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戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑥ 事件


事件


 
第十二研究所ロビー。

ゴトウダ・ザイゼン、カレーを食べている。

テーブルに座っているミヤタ。

窓の外を見ているムラカミ。

看守はエプロン姿で立っている。

広場ではベジタブルマンたちが石を拾う等している。
 
ゴトウダ、カレーをたいらげ、



ゴトウダ あ~、食った!

看守 おかわり、たくさんありますんで、言ってくださいね。

ミヤタ ……あの、さっきまでバーベキューしてたんですよね?

ゴトウダ ええ。バーベキューのシメはやっぱりカレーでしょ?

ミヤタ カレーですかね?

ゴトウダ お二人にどうしても食べて欲しくて、食べるの待ってたんですよ。あ、遠慮なくどんどん食べてくださいよ!

ミヤタ はあ。

ムラカミ 彼らは外に出してていいんですか?

ゴトウダ 厩舎に戻すとかえって目が届かないので、ここの広場にいるように指示してあります。
 


クボ、上手から、電話をしながら入ってくる。
 


クボ はい、はい……そうですか。ありがとうございました。また何かわかりましたらよろしくお願いします。はい。失礼します。(電話を切る)亡くなった方は男性職員らしいですね。ただ管理棟の方にもまだ詳しい情報はおりてきてないみたいです。

ゴトウダ でも、死体を発見したのは管理棟の人間なんでしょ?

クボ 死体を発見した職員は半ばパニック状態だったみたいで、通報してきた時にはあまり状況を説明できなかったようなんです。そしてそのまま現場に駆け付けた特対の連中に連れて行かれたみたいで。
 


クボ、話しながら電話をテーブルに置き、食べさしのカレーを取り座る。
 


ザイゼン またあいつらなの?

ムラカミ 特対?

クボ あ……。あの、特別対策室の方々です。

ムラカミ あ~……あの“連中”ね。評判良くないでしょう、“あいつら”。

クボ いや……その……。

ムラカミ 気にしないでくださいよ。どうせ権力笠に着ていばり倒してるんでしょう?局の中でも嫌ってる人間多いんですよ。

ザイゼン あら、あなたたちもその一員だと思ってたけど?

ゴトウダ 博士!

ムラカミ 僕たちがですか?勘弁してくださいよ。な?ミヤタ君。

ミヤタ はあ。

ザイゼン ごちそうさま。コーヒーもらえる?

看守 はい。

ゴトウダ あれ、博士またご飯しか食べてないじゃないですか。何でカレーライスでカレー残しちゃうんですか?

ザイゼン わたしの自由でしょ?

ゴトウダ だったら最初からご飯だけよそってもらえばいいじゃないですか。

ザイゼン わたしはカレーと一緒に盛られてるご飯が好きなの!

ゴトウダ わかんないなぁ。

看守 あ、おかわりされる方、本当に遠慮なく言ってくださいね。たくさんありますんで。

ゴトウダ ミヤタさん、おかわりどうですか?

ミヤタ え?あ、まだ大丈夫です。

看守 本当に遠慮なさらないでくださいね。

ミヤタ あ、はい。
 


看守、上手へはける。
 


ムラカミ しかし通報者がパニックを起こしていたってのは、よっぽどひどい死に方してたんですかねぇ。

一同 ……。

ミヤタ 屋内退避っていうのは何なんですか?何から避難してるんですか?
僕たちは。

ゴトウダ それは、わかりません。

ミヤタ でも、屋内退避って、何か想定される事態があったから、発令されてるんじゃないんですか?

ムラカミ つまり、ファームの中では人の死が常に想定されているってことだ。

ザイゼン それは違う!屋内退避は元々実験施設で何か事故があったとき
の為のものなの。

ムラカミ 事故?これだけ広い敷地内の人間が屋内に避難しなきゃならないほどの何が起こるんです?
 


看守、コーヒーを持ってくる。
 


ザイゼン それは……。

ムラカミ (咳をし)……まぁそれは今はいいとして。で、その屋内退避がなぜ今日発令されたんですか?

