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原書のすゝめ

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語学は楽しい♪ +読書は楽しい♪ =原書は楽しい♪♪ をコンセプトに記事を書いてみました。Let’s enjoy reading in the original language…
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#英語がすき

原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

原書のすゝめ:#25 A Bear Called Paddington

クマのぬいぐるみは、子供たちの人気者である。たぶん。

子供の頃、私が大切に持っていたのはパンダのぬいぐるみだったと思うが、パンダは中国語で「熊猫」と書くから、まあ同じようなものである。

1957年のクリスマスのこと。当時、BBCでカメラマンとして働いていたマイケル・ボンドは、妻へのクリスマスプレゼントに小さなクマのぬいぐるみを買う。そして、このぬいぐるみにパディントンという名前をつけた。その翌

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原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

原書のすゝめ:#24 The Secret Adversary

1915年5月7日、アイルランド沖を航行中のイギリスの大型客船ルシタニア号が、ドイツの潜水艦によって撃沈された。Uボートから無警告で魚雷が発射され、ルシタニア号は20分足らずで沈没、乗員乗客1198名が死亡した。このうち128名がアメリカ合衆国の民間人であったことから、国内で一気に反ドイツ感情が高まる。ところが、同国は依然として中立を維持、その後、ドイツが再び無制限潜水艦作戦を開始したため、191

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原書のすゝめ:#23 The Suicide Club

原書のすゝめ:#23 The Suicide Club

子供の頃に読み忘れた作品の一つ、『宝島』。

大人になってから読んだ気もするが、むしろ覚えているのは『ジキル博士とハイド氏』の方だ。
どちらもロバート・ルイス・スティーヴンソンの作品である。

スティーヴンソンは、スコットランドのエディンバラに生まれた。
父トマスが灯台建築技師であったためか、エディバラ大学ではエンジニアリングを専攻した。その後専攻を法律へ変更し、弁護士資格を取得する。のちに、以前

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原書のすゝめ:#19 The Adventure of The Blue Carbuncle

原書のすゝめ:#19 The Adventure of The Blue Carbuncle

クリスマスが近くなると読みたくなる本がある。

いくつかあるけれども、今回ご紹介するのは、
『The Adventure of The Blue Carbuncle 』(『青い紅玉)。

本作は『The Adventures of Sherlock Holmes』(『シャーロック・ホームズの冒険』)に収録されている短編である。

霜が降りた寒い朝。
みすぼらしい帽子を前にホームズがソファでくつろい

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原書のすゝめ:#18 Rock, Paper, Scissors

原書のすゝめ:#18 Rock, Paper, Scissors

本を選ぶとき、普通は読みたい本を選ぶ。

私が本を読むのは、今いるところとは違う世界へ連れて行ってもらえるからである。だから読みたい本を手に取るわけだが、自分の知らない世界を教えてくれるのは、案外誰かが勧めてくれた本だったりする。

今回の本は、『Rock, Paper, Scissors』。
知人が面白いと言って貸してくれた本で、Alice Feenyのミステリである。筆者はBBCで記者やプロデ

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原書のすゝめ:#14 Carry on, Jeeves

原書のすゝめ:#14 Carry on, Jeeves

英語の授業が苦痛に感じられるようになったのは、一体いつからだろう。

文法の授業では「構文を丸覚えするように」と言われたものだが、丸暗記が苦手な私にとってそれは拷問に等しかった。書取りの時間では、綴りを思い出そうとする間に先生が次の文章を読み始めるので、鉛筆が追いつかず、いつも途中からBGMになるのがオチだった。

しかし、構文の丸覚えも書き取りも語学学習には欠かせないものだから、もちろん一切の責

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原書のすゝめ:#13 Fahrenheit 451

原書のすゝめ:#13 Fahrenheit 451

私はいつも「記事」を寝かせる。
長いものだと1年以上寝かせている。
というか、思いついた時に書いたものが溜まってしまうから、記事の方で勝手に寝ている。

そして、ときどき風味を確認しながら、発酵を待つ。書いた順ではなく、熟成したものから出荷する。そのため、季節感のあるものは少なく、トレンドにも乗らない。英語エッセイは頭に浮かんだ順に書いて、書いた順に投稿しているので、夏に冬の記事が掲載されていたり

