尾米タケル

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尾米タケル之一座 作・演出。コントやら。舞台やら。 尾米タケル之一座HP https://okometakeru.jp/ 脚本・演出などお仕事のご相談はこちらまで→okometakeru@yahoo.co.jp

記事一覧

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』 終「ミヤタさん」

終幕 雨の音。 照明徐々につく。 ビルの屋上。 傘をさし立っているミヤタ。 下手奥よりカッパ姿の男(ムラカミ)。 ミヤタ ……。(男の気配に気付く) ムラカ…

尾米タケル
3か月前
3

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑬ テロ

テロ 農務局特別対策室、オオハラの部屋。 ミヤタ・オオハラ向かい合って立っている。 オオハラ いや、お疲れだったね、ミヤタ君。 ミヤタ いえ、帰りが少し遅く…

尾米タケル
4か月前
5

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑫ 悲劇

悲劇 研究所前広場。 朝礼の立ち位置。 ミヤタ・ムラカミの足元には荷物。 ゴトウダ え~、みなさん、昨日ご紹介したミヤタさんとムラカミさんですが、え~、今日…

尾米タケル
4か月前
3

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑪ 「助けて」 

「助けて」 暗転中。 カドタとミヤタの電話の音声。 この間に研究所ロビーに場面転換。 カドタ ねぇ、ちょっと聞いてんのあんた? ミヤタ 聞いてるよ。 カドタ …

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4か月前
5

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑩ 人間

人間 ベジタブルマンの厩舎。 上手からそれぞれ仕切られた空間に、研対1、一つ空けて研対3、研対4座っている。 ミヤタ、正面を向いて座っている。 以下はミヤタがそ…

尾米タケル
4か月前
3

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑨ 幸せ

幸せ 研対2のハミングが聞こえてくる。 ゆっくりと明かりがつく。 夕方。 研対2、舞台下手よりに座っている。 上手からミヤタ。 研対2、ミヤタに気付いて、 …

尾米タケル
4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑧ 向けられた疑惑

向けられた疑惑 第十二研究所ゲストルーム。 布団に座り、ミヤタの携帯のメールを読むムラカミ。 ムラカミ ベジタブルマンたちが意思を持ち始めているかもしれない―…

尾米タケル
4か月前
6

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑦ 意志

意志 電話の呼び出し音。 農務局特別対策室の室長室。 下手から電話を耳に当てたオオハラ登場。 以下、オオハラ、電話をしながらサプリメントで昼食をとる。 オオハ…

尾米タケル
4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑥ 事件

事件 第十二研究所ロビー。 ゴトウダ・ザイゼン、カレーを食べている。 テーブルに座っているミヤタ。 窓の外を見ているムラカミ。 看守はエプロン姿で立っている。 …

尾米タケル
4か月前
5

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑤ 警報

警報 鳥の声など。 上手から研対2・ミヤタ・ムラカミがやってくる。 ムラカミ あー、疲れた!だから遠回りだっていったじゃねーか。 ミヤタ 文句が多いですよム…

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4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』④ 研究対象2

研究対象2 研対2の歌声が聞こえてくると明転。 地べたに座って歌っている研対2。 その前に白い杭が立っている。 研対2   〽わたしの全部のそのすべて  どこか…

尾米タケル
4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』③ 疑心

疑心 ファーム第十二研究所の敷地内、建物からは離れた場所、 ミヤタ、一人で座っている。 ムラカミ、フランクフルトの載った紙皿を持って上手からやってくる。 ム…

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4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』② 研究対象

研究対象 第十二研究所前の広場。 下手側に研究対象のベジタブルマンたち、上手側にゴトウダ・ザイゼン・クボ・看守・ミヤタ・ムラカミが並んでいる。 ベジタブルマン…

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4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』① ファーム第十二研究所

のつづき ファーム第十二研究所 ファーム第十二研究所ロビー。 舞台上、下手側に応接セット。 以下、客席からは見えないが、下手袖に出入り口に通じる廊下。 上手袖に…

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4か月前
7

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』序 失踪

序 失踪 音楽。 明かりがつくとそこは都内にある古いビル4Fの一室。 エリートの集う農務局内で出世コースからはずれた者が島流しにされる”別室”と呼ばれる場所である…

尾米タケル
4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』背景・あらすじ・登場人物

【背景】 今は未来。 人類の生への渇望に後押しされ、その歩みを止めることなく進化し続けてきたバイオテクノロジーはついに、人間に臓器・血液・肉、その他あらゆる部位…