ゴトウダ わかりません。

ムラカミ 何を聞いてもわからない、か。

ゴトウダ 本当に我々にも何が何だかわからないんですよ!
 


沈黙が流れる。
 


クボ ……実は、ここ一年ほど、ベジタブルマンが殺害される事件が続いているんです。

ミヤタ ベジタブルマンが?

クボ それもだんだん、その……殺害のされ方が異常な感じになっているみたいで。

ムラカミ 異常というのは?

クボ 僕も、この近くで事件が起きた時に、一度現場を見たことがあるんですが。その時は……殺されたベジタブルマンは、両腕がもがれて……う(吐き気に襲われ手で口を覆う)

ザイゼン 大丈夫?
 


ザイゼン、クボの背中をさする。
 


クボ すいません。

ザイゼン いいのよ。無理して話すことない。

クボ すいません……もう大丈夫です。ありがとうございます。

ゴトウダ 本当に大丈夫かい?

クボ はい。もう大丈夫です。

ムラカミ ……で、どんな殺され方をしてたんです?

クボ ……あの時は、殺されたベジタブルマンは、両腕が――う!

ザイゼン 大丈夫?(クボの背中をさする)

クボ すいません。

ザイゼン いいのよ。無理に話すことない。

クボ すいません……大丈夫です。ありがとうございます。

ゴトウダ 本当に大丈夫なのかい?

クボ はい。もう大丈夫です。

ムラカミ で、どんな殺され方を――

ミヤタ もういいでしょう!

ムラカミ 知りたいじゃないか。

ミヤタ 大体想像ついたでしょう!

クボ あの時は……。

ミヤタ クボさんも無理しないで!

クボ ベジタブルマンのうぅ……!

ザイゼン 大丈夫?(クボの背中をさする)

クボ すいません。

ザイゼン いいのよ。無理に話すこと――

クボ あ、いやすいません博士、背中さするの、やめてもらっていいですか?

ザイゼン え?

クボ 余計吐いちゃいそうになるんで。

ザイゼン ああ。

クボ いや、お気持ちはありがたいんですけど。背中は吐きたくても吐けないときにさすってやってください。

ザイゼン あ、ごめん。

クボ いえ、ほんと。博士、そういうとこありますよ。

ザイゼン え、うそ?わたしそういうとこあるの?

クボ いや、研究者としてはもちろん尊敬してますけど。人として、あ、この人わかってないなって思うこと、結構ありますよ。

ザイゼン え、わたし人としてダメなの?ねぇ?ねぇ?
 


皆に問うザイゼン。


 
ミヤタ ……。

ムラカミ ……。

ゴトウダ いや、博士はほんと、そういうとこありますよ。

ザイゼン そうなの?え、ごめんねクボ君。ごめんね!(クボの腕をつかみ、ゆする)

クボ いや、だからだからぁ!気持ち悪いって言ってる人間の体ゆすっちゃ絶対ダメじゃないですかぁ!

ザイゼン あ、ごめん。ごめんなさい。

クボ いや、もうほんと、大丈夫なんで。

ゴトウダ 本当に大丈夫なのかい?

クボ はい、もう大丈夫です。

ムラカミ でどんな殺――

ミヤタ ストップストップ!……これ、所長さんかもしれない。

ゴトウダ え?

ミヤタ この一連のやつ。所長さんのセリフがきっかけになっちゃってるんで。

ゴトウダ え、私?

ミヤタ もう「本当に大丈夫なのかい?」は言わないでください。

ゴトウダ はぁ。何か、ごめんねクボ君。

クボ いえ。僕、しゃべりたいんです。あのベジタブルマンは僕がここに来て最初に担当した研対でしたから。

ゴトウダ ……そうだったね。

クボ ここに来て右も左もわからなかった僕に、博士はあのベジタブルマン……いえ、彼女のことを任せてくれました。

ザイゼン あなたはここに来た時から十分に優秀だったよ。クボ君。

クボ (首を横に振り)一年以上かかりました。博士に色々助言をいただきながらやっと彼女をファームへ戻すのに。……でも、結果的に僕の判断は間違っていた。

ザイゼン あれはわたしのミスだったら!わたしが最終的に許可を出したんだから!

