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【目印を見つけるノート】586. 蛍雪の賢者と、書くための自由

今日は午後に予定と書きものがあるので、こちらは短めにしようと思っていますが、どうなるでしょうか。

今日は作家さんの言葉ということで。

20世紀の最終盤は記者や編集の仕事をしていて、その業務のひとつに毎月著名人のかたにエッセイをお願いするというのがありました。これが、飛び込み営業もいいところでしたね。人選に窮すると自分の趣味に寄りがちになってしまうので、それだけは気をつけましたが、いや、寄っていたなあ。

最初にお願いしたのが詩人の諏訪優さんでした。ご専門のビート・ジェネレーションではなく、幼少の頃の夏の思い出を書いて下さったのが印象に残りました。絵画的な随想でした。まあ、そこから数年担当して、いろいろなエピソードがありますがまた機会がありましたら書きましょう。
とある女性の作家の方に書いていただいたときのことです。今もご活躍されていますので、お名前は伏せます。
その方とは電話でじかにやりとりをしていましたが、どんな会話だったのかふいにおっしゃっていたのです。
「絞り出すように書いているんです」
私は当時詩やエッセイを同人誌に書いてはいましたが、小説を書くなどとは夢にも思っていませんでした。ですので、小説をコンスタントに書く苦労に思いは至りません。ただ、その方の言葉はずいぶん長く残りました。

それから長い時間が経って、私は小説を書くようになって、その方の言葉をよく思い出しています。その方は当初書かれていたものからジャンルを変えられていますが、今も書かれています。
思えば私がエッセイをお願いした頃、その方はたいへん多くの本を出されていました。ここからは私の想像ですが、もしかするとご自身が「書いていく」ことについて思いを巡らせていらっしゃったのかもしれません。そして今、ご著書を拝見しますと、試行錯誤があって現在の場所にたどり着かれたように思います。

それが絞り出すという言葉で出てきたのかもしれません。

もし、一生書いていこうと思うのならば、そのような作業は意識するにせよしないにせよ、必要なことなのかもしれません。なぜならば10代や20代で書けることと、60代や70代で書けることは明らかに違うからです。人生で起こっていることも、明らかに違うでしょう。その世代なりにテーマも変わっていくのです。私はそのどちらでもありませんが、自分がどのような場所にいて、何が書けるかというのは意識しています。

私はこれ以上はないぐらい小説を書き始めるのが遅かったのです。ですので、書けるだけ書くしかありません。寝ながら書いている時も実はあります。大丈夫なのでしょうか、文章😅自動筆記とか睡眠筆記とか✏️

歴史のジャンルはある意味オールマイティだと思います。自分の選択としては適切だったように思います。えっ、と思われるかもしれませんが、SFもそれが可能なジャンルかもしれません。これまでのこと、これからのことを俯瞰するということで、変化・風化する現在を扱わないからです。

ここ数年でも書くペースには波がありますが、登らなければならない山(テーマ)が常にある感覚は変わっていません。うちのパソコンの長老が20歳!なのを筆頭に、環境が「蛍雪」だなと思いますが、それはまあ、テーマの有無とはまったく関係ないように思います。
私が連日通りかかるお堂の祖は蛍雪で学び過ぎて目を極度に悪くされたそうです。

蛍雪というと聞こえがいいですが、目には毒です。そのようなお姿を毎日拝見して、フルスペックの最新パソコンとスマホをくださいなどとはお願いできません。せいぜい、精進しますので目が悪くなりませんように、というぐらいです。

そのような道具の面もですが、書くことをもっともっと思い切りしたいなというのはずっと思っています。今よりももっともっと。それでないとテーマを書ききれません。

数年前でしたか、森博嗣さんのエッセイジャンルのご本にあった一言にたいへん強い印象を持ちました(ブログでは2019年末だったかと)。

「自由を獲得するために書く」

この一文を拝見したときに、しばらくフリーズしました。「自分が人生を楽しむ自由を得るために書く(仕事として収入にする)」という趣旨だったと思いますが、とてつもなく、ひどく打たれたのです。
私には、「書く自由を獲得するために書く」というように思えました。そして、自分は書く自由ーー環境、学び、決意、時間という意味ですがーーが少ないのだなとつくづく思いました。
たぶん、そこからなのです。
私の準備期間が始まったのは。

さて、森博嗣さんの新刊が複数出ているのは存じているのですが、後でまとめて買ってやる~と誓う今日この頃です。今はこれまでのご本を読み返すのを日課にしています。
とりあえず、手元にあったご著作。


今の気分だとこの曲なのです。
米津玄師『Teenage Riot』

私が米津玄師さんの曲でいちばん好きなのはこれです。いつかは灰になるのならという言葉とBirthday Songという対比が見事ですね。「その間で生きる」ということは正反合の見本のようですが、いちばん大切なのだとつくづく思います。

それでは、お読みくださってありがとうございます。

尾方佐羽

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