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【本紹介】住野よる『告白撃』

――主人公は千鶴という30代の女性。婚約者がいて、やがて結婚式を挙げる予定があるんですが、結婚式を迎える前にどうしてもやっておきたいことがありました。それが、「親友に告白をさせること」です。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「住野よる『告白撃』を紹介する」というテーマで話していこうと思います。


🏨親友に告白させる物語

あなたは誰かに告白をしたことがありますか?

片思いの相手に「好きです」「付き合ってください」と伝えたことがあるでしょうか? 記憶のページをめくっていくと、誰しも1度はそういう経験があるのではないでしょうか?

かくいう僕も人並みに。あれは10年くらい前の……という話はさておき、もうひとつ質問したいと思います。

あなたは誰かに告白をさせたことがありますか?

何言っているのか分からないという声が届きそうですね。誰かに働きかけて、告白をさせる。そんな経験をしたことがあるでしょうか? きっと思い当たりのある人は少ないと思います。

今回、僕が紹介するのは、告白をさせたい人の物語なんです。



住野よるさんの最新作『告白撃』を紹介していきます。『君の膵臓を食べたい』や『か「」く「」し「」ご「」と』などの作品で知られる住野よるさんが先日出版した青春小説です。といっても、これまで学生がメインの物語を書かれておりましたが、今回は初めて30代の大人たちが登場します。大人たちの青春を描いているんです。

主人公は千鶴という30代の女性。婚約者がいて、やがて結婚式を挙げる予定があるんですが、結婚式を迎える前にどうしてもやっておきたいことがありました。

それが、「親友に告白をさせること」です。


🏨告白させて、失恋させる。

千鶴にはふたりの男友達がいました。果凛と響貴のふたり。大学時代から仲良くしているので、かれこれ10年以上の付き合いになります。大人になった今でも、たまにオンラインゲームで遊びながら、近況を語り合うような仲なのです。

で、男友達のうちのひとり、響貴は千鶴のことが好きなのではないか、と千鶴は思っているんです。私のことを絶対好きでしょ、と思っているんです。「好き」とか「付き合ってください」とか告白めいたことは一切ないけれど、何となく雰囲気で自分は好かれていると認識しているんです。別にこれは千鶴の思い上がりではなくて、果凛も響貴は千鶴のことが好きだと認識しています。

実は少し歪だった友情関係を結んでいるわけですが、それを受け、千鶴は思ったのです。響貴は自分のことが好きなのに、見ず知らずの人と結ばれる結婚式に親友として参列しないといけないなんで辛いに違いない、と。なかなかふてぶてしい性格をしていますよね(笑)

まあ、でも、実際そうじゃないですか。10年片思いしている相手が結婚するってなって、その結婚式に呼ばれて、花嫁姿を目の当たりにするのは酷にも程があります。辛い思いをしてほしくない、という親友としての立場から、千鶴は自分の結婚式に響貴を参列させたくないと考えたのです。

ただ、今の関係のままだと親友として呼ばなければいけない。10年の付き合いのある相手に声をかけないのは不自然ですから、どうにか関係性を変える必要があったんです。

そこで千鶴が思い付いたのが、「告白をさせる」ことでした。

響貴に告白をさせて、自分はこっぴどく振って、失恋させる。それを言い訳にして、結婚式に呼ばない状況をつくりにいく。そんな「告白大作戦」を企てたのです。


🏨最後の告白撃

果凛も事情を知って、破天荒な作戦に協力してくれることになりました。告白大作戦の実行が決まり、千鶴たちはあの手この手で響貴に働きかけます。

ふたりで呑みにいったり、部屋でふたりきりになったり……いい雰囲気にはなるんだけれども、響貴は全然なびかないんです。めちゃくちゃ紳士だから、はいはい、と宥めて終わるんです。

やがて、旅行に行くことになります。

千鶴、果凛、響貴を含む、大学時代の仲良し6人組で旅行することになったんです。非日常的な時間、空間ですから、上手く働きかければきっと告白大作戦も上手くいくと思い、いろいろ手を施します。

が、今回もことごとく失敗。全然前進しないんですが、この旅行であることが判明するんです。

千鶴、果凛、響貴ではない3人組がいますよね。その3人は、千鶴と響貴をくつけさせようとしていたんです。千鶴には婚約者がいるけれど、その人よりも、響貴との方がお似合いだし、付き合ったら絶対に上手くいく。婚約破棄にでもして、とにかく響貴とくっつけさせようという作戦を企てていたんです。

つまり、大学時代の仲良し6人組のなかに、失恋させたいがために告白をさせたい派閥と、付き合わせたいがために告白をさせたい派閥が存在しているというカオスな状況であることが判明したんです(笑)

さあ、ここからどうなるの? ……という物語です。ここまででだいたい3分の1くらいなので、この後、さらなる展開が待ち受けています。

物語終盤、千鶴による最後の告白撃が描かれるのですが、これがだいぶえぐいです(笑) 果たして、その一撃は成功するのか。響貴の心を撃ち抜くことができるのか。

是非、本書を手に取って、その答えを目撃してください。そして、この物語の結末に、あなたも撃ち抜かれてください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240706 横山黎



※『告白撃』の紹介の様子↓↓↓



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