クボ いえ!僕が彼女をきちんと更生できていなかったんです!僕は彼女の中に入り込み過ぎていた。彼女はファームへ戻ってからも、時々僕に会いにここへ……。

ゴトウダ クボ君、もうよそう。

クボ それを、僕は誰にも話せなかった……!彼女の気持ちがうれしくて……彼女の行為がうれしくて!……彼女との時間を……う……失いたくなかったから……!


頭を抱えるクボ。


ザイゼン お願いだからそれ以上自分を責めないで!

クボ その……僕のバカさ加減が……最悪の形で彼女を……。あの日、彼女は僕に会いに来ようとしなければ……ファームで他のベジタブルマンたちと同じように過ごしていたら……!

ザイゼン わかった!わかったから!

クボ 彼女は……彼女はあんな……!
 


一同沈黙。
 


ムラカミ クボさん……つらいことを思い出させてしまって本当に申し訳ない。

ミヤタ ムラカミさん。
 
ムラカミ で、彼女はどんな殺され方――

ミヤタ ムラカミさん!!あんた頭おかしいのかよ!

ムラカミ だって……。

ミヤタ だっても何もないでしょう!今の話聞いてたでしょう!

クボ 彼女は、両腕がもがれううぅ……!(手で口を覆う)

ミヤタ クボさんもしゃべらなくていいですって!

ザイゼン 大丈夫?

クボ すいません。大丈夫です。
 


ゴトウダ、クボに体をむけたところをミヤタに肩を掴まれる。

首を振るミヤタ。

神妙に頷くゴトウダ。

間。
 


看守 あの、カレーおかわりされる方――

ミヤタ・ザイゼン 今じゃないでしょう!

ゴトウダ (同時に)今じゃねぇだろ!

看守 え?

ゴトウダ 状況考えろよ状況を!

看守 ……すいません。


しょんぼりする看守。


クボ ……悪いんだけどさ。ちょっとルー足してもらっていい?

ミヤタ・ザイゼン・ゴトウダ ええ?

看守 はい!
 


看守、皿を持って上手へはける。


 
ザイゼン うそでしょ?

クボ まぁ話を戻しますと、そういうベジタブルマンの殺害事件がここ一年ほど続いていたんです。その内人間が同じ目に合うんじゃないか。ファームで働く人間はみな多かれ少なかれそう思ってました。そこへ今日の事件です。

ザイゼン (ゴトウダに)この子どういう精神構造してんの?

ゴトウダ ねぇ。

ムラカミ なるほど。ついに人間に被害が及んだんじゃないか。それでこういう事態になってるわけですね。

ミヤタ ……犯人の手掛かりはないんですか?

クボ まったく。

ムラカミ ファームの中にテロリストが潜伏してるかもしれないというのは?

ザイゼン そんなのはただのデマだよ。

ムラカミ デマですか?

ザイゼン そうだよ!そんな話はファームができた当初からずっとあった。公安の連中は暇なもんだから誰だってテロリストにしたがるの。

ムラカミ なるほど。じゃあカドタさんがテロリストと関わっているかもしれないというのもただのデマですね?

ザイゼン 何で彼女がテロリストになるの!

ムラカミ いや、関わっているかもしれない、と言ったんです。彼女の失踪と共に、この施設の内部資料がなくなっていた、というようなことはありませんか?

ザイゼン ない。全部確認した。

ムラカミ それはザイゼン博士だけでなく、皆さんで確認されたんですか?

ゴトウダ ええ。私もクボ君も確認しました。

ザイゼン 何より彼女の失踪が決定的になったらイの一番に特対の連中が来て全部調べて行ったんだから。

ムラカミ なるほど。

ザイゼン バカバカしい。あなたたち、やっぱりカドタさんのことを調べる為にここへ来たんだ。

ムラカミ いえ、我々はあくまで研修にやって来たんですが。このミヤタ君はカドタさんとは同期でして。なぁミヤタ君?