尾米タケル
4か月前
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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』 終「ミヤタさん」

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』 終「ミヤタさん」

終幕

雨の音。

照明徐々につく。

ビルの屋上。

傘をさし立っているミヤタ。

下手奥よりカッパ姿の男(ムラカミ)。


ミヤタ ……。(男の気配に気付く)

ムラカミ よく、来てくれたな。

ミヤタ ……。

ムラカミ 久しぶりだな。ミヤタ君。

ミヤタ ……本当にあなただったんですね。メールがきた時は特対の連中の罠かと思いましたよ。

ムラカミ 局をやめたらしいな。

ミヤタ あんな

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑬ テロ

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑬ テロ

テロ

農務局特別対策室、オオハラの部屋。

ミヤタ・オオハラ向かい合って立っている。


オオハラ いや、お疲れだったね、ミヤタ君。

ミヤタ いえ、帰りが少し遅くなりまして。申し訳ありませんでした。

オオハラ 何を言っている。あんな事件があったんだ。それは仕方がないよ。

ミヤタ はぁ。

オオハラ いやでも本当にお疲れ様。カドタ君も無事に戻って良かった。今度のあの研究所での一件も、実験

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑫ 悲劇

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑫ 悲劇

悲劇

研究所前広場。

朝礼の立ち位置。

ミヤタ・ムラカミの足元には荷物。


ゴトウダ え~、みなさん、昨日ご紹介したミヤタさんとムラカミさんですが、え~、今日、ファームを去られることになってしまいました。

研対1 え、もう帰るの?

研対2 もう帰るって。

研対3 ……。

研対4 ムラカミさん。

研対2 ミヤタさん。

ゴトウダ あ、一言。お願いします。

ミヤタ あの……。言

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑪ 「助けて」 

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑪ 「助けて」 

「助けて」

暗転中。

カドタとミヤタの電話の音声。

この間に研究所ロビーに場面転換。


カドタ ねぇ、ちょっと聞いてんのあんた?

ミヤタ 聞いてるよ。

カドタ で、どうなのよ、女できたの?

ミヤタ うるさいなぁ、まだだよ。

カドタ まだって何よまだって。あんたホントダメねぇ。

ミヤタ は?

カドタ あんたね、ただ生きてたらその内自然に女できるとでも思ってんじゃないの?

ミヤ

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑩ 人間

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑩ 人間

人間

ベジタブルマンの厩舎。

上手からそれぞれ仕切られた空間に、研対1、一つ空けて研対3、研対4座っている。

ミヤタ、正面を向いて座っている。

以下はミヤタがそれぞれの研対と個別に会話したものの抜粋。


研対1 僕は文字を書いてしまったのでこの施設に入ることになりました。

ミヤタ 文字?文字を書くのがなぜいけないことなの?

研対1 文字は危険だからです。

ミヤタ 危険?隣の厩舎の

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑨ 幸せ

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑨ 幸せ

幸せ

研対2のハミングが聞こえてくる。

ゆっくりと明かりがつく。

夕方。

研対2、舞台下手よりに座っている。

上手からミヤタ。

研対2、ミヤタに気付いて、


研対2 あ、あの、今のはここで教わった歌で……。

ミヤタ あ、いいんだいいんだ……あの、ごめんね何か邪魔ばっかりしちゃって。

研対2 いえ、邪魔だなんてそんな……。

ミヤタ 厩舎を探してたら、君が見えたから。

研対2

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑧ 向けられた疑惑

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑧ 向けられた疑惑

向けられた疑惑

第十二研究所ゲストルーム。

布団に座り、ミヤタの携帯のメールを読むムラカミ。

ムラカミ ベジタブルマンたちが意思を持ち始めているかもしれない――か。


ムラカミ、ミヤタに携帯を差し出す。


ミヤタ あの、ムラカミさん本当に大丈夫なんですか?

ムラカミ ん?何が?

ミヤタ いや、熱が……。

ムラカミ ああ、ウソだよウソ。ここに泊まって何か手がかりがないか調べた

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑦ 意志

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑦ 意志

意志

電話の呼び出し音。

農務局特別対策室の室長室。

下手から電話を耳に当てたオオハラ登場。

以下、オオハラ、電話をしながらサプリメントで昼食をとる。


オオハラ 出ないな。



一方研究所の外、

上手からミヤタが出てくる。


ミヤタ はいはいはいはいはいはい(電話に出て)もしもし。

オオハラ いやぁミヤタ君、どうだいそっちは?

