に戻る前に散歩に連れて行くためだ。
ロロは散歩が大好きで、ふたつのしっぽをぶんぶんと振り回しながら歩いていく。
少し先を急ぎながら、時々こちらをチラチラと振り向く姿が本当に可愛くて、つい甘やかしたくなる。
電柱が気になって右にふらり、道端の雑草をかじろうと左にふらり、道路に飛び出したり危険がない限りは自由にさせてしまう。
道草をくいながら向かう先は芝生の広場がある公園だ。
公園に到着したら、ボールや木の枝でロロの気が済むまで遊び、少し休憩をする。
木陰のベンチに2人して座り(ロロは膝の上だけど)ぼーっとする。
あさはお散歩ラッシュなので、公園にはたくさんのイヌたちがいて、それぞれ挨拶を交わしている。
ロロは気まぐれ屋さんなので、残念ながらほとんど他のイヌとは遊んだりしない。
(ここで他のイヌに気を取られていると、足を齧られ恨みがましそうな目で見上げて来るので、なるべく至ってなんでもないフリをしなければいけない。)
ロロは野生を忘れた顔をして、膝の上でヘソ天しながら、早く撫でろと言わんばかりに前足で催促してくる。
本当にイヌなのか怪しくなるほどに人臭い表情をするのだけれど、それがあまりにもおかしくって、散歩に行くたびにカメラロールの写真が増えていく。
家に戻るとロロは一目散にいつもの場所へ向かう。
我が家にはロロ専用スペースなるものがあって、そこにはソファやぬいぐるみ、おもちゃなどが置いてあり、喜ばしいことにそこはロロのお気に入りの場所だ。
不思議なことに、ロロのためのアイテムが気付くといつの間にか増えている、妖精の仕業だろう。
(昨日も、買った覚えのないロロの新しいおもちゃが配達で届いたりした。笑)
普通のイヌなら、一日の留守番くらい出来るだろうけど、ロロは保護宇宙イヌだから少し難しい。
保護される前に色々あったらしく、ひとりに出来ないため、お隣さんが一日家を空けなければいけないこの曜日だけ、ウチで預かっている。
実は、捨てられているロロを見つけたのは自分だ。
ケガや憔悴が酷く、慌てて病院まで駆け込んだことは未だによく覚えている。
当時は会社勤めをしていたため家で飼うことは難しく、すぐに里親募集をしようとしていたところ、話を聞いたお隣さんが条件も合わせられるということで飼い主に名乗り出てくれた。
それから1年の間に、会社を辞めたり、お隣さんの都合が変わるなどして今に至るという形だ。
お隣さんの懸命な介護のおかげで、ロロはすっかり元気である。
さっきもお気に入りのぬいぐるみの首を咬みちぎろうと奮闘していた。お願いだからそれはやめて欲しいのだけど。
目を離すとすぐに無重力化して浮かぼうとするので、基本的にロロを預かる日は傍で作業をする事にしている。
無重力化した宇宙イヌを放置して大丈夫なことなど少しもないからである。
ロロを構ったり、仕事をしたり、ロロを構ったり構ったりしているとあっという間に一日が終わる。
家のチャイムがなる前に、何かに気づいたロロが玄関まで駆け寄る。
そろそろかと思うと、チャイムが鳴ってお隣さんが迎えにくる。
ロロをかえす前に少しだけ玄関で立ち話。
主に、本日のロロについてを話す。
その時、スクープ写真を送ることも忘れない。
時々、そのまま一緒に夕飯をご馳走になったりしたりもする。そういう日は大抵ロロが何かした日だ。
今日は特に何もなかったので、少し話してすぐに解散となった。
ロロが家にいるのは、たったの半日程なのに、帰ったあとは驚く程に静かだ。
普段はあまり付けないテレビも、こんな夜にはつい、つけっぱなしにしてしまう。
まあ、明日にでも庭を覗けば、どうせすぐに会えるのだけど。
テレビを消して窓を開ける。
静かな夜、鈴虫の音が小さく聞こえた。
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