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#眠れない夜に

詩 ポスター

詩 ポスター

君の声は
君が好きだった
画家の名前で
再生された
いつもいつも

アクセントや
声の明るさ
そこにはあったのは
君だけのことば

思い出す回数が
減っていたことに
気が付く
強い風の中

耳を澄まし
思い出にひたる
地下鉄のポスター

詩 欲しいもの

詩 欲しいもの

欲しいもの
すぐに思いつかないのは
いつのまにか
たくさんの夢
叶えてきたから

部屋を見回すと
あれもこれも
いつかのわたしの
夢だった

大きな机も
ちょっとレトロな水筒も
色とりどりの美術展のチケットも
わたしだけのための玄関ドアも

欲しいもの
すぐに思いつかないのは
もう満たされている証拠だ

それでも
何が欲しいと
訊いてくれる人たちと
わたしはまだまだ
時間と言葉のやりとり
楽しみた

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詩 星を頼りに

詩 星を頼りに

見上げると
口がぽわっと開いた

どこにいても
日々を生きよう
そこにしかない星を頼りに

どこにいても
日々を生きよう
そこにしかない道で迷いながら

どこにいても
日々を生きよう
そこにしかない乗り物に揺られながら

星が見えないところでも
なにかがきっと満たされていて
頼りになるものはある
何もない場所はない

きっと大丈夫
星を見つけた心
大切にしていれば

どこにいても
日々を生きよう

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詩 道すがら

詩 道すがら

ときどき振り返ると
そこにあるのは
ひとつの道

その道を歩いてきたから
わたしという人間は
ここにある

歩いてきた道が
わたしを作っている

ひとつでも違えば
それはもうわたしではないような
そんな気にもなる今

全てを肯定できるほどの
強さはないし
そうありたいとも
思わないけれど

今日までのわたしが
わたしをわたしたらしめる

悔しいこと悲しいこと
優しく包み込んで
大切な景色

振り返

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詩 ひとつだけでも

詩 ひとつだけでも

心が震える一曲に出会えたら
それだけで幸せだし

心が震える一冊に出会えたら
それだけで幸せだし

心が震える一日に出会えたら
それだけで幸せだし

一生で何が出来るかは
分からないけど

こんな広い世界で
こんな長い歴史で
出会ったものに
誇らしい気持ちを

きっと遠くから見れば
流れ星ほどの
一瞬を生きている

一つでいい
一つだけでいい
私たちの幸せは

長さや密度では
はかれないほどの

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詩 おそろい

詩 おそろい

お母さんと私
笑顔がおそろい

お姉ちゃんと私
声がおそろい

友人と私
ポーチがおそろい

おそろいたくさん

でも一番おそろいなのは
子どものわたしと今の私

こんなにおそろい
きちんと自分を愛せているだろうか

子どもの頃の記憶から
抜け出せないまま
苦しい夜に
小さく丸まって
人生単位で
わたしを攻撃している

子どものわたし
私の中に必ずいる
きちんと抱きしめてあげよう
うまくはいかなく

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詩 わたしまだまだことばをしらない

詩 わたしまだまだことばをしらない

わたしはまだまだ
ことばをしらない
ことばのせんたくしを
しらない

だからきょうも
とびらをたたく

わたしのしらない
どあのむこう
だれかのことばが
ひらかれている
そんなせかいに
みをおいてみる

ことばをえらぶこと
あきらめたくない
だれかにひどいこと
いわれても

ぶりょくをそっと
ほうきするほどの
しなやかなことばを
つむぎたい
そうして
あなたとこころを
つむぎたい

詩 美しい大人

美しいと思える世界
つくっていこう

寄せては返す波のように
行ったり来たりを繰り返す
憂鬱とうきうき

回避せずには生きていけぬ
嫌な感情
揺るがぬよう強くなろう
努力してみるが

心は支配される
いとも簡単に真っ黒に
うきうきの
明るい色彩をもってしても
かき消すことは
難しく

また今日も同じこと
思っている

それならば
器用でないわたしは
わたしなりの美しいと思える世界
つくっていく

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詩 溶けたマンゴー

詩 溶けたマンゴー

解凍して食べよう
真夜中るんるん
藍色の小皿に出した
マンゴー3つ

気がつけば朝

すっかり解凍された
マンゴー3つ
口に入れて駆け足で向かう
職場の人とのランチ
髪の毛巻きたかったのにな

きっと疲れていたのだ

何かが食べたいと思って
ちょうどいい気がした夜
でも朝の方が
しっくりくるような

鮮やかなオレンジ色が
私の目を覚ました
おはよう

考えても分からぬこと
朝まで放置してみるのも

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詩 常夜灯

詩 常夜灯

何も見えない分だけ
わたしが色濃く映し出され
心もとない時間が流れる
夜というもの
飽き飽きしてるのに
飽きずに同じ思考に戻ってくる
丁寧な人間
不思議な生き物

当たり前のことと
受け入れるほどの余裕は無く
ため息がまた出るけれど

不安を膨らませた分だけ
わたしは寂しさを覚えて
きっといつか優しくなれる

人生の問いを循環させた分だけ
わたしはわたしを知ろうと足掻き
答えを求めに言葉を探す

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詩 夜空の散歩

詩 夜空の散歩

ちょっとだけ
夜空を散歩しよう

眠れない夜
抜け出して
涼しい空気
浴びに行こう

輝く星を
歩いて結び
私だけの
星座を作ろう

不安なものは
目に見えない
夜空は全てを
隠してる

歩いている
それだけは確か
他は何も見えない
でも大丈夫
夜空は全てを
隠してる

星座が出来上がる頃
おうちに帰ろう

夜空を散歩して
作った星座は
朝には消える

大丈夫
不安なものは
目に見えない

詩 ひらりの夜

詩 ひらりの夜

壁に貼ったメモが
ひらりと落ちる

約束からの
時間の経過
教えてくれる

もう捨てようかな
もう一度貼ろうかな

貼り直せば
またつくのだけれど
メモの内容は
変わらないわけで

変われるものと変わらないもの
考えると渦の中
私にとって
ただのメモ
じゃなかったと
ふと気付く

行ったり来たり
遠回りしている日々の中で
突然に
メヲサマセと
まどろむ私に
落ちる声

積もった時間が
私の心にずし

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