ミヤタ はい。
 


ムラカミが話している間に看守、カレーを持ってきてクボにわたす。


 
ムラカミ ゴホッゴホッ。

ミヤタ 彼女がなぜ消えたのか、何か思い当たることはありませんか?
 


一同沈黙。


 
ムラカミ ファームの中でよく人が消えるという話は本当ですか?

ゴトウダ 何年か前から、そういう話を耳にするようになりました。

ムラカミ 一連の失踪事件とカドタさんの失踪とは関係があるとお考えです
か?

ゴトウダ それは何とも……。

ザイゼン 逃げたんだよ。

ミヤタ え?

ザイゼン 彼女、こんな田舎で暮らすのが耐えられなくなって何もかも捨てて逃げたんだよ。いつも愚痴ばかり言ってたじゃない彼女。
 
ムラカミ 過去に、失踪した人間から誰かに連絡があったなんて話は聞いたことありませんか?

ゴトウダ ……いえ。

クボ そういう話は。

ムラカミ 案外、博士の言うとおりかもしれませんねぇ。いや、カドタさんね。いなくなった日から三日続けて、ミヤタ君に電話をよこしてるんですよ。

一同 え?

ムラカミ しかもその電話では彼女、普通に世間話をしていたというんです。何事もなかったかのように。

ザイゼン それ本当なの?

ミヤタ え、ええ。

ザイゼン 彼女と何を話したの?

ミヤタ いや、本当に、ただの世間話をダラダラと。

ザイゼン 世間話って?

ミヤタ ええ、彼女はできたかとか、そっちはどうなんだとか。最近面白いテレビはなんだとか……。

ザイゼン どういうこと?

ムラカミ どういうことなんでしょうねぇ。彼の話を聞いて考えられるのは、カドタさんは何らかの理由があって世間話を装いこの男にSOSを出していた。しかしこの鈍感な男はそれに一切気付かなかった。

ミヤタ そんな……。

ムラカミ もしくは、電話をかけてきたのはカドタさん本人ではなかった。

ミヤタ いや、あれは間違いなく本人ですよ。

ザイゼン もしくは、このミヤタさんが電話の内容に関してウソをついている。

ミヤタ え?

ムラカミ なるほど。そういう考え方もできますねぇ。

ミヤタ いや、ちょっと待ってくださいよ。何で僕がそんなウソをつかなくちゃならないんですか?

ザイゼン 何で?(ミヤタを挑発するように)何でなんだろ?

ムラカミ まぁその辺のことはじきにわかるでしょう。

ミヤタ どういう意味ですか?

ムラカミ ちょっと、お手洗い借りますよ。
 


ムラカミ、咳をしながら上手へはける。


 
ミヤタ ムラカミさん!
 


電話が鳴る。

クボ、電話に出て、
 


クボ はいファーム第十二研究所。はい。あ……屋内退避、解除ですね。そうですか。わかりました。……あ。あの、事件について何かわかったことは…………え?いや、そんなわけないでしょう!だって……いや!ちょっと!

ゴトウダ どうしたの?

クボ 交通事故だったって……。

ゴトウダ 交通事故?

クボ 亡くなった方が単独で起こした交通事故でした、お騒がせしましたって……。

ゴトウダ そんな!交通事故だったらなぜこんな騒ぎに……。

ザイゼン 特対の奴らの情報統制。

ゴトウダ でも、いくら何でも……。

ザイゼン あまりにお粗末だよね。でも逆にこれではっきりした。

ゴトウダ え?

ザイゼン 特対の連中がそこまでしなければならない程の何かがついに起こったってこと。

クボ そうですね。


 
沈黙。

看守、窓の外の異変に気づき、


 
看守 あの……。

ザイゼン 何?

ゴトウダ どうした?

看守 外が少し大変なことになってるみたいですけど……。

一同 え?


研究所前広場の様子。


研対2 (袖から)キャー!
 