ミヤタ どうもこうもありませんよ室長!今日

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑥ 事件

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑥ 事件

事件

第十二研究所ロビー。

ゴトウダ・ザイゼン、カレーを食べている。

テーブルに座っているミヤタ。

窓の外を見ているムラカミ。

看守はエプロン姿で立っている。

広場ではベジタブルマンたちが石を拾う等している。

ゴトウダ、カレーをたいらげ、

ゴトウダ あ~、食った!

看守 おかわり、たくさんありますんで、言ってくださいね。

ミヤタ ……あの、さっきまでバーベキューしてたんです

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑤ 警報

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑤ 警報

警報

鳥の声など。

上手から研対2・ミヤタ・ムラカミがやってくる。


ムラカミ あー、疲れた!だから遠回りだっていったじゃねーか。

ミヤタ 文句が多いですよムラカミさん。

研対2 すいません。みんなもこっちに向かってると思うんで。

ミヤタ え?

ムラカミ あち~!

研対2、下手の方にベジタブルマンたちを見つけ、

研対2 あ!いました!おーい!

ムラカミ やっと歩かないですむ

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』④ 研究対象2

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』④ 研究対象2

研究対象2

研対2の歌声が聞こえてくると明転。

地べたに座って歌っている研対2。

その前に白い杭が立っている。

研対2
  〽わたしの全部のそのすべて  どこかの誰かのためのもの
   わたしを食べるそのひとは  わたしを感じてくれるかな? 
   わたしを食べるそのときに  わたしを想ってくれるかな?
   どこかの誰かは誰だろう   わたしは誰かの何だろう


ミヤタ、遠方に研対2

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』③ 疑心

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』③ 疑心

疑心

ファーム第十二研究所の敷地内、建物からは離れた場所、

ミヤタ、一人で座っている。

ムラカミ、フランクフルトの載った紙皿を持って上手からやってくる。


ムラカミ こんなところにいたのか。

ミヤタ すいません。ちょっと旅の疲れが出ちゃいました。

ムラカミ そうか。


ムラカミ、腰を下ろしてフランクフルトを食べる。


ムラカミ うん、うめぇ。

ミヤタ ……。

ムラカミの

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』② 研究対象

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』② 研究対象

研究対象

第十二研究所前の広場。

下手側に研究対象のベジタブルマンたち、上手側にゴトウダ・ザイゼン・クボ・看守・ミヤタ・ムラカミが並んでいる。

ベジタブルマンたちは看守と同様、皆全身みどり色の衣装を身にまとい、頭頂部からは植物が突き出ている。


ゴトウダ おはようございます。

ベジタブルマン一同 おはようございます!

ゴトウダ 今日はまずみなさんに紹介しておきたい人たちがいます。農

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』① ファーム第十二研究所

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』① ファーム第十二研究所

のつづき

ファーム第十二研究所

ファーム第十二研究所ロビー。

舞台上、下手側に応接セット。

以下、客席からは見えないが、下手袖に出入り口に通じる廊下。

上手袖に事務所・トイレ・給湯室など。

二階に研究室・宿直室・ゲストルーム。

舞台前方、客席側は一面の大きな窓。

窓の外は広場になっている。

舞台奥、上手の袖に階段があるという設定。

下手から荷物を手にした看守に案内されミヤタ・ム

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 戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』序 失踪

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』序 失踪

序 失踪

音楽。

明かりがつくとそこは都内にある古いビル4Fの一室。

エリートの集う農務局内で出世コースからはずれた者が島流しにされる”別室”と呼ばれる場所である。

舞台下手側に応接セット。

舞台前方客席側には大きな窓があるという設定。

舞台上には二人の男が立っている。

数刻前、突如ここを訪れた農務局特別対策室室長のオオハラと、別室に勤務する局員のミヤタ。

ミヤタ カドタ。カドタマ

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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』背景・あらすじ・登場人物

戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』背景・あらすじ・登場人物

【背景】
今は未来。

人類の生への渇望に後押しされ、その歩みを止めることなく進化し続けてきたバイオテクノロジーはついに、人間に臓器・血液・肉、その他あらゆる部位・器官を提供するための人型生物“ベジタブル・マン”を創り出した。

「限りなく人間に近い植物」と定義される彼らはドナーとして、食料として人類に多大なる恩恵をもたらし、今や人間社会にとって「なくてはならない」そして「あることが当然」の存在と

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