マガジンのカバー画像

映画レビュー【映画の中の人生】

402
悩み事だらけの私は、映画で描かれる人々の生き方を観て、励まされ、救われ、生きる術を学んできました。そして、わずか2時間前後のストーリーに凝縮されたキャラクターたちの人生から、本当…
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

英国王のスピーチ(2010)

英国王のスピーチ(2010)

他人の厳しい目ではなく、自分の心を信じて!
コンプレックスに苦しむ英国王の勇気と温かい愛

生きていく上で最も大切なのは、困難な道を共に歩んでくれる信頼できる人々との出会いだと、この映画を観て、しみじみと思いました。

吃音症を克服し、英国民の絶大な信頼を得た前英国王ジョージ6世と、彼を支えた人々との心温まる交流が描かれます。

王の命令に背けないジョージは仕方なく人前でスピーチをし、失敗して、さ

もっとみる
ターミナル(2004)

ターミナル(2004)

空港を舞台に「待つこと」の意味を問いかける
味わい深い都会のファンタジー

人にはだれしも向かう場所があり、帰る場所があるものです。空港は目的地への通過地点にしかすぎないけれど、それぞれの目的地へ向けた人々の思いが最も充満している場所ではないでしょうか。

飛行機を待つ間、目的地での出来事に思いを馳せるうち、ふと考えたことはありませんか。「自分の人生はどこに向かっているのか」と。

日々の暮らしに

もっとみる
グリーンマイル(1999)

グリーンマイル(1999)

映像化して初めて伝わる物語の素晴らしさ
奇跡を信じる心をよみがえらせてくれる

本作を観て、人間の持つ残酷さに驚き、あきれ、おののき、胸が締めつけられました。と同時に、神が生み出す奇跡を信じる心を大切にしたいと痛切に感じました。

『グリーンマイル』は、1996年に分冊形式で出版されたスティーブン・キングの全6巻に及ぶ長編小説。優れたストーリー・テラーをもってしても、膨大なセンテンスを要した原作は

もっとみる
アパートの鍵貸します(1960)

アパートの鍵貸します(1960)

上司に振り回されるサラリーマンの悲哀に思わず涙
笑って泣ける極上のロマンティックコメディ

上司に「No」と言えないサラリーマンの悲哀をベースに、極上のラブストーリーに仕上げたビリー・ワイルダー監督の傑作コメディです。

出世欲に駆られて、上司にこびる主人公バドにも非はあるのですが、あまりに横暴なパワハラ上司に振り回されるバドの健気な姿に涙が止まりませんでした。

第2次世界大戦が終わった1950

もっとみる
キル・ビル vol.2(2004)

キル・ビル vol.2(2004)

痺れるような緊張感がたまらない!
才気溢れるタランティーノが描く復讐劇の完結編

バイオレンスアクションフィルム『キル・ビルvol.1』を観た人は作品に対する賛否はともかく、クエンティン・タランティーノ監督の独創性に圧倒されたに違いありません。

愛する者を5人の殺し屋に奪われたヒロイン、ザ・ブライドの復讐劇は新たなステージに進みます。

【ストーリー】
東京での復讐を終えたザ・ブライドは、残る標

もっとみる
キル・ビル vol.1(2003)

キル・ビル vol.1(2003)

タランティーノの映画愛と日本愛に溢れる
最高にはちゃめちゃでクールなアクション映画の前編

クエンティン・タランティーノ監督の映画が好きです。奇想天外なストーリー展開と生々しいバイオレンス・アクション。荒唐無稽で不快なのに、その唯一無二の物語世界に引きつけられてしまいます。

目を覆いたくなるシーンも多くて、『レボザア・ドッグス』の耳切りシーンなんて、いまだに見られません。

でも、鬼才タランティ

もっとみる
カーズ(2006)

カーズ(2006)

ピクサーアニメの人気シリーズ第1弾
愛嬌たっぷりの車たちの素朴な生き方が胸に染みる

2006年に公開されたピクサーアニメ第7作『カーズ』では、車たちの世界が描かれました。

公開時、前作『Mr.インクレディブル』でCGアニメにおける最難関、人間の造形に挑んだことで、ピクサーをさらに発展させる次の挑戦課題が注目されるなか、私は〈なぜ車?〉との思いがありました。

