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このマガジン(更新される教材本)を通して、歴史、技術、科学的な観点からの解説など、フランス料理に関…
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記事一覧

『根菜系は何℃で加熱』するのが正解なの?

『根菜系は何℃で加熱』するのが正解なの?

加熱温度の科学――根菜と低温調理の謎を解く

「根菜は何度で加熱するのが最善か?」

特に大根やジャガイモといった根菜は、60℃から80℃程度の低温ではペクチンが硬化するため、90℃以上での加熱が効果的とされています。

実は、90℃以下で根菜を加熱した場合、ペクチンとカルシウムの影響で硬化してしまい、それが戻らなくなることだってあります。

しかし、これに対しアスパラガスや蕪(かぶ)は低温でも柔

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「素材を変化させること」から「素材を引き立てること」が重視される”現代料理の新解釈”

「素材を変化させること」から「素材を引き立てること」が重視される”現代料理の新解釈”

最近、クラシックな料理を作る機会が増えてきました。まずは、以下の画像をご覧ください。

この料理を見ると「バロティーヌ」や「ガランティーヌ」といった名前が思い浮かぶかもしれません。さて、これはどちらに該当するのでしょうか。

私の見解では、これは「バロティーヌ」に分類される料理だと考えています。

バロティーヌはもともと中世フランスで親しまれていた料理で、鶏肉に詰め物をして供される古典的なスタイル

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現代飲食市場で勝ち抜く:料理の現場から見る、労働人口減少のリアル『現状と課題』

現代飲食市場で勝ち抜く:料理の現場から見る、労働人口減少のリアル『現状と課題』

料理の現場から見る、労働人口減少のリアル「このままでは店を維持できないかもしれない」

そんな不安を抱える料理人や飲食店経営者の相談が増えています。少子高齢化とともに労働人口が減少する中で、私たちの仕事環境はどう変わっていくのでしょうか?総務省のデータが示す労働人口の現状と、料理人の視点から見る課題を掘り下げ、今こそ考えるべき未来への道筋を探ります。この問題に直面する私たちの現状を、あなたはどう捉

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書き留めたレシピ集”と”AIレシピ”

書き留めたレシピ集”と”AIレシピ”

私は、忘れたレシピをAIに頼ってなんとなく再現してみることがある。そして、要望が的確であれば、そのレシピは案外いい線をついていて、ほぼそのまま使っても大して問題はないのだから驚きだ。

それでも未だにレシピ帳を大事に持ち歩いているのは、やはりそのレシピが洗練されているからなのか、それともAIには到底生み出せない特別な一品だからなのか。

あるいは、感情や思い出が詰まっているからかもしれないし、ただ

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『深刻な人手不足』働き手の定着率を上げる方法/業界特有の「通過儀礼」

『深刻な人手不足』働き手の定着率を上げる方法/業界特有の「通過儀礼」

人材不足が深刻な問題となっており、これは飲食店経営者にとって特に難しい課題です。慢性的な人手不足に加え、採用してもすぐに辞めてしまう、いわゆる“飛んでしまう”ケースが後を絶ちません。なぜこうした事態が頻発するのでしょうか?

私自身も、仕事へのモチベーションは続かず すぐに燃え尽きてしまいます。

働き手の定着率を上げるためにはたとえば、飲食店での仕事環境を考えると、適度な忙しさが重要だと言います

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【初心者でも分かる】論文の探し方・読み方の解説/科学的根拠に基づいた料理

【初心者でも分かる】論文の探し方・読み方の解説/科学的根拠に基づいた料理

初めに料理について深く掘り下げ、論文などを交えながら説明すると、よく研究者や専門家から小バカにされることがありました。

内容の正確さだけでなく、論文の検索方法や引用する論文の信頼性についても厳しく問われるためです。このような料理の議論において、研究の専門知識が乏しい料理人は、どうしても差がつきやすい傾向があります。

科学的な知見をもとに料理を考えることに対して、依然として批判的な視点を持つ"昔

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"料理の成功"とは何か

"料理の成功"とは何か

料理の成功とは何か。そして、料理はどのような価値を生み出すのか。

近年、様々なレストランからシェフやスーシェフとしてお声がけいただく機会が増えた。その中には、ミシュランで高く評価される有名レストランも含まれている。

料理の評価は、単に味だけで決まるわけではない。例えば、砂漠のような極限の環境で食べる料理がなぜか特別美味しく感じられることがある。それは、食事という行為が環境やシチュエーションに大

