君はマスクを取らないでいて
――君の絶対になりたかった。そんな未練を引き連れていた僕は先日、「またふたりで呑みにいこうね」という約束をサラと交わすことができたんです。お互いに取り換えのきかないふたりになっていたんです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。
今回は「君はマスクを取らないでいて」というテーマで話していこうと思います。
📚元カノと卒業写真
先日、僕は大学の卒業式を迎えました。
コロナのせいで入学式もコンパも文化祭もないところから始まった僕の大学生活は、たくさんの「面白い」を追いかけて、たくさんの「やりたい」を叶えてきて、たくさんの仲間に囲まれて、ついに結ぶことになったのです。
決して順風満帆ではなかったけれど、この4年間のすべての瞬間に意味があったんだと、卒業式当日に確かめることができました。それは、大学1年生のときにお付き合いしていた元カノと、最後に写真を撮ったときにも思ったことでした。
大学の空き教室で学位授与式が行われたんですが、それが終わったあと、みんなで写真を撮る時間がありました。袴やスーツを着こなした学生たちが卒業の思い出を写真に閉じこめていったのです。
僕もいろんな人と写真を撮ったのですが、少ししてから、「れいくん、撮ろう」と声をかけてくれた人がいました。それが、そう、元カノだったんです。
📚関係に名前をつけた日
僕のnoteの記事でもたまに紹介してきましたが、改めて、サラとの道を簡単に紹介しますね。
冒頭にも触れましたが、僕の大学生活はコロナ禍に始まりました。マスクの着用が重んじられ、入学式はなくなるし、授業は全部オンラインだし、本当に息苦しい時代が続いていました。
ただ、砂漠のような日々を過ごしていたわけではなくて、それなりに僕は大学生活を謳歌していました。それは、サラとの出逢いがひとつの大きな要因でした。
オンライン交流会で初めてしゃべって、画面越しにお互い気にかけるようになって、僕らは個別に連絡を取り合うようになりました。気が付けば、毎日のようにLINEしていたし、毎日のように電話をしていました。
僕が小説を書いていることを知ってサラは、僕の作品を読みたいと言ってくれて、その感想を共有するために電話することもありました。なかでも、まるであの頃の僕らのような名前のない関係の主人公たちを描いた『君はマスクを取らない』という作品についてよく語り合っていたんです。
ひとつの章を読み終えるごとに、その感想を語り合っていたんですが、最終章は直接語り合いたいねという話になり、駅近くのカフェで落ち合うことになったのです。入学してから4ヶ月近く経った頃、七月の下旬のことでした。
お互い何が好きか、どんな人柄なのか分かっているはずなのに、どこか緊張気味でした。もちろん5時間くらい語り合うくらいに盛り上がったけど、その夜にまた電話したときに、「なんか緊張してたよね」なんて言葉を掛け合っていました。
ただ、この頃からお互いに同じ色の気持ちを抱いていることは確かで、その2カ月後、僕たちはふたりの関係に名前をつけることにしたんです。
📚絶対になりたかった君と…
あの頃、僕らはRADWIMPSが好き同士で、「告白」という曲を揃って気に入っていました。
そんな歌詞になぞらえて、「僕は君の絶対になりたい」なんて言葉を贈った言葉もありました。恋人としての関係は早々に終わり、「あの歌のいうように、絶対なんてなかったな」と思うこともありましたが、次第に「別のつくり方ならば絶対を生めるんじゃないか」と考えるようになりました。
名前は違えど、ふたりの関係が終わらなければ、それはひとつの「絶対」と呼べる。そう思い至ったのです。
似たようなことはサラも考えていたようで、別れてからもふたりの関係が途切れることはありませんでした。別れてからの方が楽しかったし、よりいっそう仲良くなった気がします。無理に名前をつけたからこそ息苦しい関係になってしまっただけだったのです。だから、名前にこだわらず、水のような関係を結ぶことが良策なのです。
別れてから、お互いの家に行き来することもあったし、お互いの恋愛相談に乗り合ったし、サラの助手席に乗ることもあれば、サシで呑むこともありました。いつか『君はマスクを取らない』を再創作しようという約束も交わしたし、卒業式の日には一緒に写真を撮ってもらいました。
ふたりが好きだったRADWIMPSは最近、「なみしぐさ」という曲をリリースしました。そのサビにははこんな歌詞があります。
📚君はマスクを取らないでいて
昨日も、サラから連絡が決ました。そこには「今度ゆっくり飲みながらふたりで卒業式しよ!」というお誘いがあったんです。もう3月は終わるし、どうせすぐには会わないだろうか、どちらかといえば社会人の入学式といったほうが良さげだけれども楽しみにしておきます(笑)
君の絶対になりたかった。そんな未練を引き連れていた僕は先日、「またふたりで呑みにいこうね」という約束をサラと交わすことができたんです。お互いに取り換えのきかないふたりになっていたんです。
そんな未来を用意することができたことを、僕は誇りに思うし、やっぱり「水のような関係を結ぶこと」「大切なものを守りながら、変わり続けること」を重んじてきた自分の生きる姿勢に自信を持つことができました。その知見をくれたこともあり、サラには大きく感謝をしています。
きっと卒業すれば、頻繁に会う機会はなくなるだろうし、お互い忙しくてなかなかチューニングできないかもしれないけれど、会おうとする意志があれば、きっとまた再会できる。そう信じて、僕は僕の道を歩いていきます。だから、サラにもそう在ってほしい。そう、在り続けてほしい。そんな祈りを込めながら、最後に、君に、言葉の花を贈ります。
20240328 横山黎
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