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夫の話

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夫の話
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小さいシルバニアと役に立つ機関車

小さいシルバニアと役に立つ機関車

末っ子のお誕生日だった。
末っ子は3月生まれだから、小さいころからお友達のお誕生日を見送る1年を送っている。
学年が上がるたび、みんながお姉さんお兄さんになるのを見続けているせいか、きょうだいの誰よりも「おたんじょうび」を楽しみにしている。

何日も前から「あと〇日でお誕生日だ~」と恍惚とした表情で呟いていて、前日には「明日の朝起きたら一番最初は、お誕生日おめでとう、って言ってね」と私と夫に伝えて

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走る春。土曜日の日記。

走る春。土曜日の日記。

「3月さえ乗り越えればなんとかなる」と踏ん張って、気がついたら「4月さえ乗り越えれば」と思う春を生きている。
4月はまだ上旬のはずなのにカレンダーを見ればきちんと折り返しているのだからほんとうにあらゆることが信用ならない。
目まぐるしく日々が捲られていくので、ああ、日記を書きたい書いておかないとすべて忘れてしまう、と思いながらも日々はバリバリと勢いよく消化されている。日記を書いている場合ではないの

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抜け殻な私と仏な夫

抜け殻な私と仏な夫

この週末なんだか体調がすぐれなくて、心身がしなびていた。
お腹は壊すし、頭は痛いし、眠たいし、寒いし、私はエネルギーが根こそぎ抜かれたただの容れ物ですよ、という気持ちだった。

土曜日、夫はいつも通り仕事へ行って、私は長女の習い事の送迎をしたり、ガソリンを給油したりした。
図書館から予約していた絵本が届いたと連絡があり、そのくらいやってやるわよ、えんやこら、とカウンターへ受け取りに行ったら私のカー

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うっかりすると、ぺっしゃんこ

うっかりすると、ぺっしゃんこ

今日は、走って走って走ったんだけど、けっきょくうまくやれなかった。

今週は取材や、幼稚園の半日保育、お誕生日会(保護者参加)、などがあって、そもそもの稼働時間がうまく確保できなかった。
そんな週の金曜日だもの、朝からずっと気持ちは小走り。
子どもたちをいつもより少し早く、園に預けたら、開店と同時にスーパーへ。顔なじみの店員さんが「今日は早いね」と声をかけてくれる。
ざっと必要なものを引っ掴むよう

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荒れた週末から、昨日までの話。

荒れた週末から、昨日までの話。

この週末、なにがあったんだろう。

なんだか、心がささくれ立っていた人が多かった気がする。
Twitterを見ていても、noteを見ていても、この週末に鬱屈していた人が多かった。
SNSに浸かっているとそういうことって度々ある。
なぜか誰も彼もくじけそうになっていたり、なぜか誰も彼も、喧嘩していたり。
そんな時は、そういう星回りなんだね、と適当に落としどころをつけて小さな安心を手に入れるまでがセッ

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家に、溺れるナイフの大友がいる

家に、溺れるナイフの大友がいる

溺れるナイフをご存じだろうか。
ジョージ朝倉による、最高破壊力大傑作青春少女漫画だ。
とにかく四の五の言わずに読んでほしい。前半では十代特有のひりつきに胸がじりじりと焦げてしまうし、中盤から後半にかけては闇と光が暴力的に絡み合って叫びだしたくなる。
作品自体のエネルギーがすごい。なにを食べたらこんな曼荼羅みたいな漫画が描けるんだろう。

話は東京から転校してきた主人公の夏芽と、資産家の息子コウちゃ

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ちょっと不調なこの頃。秋だしね。

ちょっと不調なこの頃。秋だしね。

ここのところずっとイライラしている。
小さなことから大きなことまでイライラが止まらない。

夫がこの4月から部署移動になって、帰宅時間が遅くなった。よって精神的にも体力的にも余裕がない様子。
「ただいま」の声が疲れ果てているし、休日も隙あらば眠ってばかりいる。
子どもたちのけんかの声とか、私の些細な家事のダメ出しも、普段なら笑って「はいはい」と済ませるのに、4月以降、特に夏を過ぎたあたりから、明ら