でも、そんな疑念はここに登場する車

もっとみる
クリスマス・キャロル(2009)

クリスマス・キャロル(2009)

善良に生きることの大切さを伝えるクリスマスの出来事
革新的な3D映像と感動的な物語が見事に融合

ディズニーが文豪チャールズ・ディケンズの不朽の名作『クリスマス・キャロル』を3DCGで映画化した本作は、人を愛し、善良に生きる大切さを伝えた原作の素晴らしさ、映像を立体的に見せる3D映画の楽しさを改めて示した秀作です。

ジム・キャリーが嫌われ者の主人公スクルージの声と3Dアニメーションで描かれるキャ

もっとみる
ポーラー・エクスプレス(2004)

ポーラー・エクスプレス(2004)

幻想的なクリスマスの光景は必見の価値あり
トム・ハンクスが製作・“主演”を務めたフルCGアニメ映画

サンタクロースなんて嘘っぱち、CG人間なんて紛いもの。そんな頭の固いことを言わず、信じてみよう! クリスマスの持つ魔法の力を見事に映像化した珠玉のファンタジーです。

原作はC・V・オールズバーグの絵本『急行「北極号」』。原作の大ファンというトム・ハンクスが映画化権を獲得し、『フォレスト・ガンプ』

もっとみる
男はつらいよ 50 お帰り寅さん(2019)

男はつらいよ 50 お帰り寅さん(2019)

令和の時代に帰ってきた“寅さん”
世代を超えて観てほしい名作喜劇

テキ屋をしながら日本中を旅する、“フーテンの寅さん”こと、車寅次郎の恋と家族との触れ合いを笑いたっぷりに描いた人情喜劇『男はつらいよ』。1969(昭和44)年~1997(平成9)年まで、実に49作製作された国民的人気映画シリーズが50周年を迎えた2019年に、なんと50作目を発表しました。

22年ぶりの新作は、寅次郎の甥・満男(

もっとみる
パンダフルライフ(2008)

パンダフルライフ(2008)

ワ(パ)ンダフルに生きるには?
パンダが教えてくれる心地よい生き方

2017年、上野動物園でパンダの赤ちゃん、シャンシャンが生まれて以来、パンダブームがヒートアップしています。

2018年には和歌山県のアドベンチャーワールドで彩浜(さいひん)が生まれ、驚異的な自然繁殖率を誇る同園のパンダファミリーがクローズアップされました。そして、2020年11月にも人間の年齢にして80歳を超える、お父さんパ

もっとみる
アクロス・ザ・ユニバース(2007)

アクロス・ザ・ユニバース(2007)

素晴らしいビートルズの名曲が鮮やかに浮かび上がる
1960年代のアメリカを舞台にした悩める若者たちの群像劇

時代や世代を超えて、今なお多くの人々の心を捉え続けるビートルズ。

2007年に製作された本作は、『フリーダ』のジュリー・テイモア監督がビートルズの名曲の数々を使った大胆な試みのミュージカル映画です。

描かれるのは、1960年代という混沌とした時代を生きる若者の群像劇。若者たちがそれぞれ

もっとみる
私の中のあなた(2009)

私の中のあなた(2009)

病気の姉、ドナーの妹、訴えられた母
複雑な関係の家族が育む温かい絆

家族って何だろう。家族を守りたいという気持ちは理屈では割り切れないものでしょう。しかし、家族だからこそ、という思いは時には大きな負担を強いることにもなります。
白血病に冒された長女の命を救うために、懸命に努力する家族の間に生まれた皮肉な溝が、家族の絆について考えさせます。

アナが腎臓を提供しなければ、ケイトの生きる望みは絶たれ

もっとみる
タイタニック(1997)

タイタニック(1997)

ジェームズ・キャメロン監督が丁寧に描いた
タイタニック号とともに沈んだ人々のドラマ

『ターミネーター』のアクション監督ジェームズ・キャメロンが史上最悪の沈没事故タイタニック号の悲劇を映画化した『タイタニック』は、1997年に公開され、世界的な大ヒットを記録、アカデミー賞最多の16部門でオスカーを獲得しました。

そして、主演のレオナルド・ディカプリオが大ブレイクを果たし、セリーヌ・ディオンの歌う

もっとみる