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#11.タイム物置

ウェバロキア山脈の地底から、古代生物の化石が発見されたらしい。
未知の巨大生物らしく、その謎の解明に世界中から注目が集まっているそうだ。

地の底に眠る古代生物。
なんてロマンティックな響きだろうか。

実は遥か昔に封印された邪竜で、掘り起こすことでその封印が解け、世界が滅亡の危機に陥る!
なんてシナリオだったらば面白いのに。

まあ、そんなことある訳がないので、今日は我が家の地下を掘り起こして見ることにした。

なんて事ない、掃除日和だ。

シェルター代わりの地下室の、さらに下の備蓄室というか備蓄庫は、まあいわゆる物置で、現在は魔窟と化している。
化石が眠っているならまだマシなくらい、何があるか分からない、恐ろしい場所だ。

先週、久しぶりに地下室をシェルターとして利用した時、なんの備えも無かったことに流石に少し後悔を覚えたからだ。

マスク、メガネ、ゴム手袋の完全装備をして、掃除用具を引っさげ地下に向かう。

ロマンではなくリアルと向き合うのだ!

階段を降り扉を開けて、奥に進み備蓄庫の戸を開ける。

乱雑に積み上げられた沢山の物たち。
手前の方はなんとなく見覚えがあるが、奥や下の方となるとてんで思い出せない。
恐る恐る手前の荷から崩していく。

出てくるのは、もう使わないけどなんとなく捨てられなかったモノたち。

カセットテープのレコーダー、五徳の歪んだガスコンロ、古いノートパソコン、錆びた電池、果てには片方だけの靴下や、何故ここにあるのか全く覚えのないスナック菓子まで。
出るわ出るわ、恐ろしいほどにガラクタの山だ。
とりあえず、捨てられそうな物はどんどん捨てていく。
“いつか使えそう”で取っておいた物は全部捨てる。
また買えるものも捨てていく。

物を手に取る度に思い出が溢れ出てきて一々手が止まりそうになるが、無心で捨てる。

時たま、シリアルや缶詰なども出てくるのだが(きっと保存食のつもりで入れて置いたものだろう。)そういうのはもう光の速さで捨てる。

古びたアルバム、卒業証書、人からもらった手紙。
こういう、思い入れや感情が詰まったものは捨てられないので新たに箱を用意してその中に入れる。

どんどん出して、どんどん仕分けて、どんどん捨てる。

かなりの時間がたった頃、ようやく備蓄庫の中身を全て出し終えた。

一旦上に戻って休憩をする。
だいぶ全身が埃っぽい。マスクと手袋を捨ててメガネを外す。
手と顔を石けんでよく洗っね て埃を落とす。

ソファに座ると、大きな息が出てきた。
この先の作業の事を考えるとかなり気が進まないのだが、とにかく中に何を入れていたのか全て把握しただけ上出来だろう。

上がるついでに持ってきた、思い入れのあるもの達を入れた箱を見てふと思った。

物置の掃除って、なんだかタイムカプセルのようだ。
過去に仕舞った思い出が、整理という名の捜索で蘇る。
変なことまで覚えてるから、あの時こうだったなとか、今じゃ考えられないくらいああだったなとか、なんで忘れてたのか分からない程、当時は絶対に覚えていたかった思い出とか。
大切だったり取るに足らないその思い出が、もう全部一緒くたに、埃まみれで顔を出す。

それが楽しくて、恥ずかしくて。
作業量を思うと体が重くて仕方ないが、過去に仕舞ったタイムカプセルを掘り起こしていると思うと、ロマンティックだ。
まるで1億年も前の地底に思いを馳せるのと同じように。

タイムカプセルならぬ、タイム物置である。

真面目な顔して話しているけど、こんな事でも考えてないとやっていられない。
とにかく1人で掃除するのは大変だったのだ!

当初考えていたよりも、想定以上に物が詰まっており、時間がかかりそうだったので、捨てるものたちを分別したりまとめたりして外に出すまでやって今日は終わりにしたい。

続きはまた明日やろう。
大変なことに、どうやらこのタイム物置は中に入った人の時間も未来に運んでしまうらしい。
(あっという間にあさから夜になっていたのだ!)

目に付いたゴミ以外は全く整理出来ていないので、掃除も含めて明日の方が実は大変そうだなと思いながら、未来の自分に残りを託した。

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