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トウキョウ百景

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東京生まれ東京育ちの30代。 太と環は、それぞれの東京で生まれ育ち、二十歳の時に東京で出会いました。 2人が見てきた東京の景色、東京での物語を、紹介していきます。 ぼくらが育…
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2024年2月の記事一覧

目白で気が引き締まっているのは私です

目白で気が引き締まっているのは私です

「次は目白。目白です」
山手線のアナウンスが告げる。まだ一駅しか乗っていないのにな、と惜しく思う。そして胸が高鳴り始める。
浅くなり始めた呼吸のままエスカレーターを登り切り、改札を出て右へ進む。そして20歩くらい歩けばすぐに門が見える。学習院大学だ。

私は大学1年〜3年くらいにかけて、よく学習院大に行っていた。それはバレーボールの練習をするためだ。私が通っていた大学と学習院大は提携のようなことを

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豊島園近くの生活には映画館と美味い焼き鳥屋があった

豊島園近くの生活には映画館と美味い焼き鳥屋があった

住んでいる家の近くに映画館があることは、確実に暮らしを豊かにする。
そのことに気づいたのは、自分が一人暮らしをはじめて、車や電車で数十分かけて移動しないと映画を見ることができない環境に置かれてからのことだった。
育った実家は自転車ですぐの場所に映画館があったので、夕飯を食べてから映画を観に行って、帰ってきたら風呂に入ってすぐ布団に入るみたいなことができた。

それから何度か引っ越しをしたのちに、一

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浅草の喫茶店で会いましょう

浅草の喫茶店で会いましょう

大阪から友達が遊びにきた。宗(たかし)は私が大阪にいる時に知り合い、いつもお笑いだの人間関係だのの話しで笑い、最後はだいたい「かつみさゆり」の話をして帰るという、変わった友達だ。波長がとにかく合うので、私が大阪に行く時、宗が東京にくるときは大抵遊ぶ。

宗が遊びにきた時、東京らしいところと考えて、東東京を選んだ。下町であるそのあたりであれば、東京っぽさが満載で楽しめると思ったからだ。私は東京出身だ

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荻窪の本屋や食堂と同じように、僕の日常も着実に前に進んでいる

荻窪の本屋や食堂と同じように、僕の日常も着実に前に進んでいる

ちょうど3年前、当時住んでいた家から一時間近くかけて、奥さんと一緒に自転車で荻窪まで行った。

目的地は、前から気になっていた本屋Title。
足を踏み入れて、じっくり本棚を見回して、いくつか本を買って、すこし店主の辻山さんとお話して、「ひょっとすると、ここが一番好きな本屋かもしれない」と思った。
今じゃ独立系の個人書店に行く機会は増えたけれど、チェーンの新刊店やブックオフばっかり行っていた身から

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