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【現代詩】つべこべ言わずに
愛だの恋だのそんなことではなくて
ありのままを抱きしめて
口を開いて舌を出して調整する体温は
露出狂と同じ感性を言い訳と嘘で乗り越える
独りでなければぬいぐるみにだって告白する
埋めたい空洞は何処にあるのか
指針はからだが決める
特化した機能はいつでも供給過多のワンコイン
四の五の言わずに命を差し出す
【散文詩】転嫁した碧に
君の嫌いな街に
僕はまだ暮らしています
小さな暮らしに
少し満足していた僕と
夢に進む君は離れ離れの景色をみていた
理由はいらない
悔し笑いと嬉し泣き
理屈ばかり叫んで
笑いを堪えて
唇に刺さる犬歯
抜かずに裂いた釣針のように
嫌いになった街にも雪が舞い
無駄のない季節が巡り
逡巡しない季節に苛立つ
機嫌の悪さだけで生存圏を左右する
【散文詩】駆け抜けて一文無し
小僧はわかったつもりで羞恥の沼に
できないことを
やらないことに変換しても
恥じる気配微塵もなくて
自分自身に嘘つきすぎて
やりたいこともゴミ箱に
自由に生きるはずが
かげぐちだけで満腹の感情
答えを探す無為な日々
自分が歩いていかなければ
好きな人にも巡り合わない
【口語自由詩】即刻撤退
引くに引けぬ
退っ引きない泣き虫に
約束しよう
出ていけと
即刻撤退
怖くて良心を捨てたのか
裏切りの嘲笑に
匍匐後退
クラウゼヴィッツがいったらし
政治の延長って
ならば交渉の余地ありか
それともシュミット支持かい
【散文詩】しゃぼんねこ
瞬間に逸らす炭酸の味
怪訝な瞳が追いすがる
真顔からの破顔一笑
お互いに居場所ができた
近代は個々が重畳して
弾き返される
夕涼みする軒先のねこが
シャボン玉のように高く消えた
【口語自由詩】好きという同情は
憐れみと同情の親切心に切り裂かれた
背を向けて知らんぷりは傲慢な倨傲に似て
恩讐に裏打ちされた醜悪の連鎖で
透明で逆立ちでくねくねした自意識は
思いやりの宛先は自分自身の再帰代名詞
多様性なんて衒いもなしにいえるきみが愛いしているのはいったい誰でしょうか
聞こえないように走りだしたぼくの耳朶に
きみの叫びが鉄橋の轟音に融けた