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原書のすゝめ:#12 The Adventure of the Western Star

原書のすゝめ:#12 The Adventure of the Western Star

アガサ・クリスティの作品は、長編小説66作、中短編が156作、戯曲15作、だそうである。

実は情報元によってやや数字が異なっているのだが、まあ、多少の誤差があったとしても構わないと思う。いずれにせよ、作品数が多いことには変わりはないのだから。

ある日曜日の朝、突然クリスティの全作品を原書で読もうと思い立った。

何かきっかけがあったわけではないけれど、ストラットフォード・エイボンでセールになっ

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原書のすゝめ:#11 The Shadow Murders

原書のすゝめ:#11 The Shadow Murders

お気付きのとおり扉絵と表題のタイトルが違う。しかしこれは、同じ本なのだ。

そして、この本の邦題は、まだない。

原題の『Natrium Chlorid』はデンマーク語。
ということは、つまり、これは、北欧ミステリファンが首を長くして待っていた、例のあの本。
そう、特捜部Qの第9巻である。

年始にこの記事を見つけた瞬間、ついに邦訳刊行かと胸が躍ったのだが、文中の「『Natrium Chlorid

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原書のすゝめ:#9 The Promise

原書のすゝめ:#9 The Promise

原稿用紙10枚。
文章力をつけるために必要な枚数なのだそうだ。

私は、原稿用紙に換算すると8枚から10枚を目安に記事を書いている。きっちり字数を決めてもよいのだが、日本語以外の言語を使ったり、原文の引用があったりするため、厳密に決めないことにしたのだ。英語エッセイは手書きでA4用紙1枚程度である。

なぜ字数制限を設けるのかという問いに対して、Somerset Maughamサマセット・モームが

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原書のすゝめ:#7 Harry Potter and the Philosopher’s Stone

原書のすゝめ:#7 Harry Potter and the Philosopher’s Stone

読書は、想像力を掻き立てるものである。
とはいえ、大人の想像力に限界を感じることもありはしないだろうか。

世界で爆発的な人気を博したハリーポッター。
児童書にととまらず、大人をも虜にした魔法の書物である。

邦訳で読む場合には、おそらく何の障害もなくファンタジー感を存分に満喫できると思われる。
ところが、原書で読むとなると、これが案外手ごわくなるのである。

例えば次の文。

He (=Albu

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原書のすゝめ:#6 The Mysterious Affair at Styles

原書のすゝめ:#6 The Mysterious Affair at Styles

インターネットでも本屋でも、本を検索すると何人かの翻訳者によって訳されている本が見つかることがある。当然、どの邦訳にしようかと迷うところである。表紙のデザインか、出版社か、あるいは翻訳者か。

選んだ選択肢が翻訳者である場合、読みやすい文章か、それとも文体が自分の好みにあっているか、あるいはその翻訳者が好きだからか、とその理由は人によってさまざまであると思う。

私は名前を覚えるのが得意ではないか

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原書のすゝめ:#5 Ashenden

原書のすゝめ:#5 Ashenden

同じ本が手元に2冊ある。
何故こんなことになったのだろう。

事の始まりは、本を買うのにネットショッピングを頼るようになったことにある。現物主義の私は、日々の購買活動において基本的に現物確認を行う。しかし、物が洋書となると本屋で買いたくても目当ての本がなかったり、そもそも品数が少ないため偶然の出会いというのもあまり望めない。

ところが、インターネットだと販売環境が逆転する。圧倒的な数の出会いが用

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原書のすゝめ:#4 THIS IS NOT MY HAT

原書のすゝめ:#4 THIS IS NOT MY HAT

Jon Klassenの絵本を最初に発見したのは、京都のジュンク堂だった。

私は地元にいても旅先でも、必ず本屋を徘徊する。とくに何かを探しているというわけではなく、ただ回遊魚のようにふらふらと書店の中を泳いで回る。そうすると、突然面白いものが目に飛び込んでくることがある。この絵本もその一つだった。

絵本コーナーの棚でたまたま目に入り、その絵の可愛さに惹かれて思わず手にとってみた。1ページ開いた

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