グループ

6時間目は睡魔との勝負。
これからの放課後の予定に向けて充電しようとたっぷり寝るものもいれば、授業終了を告げるチャイムがなったらすぐに帰れるように帰り支度を済ませるものもいる。
しかし今日はLHR。こういうときはなかなかそうするものも少ない。
「うん、じゃあ今日はこんなもんだな。」
小宮山は生徒たちの方を振り返る。
「で、さっきも言ったけど、来週のこの時間にこの修学旅行のグループ決めをするから、なんとなく考えとけよ。」
生徒たちの方をぐるっと一通り見ながらそう続けた。
「じゃあ、ちょっと早いけど、どうする?」
「終わりがいい。」「帰りたい。」「締めちゃおう。」
生徒たちが口々にそう呟く。
「分かった分かった。じゃあちょっと待ってな。」
小宮山は何やら職員室から持ってきたであろう手紙に目を通す。
「よし、じゃあこの手紙だけ配るから、これ配り終わったら終わるか。」
「「「いえーい!」」」
大声で喜ぶ生徒たち。
「おい静かにしろ。まだ他のクラスは授業やってるんだぞ。」
小宮山は珍しく生徒たちをピシャリと叱った。
「「「はーい。」」」
どこからとなく聞こえてくる暗い声。
「よし、じゃあ配るぞー。」

「さてと、今日はどうする?」
「ん、いや普通に帰るだろ。」
「えー、つまんないじゃん。ねえ、九十九っち。「
「そうだねー。まあじゃあ、駅ビルの方まで行く?」
「ああ、それくらいから。」
「よし、じゃあそうしよう。」
いつも通り、勇輝、陽介、英一の三人は帰路に着く。
「それにしても、修学旅行どうしようね。」
「ああ、グループ決めのやつ。」
「そうそう。確か小宮山先生、6人か7人班って言ってたじゃん?」
「ああ、そう言ってたな。」
「クラス内だけでってなると、迷うよね。」
「そうだね。」
「とりあえず、僕たち3人は同じグループにしようよ、ね。」
「おお、分かった分かった。」
勇輝は宥めるように言った。
「うん、楽しみだね。」
「しかし、うちの高校は国内旅行なんだな。」
 勇樹は静かにぼやいた。
「ああ、確かにね。」
 英一も同意した。
「そりゃあ修学旅行だもん、そうでしょ。」
 陽介はさも当たり前といった感じで答える。
「いやいや、海外のとこもあるだろ。」
「え?!」
陽介は口をあんぐりと開けた。
「え、高校生が?」
「そうだよ。」
「僕の兄貴の学校は、ハワイだったよ。」
英一が続けた。
「すげえ!」
「おお、そうなんだ。それは普通に羨ましいな。」
「まあでも、海外は海外で大変みたいよ。」
「それはそうだろうけどな。」
「でも意外。まっつん、海外とか興味あったんだ。」
「そりゃあ多少はな。ほら、自分で行こうとするとすごいお金かかるだろ。」
「まあ海外はね。」
「でも別に修学旅行だってタダじゃないでしょ?」
「そうよ。保護者の積立で行ってるよ。でも、自分的には、タダじゃん。」
「それは、そうかな。」
 英一は苦笑いを浮かべる。
「だからせっかくならね、そういうのもいいなって思うわけよ。」
「分からなくはないけどね。」
「まあそんなこと言っても始まんないんだけどな。」
「そうだよ、他所は他所、うちはうちだから。」
「いいこと言うねー。」
「陽介にしては珍しくな。」
「なんだよー。」
陽介は少し怒ってみせた。
「まあいいや、とりあえず来週までにグループのメンバー考えよう。」
「そうだねー。」
三人はそのまま駅ビルに吸い込まれるように入っていった。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

526,418件