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書けない
長編書いてると途中で「何だこれ」と思い始めて何が何だかわからなくなる。
【短編小説】幸せな夢
夢を見ていた。見知らぬ場所で長く付き合っている彼女と手を繋いで歩いている。空を見れば、澄んだ青空に形の良い雲が流れていた。風は暖かく近くの飲食店の良い匂いを運んでくれる。すれ違う人達は笑顔で、それを見ていると胸が温かくなり、二人は自然と笑顔になってしまいそうだった。
しばらく歩いていると、見覚えのある顔があった。彼は確か、高校の同級生だ。穏やかで物静かな彼は唯一の友達と言える存在だった。そんな
【ショートショート】ケーキと紅茶
日本には実に様々な怪談話が存在している。代表的なのがトイレの花子さんや動く人体模型、夜になると鳴るピアノなどだろうか。そのような怪談話は今では都市伝説という名前を変え、ネットを通して子供から大人まで幅広い層を楽しませている。
誰がいつ作り、どうやって広めたのかは一切分からない。ほとんどの話しがいつの間にか広まっていて、出所を探そうにも広大な情報の海と化したネットには真偽のわからない噂が多数存在
【短編小説】夜の公園
目が痛い。
ゆっくりと瞼を閉じて、ベッドにうつ伏せになってみる。しかし痛みは変わらず、意識だけが研ぎ澄まされていく。外を流れる風に揺れる木々の葉擦れやキッチンにある冷蔵庫のモーター音、自分の口から出る呼吸がやけにうるさく感じた。
目を閉じたまま、手探りでスマホを探し、薄目で時間を確認する。時刻は十二時半を過ぎた頃だった。ベッドから起き、テレビを点けると、下品な笑い声のする内容が無さそうなバラ
【ショートショート】ここにいる
会社を出てると、冬の鋭い陽射しが雪に反射し目を眩ませた。近頃降った雪はまだ溶けず残り、所々を白く染め、なんでもない道を足元の不安定な場所へと変えている。陽が出ている時間帯に溶けた雪は夜になると固まり、氷のように固くなる。そうして固くなった雪は溶けるのに時間がかかるからまだしばらくはこうした不安定な足元は続きそうだった。
白井透は雪を避けながら会社の近くの蕎麦屋へ向かった。その蕎麦屋は最近開店し
【短編小説】ねじれの位置
ビールが運ばれてくる。その提供スピードの速さに田中たちはいちいち歓声をあげ、拍手をした。店員は完璧な愛想笑いをして足早に去って行った。
「いやー俺たちも大人だなー。やっとお酒が飲めるようになったよ」
男が大きな声で言った。店内は騒がしく、大きな声でなければ会話が成り立たない。だから皆が必然と大きな声になる。左前に座っている女は普段は大きな声を出すことが無いらしく、頑張って大きな声を出して会
【ショートショート】その名は山吹
ここに一枚の写真がある。真ん中に映る女は笑顔でその周りには光の玉や人の顔やら、わかりやすい幽霊が多数映っている。見るもの皆が震えあがるほどの心霊写真である。
しかし、恐ろしいのは心霊写真ではない。この女の方だ。
一週間ほど前の事である。私は研究室に向かう途中、食堂に寄った。最近かつ丼やハンバーガーなど栄養バランスが偏った食事しか食べていないのが気になっていたため、栄養素を満遍なく摂れそうな
【短編小説】女ならでは夜は明けぬ
休み明けの教室内は幼稚園児のような煩わしい声で満ちていた。韓国がやたらと好きな女の子は雑誌か何かを見て声をあげ、何も考えてなさそうな男の子たちはよくわからない会話をして笑っている。篠崎はそんな光景を後ろから眺め、ほくそ笑んだ。
「よぉ。おはよう。今日もストーカーみたいだな。何見て笑ってんだよ」
後ろからそんな声がした。振り返ると、日焼けした黒い指が頬に突き刺さる。小池は筋肉質な体を揺らして
【短編小説】レンタル
午後八時。竹内は誰もいない会議室にいた。普段は全く気にならない空調の音がやけにうるさく感じる。少し動いた時のスーツの擦れる音や鼻息までも気になってしまうくらい静寂だ。
「失礼します」
後藤がドアをノックして入ってきた。表情には全く覇気がなく、目は翳り、頬はくぼんでいるように見えた。まだ二十一歳と若く、活力のある年頃だというのに、こんな表情をされたら余計に苛立ちを覚えてしまう。竹内は軽く舌打
うまく書けなくても投稿していくスタイル
【短編小説】始まりの日に
寒い。まだ十月の中旬だというのに、もうすっかり冬の匂いがする。通り過ぎる人達は厚手のコートに身を包み、早足でこの寒さから逃げるように歩いている。テレビでは今日はぽかぽか陽気だとか言っていたのに、駅を出た頃には天気が急変して空を雲が覆い、冷たい風が強く吹いてきた。真新しいリクルートスーツを着ているだけの高羽陽は、身を震わせながら自宅へと歩いていた。
テレビなんかを信じて羽織る物を何も準備しなかっ