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記事一覧

※北海道はイメージです① Ver0.8+

※北海道はイメージです① Ver0.8+

はじめに

「北海道」という文字列は、単なる行政区画の単位を超えた意味を多くの日本人に与えている。北海道ミルクや北海道メロンと「北海道」の3文字が入っていれば、ちょっとした特別感を感じる人もいるだろう。むしろ道民であれば、牧場の名前がなかったり、夕張メロンのようなブランド名でない漠然とした「北海道」というネーミングを単純に喜ばないかもしれない。このような雑な言い回しは、内地の少ない降雪で止まる交通

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10年目に向けて。(Re:)を携えて。

10年目に向けて。(Re:)を携えて。

fromH、来年で10周年になります。どうも、神山です。

fromHは批評誌invertを発刊する批評・評論ユニットである。

結成秘話

大学生になった年のGW直前、ハラケーこと編集長・伊丹空互から、一通のメールがあった。…と、事実を確認すべく当時のメールを探したが出てこない。メールを受けた時の(現実なのか、後付けなのかわからない)記憶はある。その日のおそらく昼休み、大学生協前あたりで伊丹から

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(Re:)もう助けてなんていわないよ、フランチェスカ。

(Re:)もう助けてなんていわないよ、フランチェスカ。

2021年3月29日にゲンロンカフェにて行われた『さやわか×武富健治×春木晶子 北海道を衝け―番外地はいつミルクランドになったのか』というトークイベントにて「北海道は外部からどのようなイメージを持たれているのかを内面化し、自己イメージの操作に特化している土地だ」という話があった。「北海道らしさ」を他都府県からのイメージを参照し、再生産する気風があるということだ。

2021年のGWに、白老や登別と

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(Re:)誰のための探偵小説―『天帝のはしたなき果実』とその生る樹について

(Re:)誰のための探偵小説―『天帝のはしたなき果実』とその生る樹について

X.載らなかった前口上、あるいは、祈り

2014年6月28日、東京、吉祥寺シアター。
ぼくはそこにいた。「いま、ここ」にしかない煌めき、その為に。

舞台・天帝のはしたなき果実。
 ―ヒトとヒトが分かりあうために。
   青春に咲く衒学のSF舞台劇、
    その緞帳は上げられる―。
原作:古野まほろ、脚本・演出:松澤くれは

第35回メフィスト賞受賞作、『天帝のはしたなき果実』が舞台化されると

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(Re:)死にゆく世界に生きるということ

(Re:)死にゆく世界に生きるということ

・はじめに

作家・思想家である東浩紀は「震災でぼくたちはばらばらになってしまった」と、自らが編集をした雑誌「思想地図β vol.2―震災以後」の巻頭言で言葉にした。「ばらばらになる」が示しているのは「意味を失い、物語を失い、確率的な存在になってしまった」ということである。これは東日本大震災があった故に「ばらばらになった」ことを指しているのではない。日本の半分以上に被害が及ぶ巨大な災禍によって、人

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(Re:)夢見るこどもと赤い月―夢水からマチトムへ、はやみねかおるの世界

(Re:)夢見るこどもと赤い月―夢水からマチトムへ、はやみねかおるの世界

・はじめに

柄谷行人は『日本近代文学の起源』の中で次のように指摘している。

人々が―児童心理学や児童文学が―理想とし提示する「真の子ども」は存在しない。かつて子供だった人間が、そのことを忘れて、「こうあればよかった・こうあるべきだった」と、子供に願うのである。

そういった議論を前提に置きながら、1989年に講談社児童文学賞に入選し、1990年に「怪盗道化師(ピエロ)」でデビューした作家、はや

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(Re:)三十一文字の返信―『#恋人を喪った安田短歌』の狂気と優しさ

(Re:)三十一文字の返信―『#恋人を喪った安田短歌』の狂気と優しさ

1.恋人を喪った安田短歌とは何か

『恋人を喪った安田短歌』(以下、安田短歌)とは、映画『シン・ゴジラ』[i]に登場する安田龍彦文部科学省研究振興局基礎研究振興課課長(以下、安田)の恋人が作中時系列の2016年11月7日午後18時30分[ii]に巨大不明生物・通称ゴジラが口から放出した放射線流に巻き込まれて死亡したこと(太字・架空設定)に立脚し、作中時系列・世界線の前後内外を問わずに、安田や恋人、

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