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TRIZ理論(発明的問題解決理論)/体系化されたイノベーションを生む方法

TRIZ理論(発明的問題解決理論)/体系化されたイノベーションを生む方法

TRIZ理論の結論は、イノベーションや問題解決は偶然ではなく、再現性のあるプロセスであるという点にあります。

TRIZは、発明家ゲンリッヒ・アルトシュラーによって提唱された理論で、技術的な問題解決とイノベーションを体系化するためのツールです。TRIZは、特許分析を通じて、すべての技術的問題には共通の解決パターンが存在することを発見し、これ(200万件の特許中)を基にして「40の発明原理パターン」

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EC販売(ネット食品販売)のやり方について|飲食店から小さく始めるロードマップ

EC販売(ネット食品販売)のやり方について|飲食店から小さく始めるロードマップ


近年、EC市場は急速に拡大しており、多くのビジネスがオンライン販売に移行しています。

それに伴って、私はEC販売を始めることとなりました。その背景には、徹底的な市場調査を行い、競争が少なく、かつ市場規模が大きい「空間」を見つけたことが理由です。

これは、まさにマーケットにおける隙間を見つけ、実験的にそのチャンスを活かす動きです。

これまで、筆者は完全予約制のフランス料理店を運営していました

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科学的に分析されたフードペアリング野菜、フルーツ関係一覧

科学的に分析されたフードペアリング野菜、フルーツ関係一覧

本記事は、『The Flavor Matrix: The Art and Science of Pairing Common Ingredients to Create Extraordinary Dishes』(著:James Briscione、Brooke Parkhurst)の内容を基に、翻訳および解説を加えたものです。本書の情報を参考にしつつ、独自の見解や補足を加えております。オリジナル

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冷蔵庫から出してすぐに「肉を30分以内」に仕上げるキュイソン

冷蔵庫から出してすぐに「肉を30分以内」に仕上げるキュイソン


適切なキュイソンに仕上げる私はこれまで、特に苦手意識を持たれている食材を取り扱う際に、その魅力を最大限に引き出すことに注力してきました。適切な下処理を施し、火入れ(キュイソン)を徹底することで、食材本来の味を活かしつつ、食べた方に「これまでの印象が変わった」と感じてもらえるような仕上がりを実現しています。結果として苦手食材から数十人を克服させてきた実績があります。

この技術は、肉料理にも当ては

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外食×市場経済:飲食トレンド『未来の飲食店』#9月号

外食×市場経済:飲食トレンド『未来の飲食店』#9月号

金融市場と外食産業の関係

日経平均株価は、国内外の経済要因や金融政策に敏感に反応しており、これが消費者の購買意欲に波及し、外食業界の業績にも反映されています。

例えば、2023年には長期的な低金利政策が維持されており、企業が設備投資や店舗拡大を行いやすい状況が続きました。しかし、2024年に入り、金利上昇への懸念が浮上しており、これが消費者の消費活動や企業の投資行動に影響を及ぼしつつあります。

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「火とガス」を使わない火入れ-熊谷成弥:タンパク質を操る60℃の遠赤外線加熱

「火とガス」を使わない火入れ-熊谷成弥:タンパク質を操る60℃の遠赤外線加熱

「実は、火もガスも使えないんです...」
セパージュは名古屋市にある高級フレンチレストランで、JRセントラルタワーズの51階に位置しています。

高層ビルの厳しい安全規制の中で、火やガスを使うことができないため、料理法に一線を画す必要があると言います。

IHやプランチャといった代替の調理機器を活用しながら、火入れには、特に「赤外線温蔵庫」を駆使しています。この機器を使うことで、料理の保温だけでな

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【鴨胸肉/鹿肉の火入れ】完全攻略『温度・時間・安全性・再現性』やり方

【鴨胸肉/鹿肉の火入れ】完全攻略『温度・時間・安全性・再現性』やり方

火入れの本題解説をする前に…

『鴨胸肉/鹿肉』のレアの安全性は?牛肉はレアやミディアムでも安全だと言われていますが、鴨胸肉/鹿肉はそもそもレアで大丈夫なのか?

皆様も、ふと疑問に感じたことがあるかもしれません。

実際、どんな根拠に基づいて提供されているのか…

✅厚生労働省のガイドラインの不自然な温度
✅低温調理「D値」の安全性の真実
✅そもそも使われている肉自体の安全性

まず気になる方は

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