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伝説のつるぎ 大熊健司
2024年6月16日 00:04
「30番でお待ちの客様―。」 白い帽子に白いシャツ、そして黒いズボンを履いた、おそらく普段は大学生をしているのであろう女性が、待合スペースの方に向かって大きな声で呼びかけた。「はーい。先生、呼ばれましたよ。」「ああ、よかった。」 高森が番号が書かれた紙を渡すと、店員は13,14と書かれた札を手渡された。「こちらカウンターの席となっております。」「わかりました。」「ごゆっくりどうぞ。」
2024年6月2日 00:11
6時間目は睡魔との勝負。これからの放課後の予定に向けて充電しようとたっぷり寝るものもいれば、授業終了を告げるチャイムがなったらすぐに帰れるように帰り支度を済ませるものもいる。しかし今日はLHR。こういうときはなかなかそうするものも少ない。「うん、じゃあ今日はこんなもんだな。」小宮山は生徒たちの方を振り返る。「で、さっきも言ったけど、来週のこの時間にこの修学旅行のグループ決めをするから、な
2024年5月19日 00:12
午前中の仕事を終えた石嶺が休憩室に入ると、右手にスマホ、左手におにぎりを持った佐古が真剣な表情でスマホを眺めていた。「お疲れ。」 石嶺が声をかけたが、佐古からの返事はない。「佐古、お疲れさん。」「お、おお、石嶺。」 佐古は驚いた様子で反応した。「おお。」「ああ、お疲れさま。今から昼休み?」「うん。ここ座っていいか。」「もちろん。」 佐古は石嶺が座りやすいようにと自分の荷物をど
2024年4月28日 00:12
当初の目的通り、油そばを食べる任務を終えた英一は、特にやることもなくなってしまい手持ち無沙汰だった。 それでもこのまま帰るのは忍びない。どうしたものかと駅前をさまよっていると、何やら見たことがある人影が。 英一は彼に近づいて声をかけた。「大菅くん?」 突然声をかけられた圭祐は、飛び上がって驚いた。「わあ、九十九くん。」「ごめん、突然声かけちゃって。」「いや、全然。」 圭祐は首を横
2024年4月21日 00:13
子供の頃は春休みに夏休み、それに冬休みとほとんど季節ごとに休みがあった。 最近は8月の最期の方には学校が始まるところも多く、時代は変わってきているわけだが、それでも1カ月近く休みがあることに変わりはない。 その中でも特にすごいのが大学生である。 冬休みが二週間ほどに、春休みと夏休みは二カ月ずつ。正味学校が通常通り稼働しているのは7カ月ちょっとの期間だけ。 しかも当然のことながら大学は義務
2024年4月14日 00:02
お役所仕事にももちろん繁忙期はある。 人が移動することが多くなると、その分、役所での手続きも増える。その結果として、忙しくなるのだ。 残業すれば、その分は給料として反映されるため、いわゆるブラック企業よりはいいかもしれないが、それでも大変なことには変わりない。 そんな残業続きからか、石嶺は最近あまりジムに通えてなかった。 それなりに仕事は忙しいが、行く時間がないわけではない。しかし、忙し
2024年4月7日 00:05
「お待たせしました、こちら油そばになります。お暑いのでお気を付けください。」 タオル鉢巻をした若い男性店員は、カウンターの上に油そばを置きながらそう言った。「ありがとうございます。」「卓上のトッピングはご自由にお使いください。ごゆっくりどうぞ。」 そういうと、店員は湯気立ち昇る調理場へと戻っていった。 英一は細心の注意を払いながら、カウンターの上に鎮座している油そばをゆっくりと机の上にお
2024年3月31日 00:02
「ふうー。」 高森は自販機でコーヒーを買うと、深いため息をついた。「いただきます。」 こうやって気分が落ち込んでいる時こそ、しっかりと感謝を口にする。高森は昔からそう決めていた。「はあ、美味しい。」 疲れていつもより少し弱った体にコーヒーが沁み渡る。 高森は宙を見つめながら、ただただ黄昏ていた。 誰かが自分の名前を呼んでいる気がする。「…もり。高森、高森!」「はい!」 自分の名
2024年3月24日 00:11
「はあ、疲れたあ。」 いつも通り、公民館での練習を終えた真壁はそう呟いた。「ああ、確かに。真壁さん、最近お休みされてましたもんね。」 清志も着替えながらそう答えた。「そうなんだよ。え、下手したら一カ月ぶりくらい?」「え、そんなになります?」「うん。年初めの練習は来たけど、そっから休んでたもん。」「あ、そうなんですね。なんかあったんですか。」「いや俺な、今年成人式なんだよ。」「あ、
2024年3月10日 00:06
一日の駅の乗降客数を調べてみると、ここが多いのか、と知ることができる。実際その駅に行ってみたことがあれば、ああなるほど、と納得できるかもしれない。といってもあまりの人の多さを実感するだけで、その具体的な人数が把握できるわけではないが。そしてさらに驚くべきことに、世界の乗降客数のランキングを調べてみると、なんとトップ8くらいまで日本の駅が占めているのだ。つまり、日本の上位8駅が、世界の上位
2024年3月3日 00:04
学生の時分はどうにもお金がないもので、いざファミリーレストランに赴いても、フライドポテトの一番大きいサイズを一つと、あとは人数分のドリンクバーだけで数時間粘ってしまうものだ。 店側からすればあまりよろしくない状況だが、バイトなどからすればそれほど問題はない。 ただ中には騒ぎ出す者たちや、コップやお皿などを割ったりする不届き者もいるので、そういう時は静かに注意をする。 相手も所詮は学校帰りの
2024年2月18日 00:04
社会人ともなると、冬休みとは一言で言っても勤続年数や業種によっても様々である。公的な仕事であれば年末年始はそれなりに休みが取れることが確約されているが、サービス業に従事していれば、むしろ書き入れ時であるその期間は休みなく働かなければならない。では学生であればどうか。一般的に大学生なんかは夏休みと春休みがそれぞれ二か月近くあるため、冬休みはそれほど長くはあるまい。しかし小学生や中高生ともな
2024年2月11日 00:11
会社勤めというのは大変である。 朝早い時間に目を覚まし、全身を押しつぶされそうになりながら満員電車に乗り、職場へと向かう。 仕事に時間ともなれば、営業で各地を飛び回り、それで仕事を取ってこれることもなかなかなく、会社に戻れば上司に絞られる。 そんな人たちからすれば、自分の都合で働くことができ、ある意味給料だって青天井な自営業はどれほどいいものか、とあこがれるだろう。 しかし隣の芝生は青く
2024年2月4日 00:08
1月も半ばとなると、当たり前ではあるがすっかりお正月気分も抜け、最早普段と変わらぬ日常である。 役所というのは年末年始の三日ずつ、合わせて六日しか休みがない。 もちろん世の中を見れば、大晦日も元日も、変わりなく働く人もいよう。しかし同じように世の中を見れば、休みを合わせて10連休なんて人もいる。 まあそんな話も、もうこの時期になれば関係ない話なのだが。 もうすっかりお正月モードも抜けてい