舞台下手から駆け込んでくるベジタブルマンたち。
 


研対4 早く逃げろ!

研対3 早く!

研対1 早く!
 


興奮状態の豚がベジタブルマンたちを追いかけまわしている。


 
 バヒー!バヒー!

研対4 ヤバいヤバい!

研対3 い、石投げて!石!

研対2 石!石!

研対1 もう全部投げちゃったよ!
 


しばし舞台上でやりとりあり、上手下手からちりじりにはける。
 


看守 どうしましょうか?

ゴトウダ いい、いい、ほっときゃいいよ。

看守 そうですか?

ゴトウダ とりあえず、今日はもういい時間になっちゃったから、落ち着いたらあいつらもう厩舎に戻しといて。

看守 はい。
 


看守、下手へはける。

上手からムラカミ、額をおさえながら入ってくる。顔が真っ赤になっている。
 


ムラカミ (咳をし)……ふぅ。
 


ムラカミ、席に着く。
 


ミヤタ ムラカミさん、大丈夫ですか!?

ムラカミ んー……。

ミヤタ 顔が真っ赤ですよ!

ムラカミ ちょっと寒気がするな。

ミヤタ ムラカミさん、もしかして病気もらっちゃったんじゃないんですか?

ムラカミ ただの風邪だよ。

ミヤタ さっき、注射打たないからですよ。

ザイゼン 打たなかった?あなた、F型のワクチン打たなかったの?

ムラカミ 小さいときから注射はどうもね。

ザイゼン 何てバカなことを!手どけなさい。(ムラカミの額に手をやり)すごい熱じゃない!

ムラカミ 大したことありませんよ。

ザイゼン 何バカなこと言ってるの!(クボに)なぜ無理矢理にでも注射しなかったの!

クボ すいません。でも……。

ムラカミ ああ、クボさんを責めないでくださいよ博士。僕が無理言ったんですから。すいません、少し横にならせてもらいたいんですが。

ザイゼン ダメだよまず病院に行かなきゃ!

ムラカミ 昔から風邪のときは一晩寝たら治っちまうんですよ。所長、確か上にゲストルームがあるって言ってましたよね?

ゴトウダ ええ、でも宿泊施設使ってもらおうと思ってたんで、掃除してませんよ。

ムラカミ 寝れりゃ何でもいいですよ。(立ち上がる)

ザイゼン ちょっと!ただの風邪じゃなかったらどうするの!

ムラカミ 一晩寝て治らなかったら明日の朝、病院でもどこでも行きますよ。
 


ムラカミ、舞台奥から上手へはける。


 
ザイゼン F型なら命に関わることもあるのよ!ちょっと!……何て人なの?

ゴトウダ あ、僕案内してきます。
 


ゴトウダ、退場。
 


クボ あの、僕残って看病します。

ザイゼン え?ああ、いい、いい。やりかけの仕事があるから、わたしが時々様子をみるから。

クボ あ、じゃあ僕もお手伝いします。

ザイゼン あらそう?じゃあ朝までこっち(酒を飲むしぐさ)の方も付き合ってくれるのね?

クボ え……あ。

ザイゼン 冗談だよ。あなたも毎晩残業で疲れてるでしょ?今日はもう帰って休みなさい。

クボ あ……すいません。あ、じゃあミヤタさん、宿泊施設までお送りしますよ。

ミヤタ あ、いえ。僕もできればここに残りたいんですが。

クボ え?

ミヤタ 一人で帰っても、どうせ寝るだけですし、もう少し、この辺りも散策したいんで。

クボ 散策?
 


ミヤタの携帯電話が鳴る。
 


ミヤタ あ、ちょっとすいません。
 


ミヤタ、下手へはける。
 


クボ どうします?

ザイゼン 好きにさせれば。とりあえず片付けちゃいましょうか。

クボ はい。
 


二人、カレー等片付け始める。下手から看守が入ってきて手伝う。

三人上手へはける。

 
 
 


戯曲『菜ノ獣 –sainokemono–』⑦へつづく


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