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やさしい夫の休日

やさしい夫の休日

毎週水曜日が夫のお休みなのだけど、ほぼ毎回、こういう感じになるのでちょっと聞いてほしい。

① 寝坊する(私が)
夫は普段、子どもたちが起きるころにはとうに仕事に行ってしまっているので、火曜日の夜、子どもたちは「明日はあさからパパがいる」ことにテンションが上がっている。
つまり、水曜日の朝、子どもたちは普段より早起きをしてしまうし、いつもなら先に起きたら「ママ起きて!」って激し目に起こされるのだけ

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おかえり結婚指輪

おかえり結婚指輪

先週だったか、実は夫と喧嘩していた。
またか、とか言わないで。
三人育てていると三人分喧嘩の火種があるようなものだから大目に見てくれたら嬉しい。
我が家の喧嘩は基本的に私がひとりでカリカリ怒っているところへ夫がムスッとするか、知らないそぶりを貫くかなのであまり派手さはないのだけど、それでも私は頭が煮えてくらくらするほど腹を立てているのだから喧嘩と言っていいと思う。
少し前から仕事が忙しかった夫が、

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温泉でぶちギレた話

温泉でぶちギレた話

母と、姉家族と私たち一家で温泉に来ている。
一泊目の夜、みんなで楽しく食事をとって温泉につかったあと、姉が、宿泊しない彼女の夫を自宅へ送り届けると言った。
自宅まで車で片道20分ほどだろうか。
往復40分。
まあ、近場である。
姉の一歳の子供が母と宿で留守番することになり、母が一人で相手をするよりは、と私たち一家の部屋へやって来た。
ようこそようこそ。
子どもたちも大喜びで、持参した子ども雑誌を一

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いろんな痛い。お産とか。

いろんな痛い。お産とか。

痛みに強いらしい。

二十歳くらいの時に大きなやけどをしたことがあって、それはもう痛かった。
やけどを負った左あし(足首から下)全部が燃えるように熱くて、声を出すこともできないほどだった。

その三年後くらいだったかに、婦人科系の手術を経験した。
これもまた、ものすごく痛かった。
術後の痛みが想像の百倍くらい痛かった。
麻酔もするし、簡単な手術らしいからと、とても気楽に考えていたのがよくなかった

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かすがいを見た今夜

かすがいを見た今夜

夫と喧嘩した。
とても些細なことなのだけど、軽い気持ちで相談したことに対する夫の返答があまりにも心なく響いたのだ。近頃の体調不良に加えていつもの家事に育児に少し疲れていたのだと思う。受け皿の方のコンディションも良くなかったのかもしれない。
むっとするくらいで済めばよかったのだけど、もやもやはイライラに変わりイライラは涙になった。
目に涙をためて夫を突き放した。

こんちきしょう、ぜったいに熟年離婚

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褒めて褒めて褒めまくって

褒めて褒めて褒めまくって

自己肯定感がぐずぐずに崩れてどうしようもなくなることがしょっちゅうある。

そもそもそんなに自己肯定感も高くないし、根性も根気もない性分だから簡単に挫ける。
いつも挫折と隣り合わせで生きている。
というか、挫折風呂のなかから顔だけ出して、めそめそして、時々甘やかされて洗い場くらいまで出て、ちょっと頑張ってまた風呂に浸かるみたいなそんな感じ。

そんなだらしない性分でどうやって生きているのかと言

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ルミ子と祭り

ルミ子と祭り

夫がルミ子に厳しい。
小柳ルミ子だ。

夫は熱狂的なサッカーファンなのだけど、往々にしてスポーツの熱狂的なファンはにわかファンに厳しいのだよね。
はいはい、いつものあれか、と思って聞いていたら、ルミ子はにわかファンとはまた違うらしい。

「もう何年もメッシが大好きルミ子」がこの度の標的だった。

夫が言うに
「小柳ルミ子はメッシしか好きじゃない。アルゼンチンのファンでもなければサッカーファンでもな

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