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ジェットコースター人生

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まさに山あり谷ありもう一つ谷ありと、自分の意思とは関係なく与えられたジェットコースターのような半生を綴ってみました。 こどもたちも知らない混沌の時代があったことを残したいと思い書… もっと読む
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ジェットコースター人生 その1

ジェットコースター人生 その1

先日私の半生ジェットコースターと書きました。今回はまだコースターに乗っていないときのことです。

夢かなって主にヨーロッパ線に乗務するCAをしていました。今では海外に行くことはごく普通になってきましたが、当時は景気も上向きになってきて急に旅行者が増えたころでした。

DC8、「空の貴婦人」と呼ばれた細く長い機種に乗ることが多かったのですが、いよいよ団体旅行も盛んに宣伝するようになりジャンボジェット

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ジェットコースター人生 その3

ジェットコースター人生 その3

東南アジアの便はけっこうきつく飛行機も中型のDC8が主流でした。

細長く通路が狭い中をカートを押しておなじみの飲み物から始まり

「beef or chicken?」のミールサービスも始まります。

ほぼ毎回満席で時間との戦いもあり、ギャレー内は大忙しでした。

コクピットに飲み物をもっていくと、どこまでも続くいびつな水田の上に降

り注ぐ夕日の光があたかもブッタの国であることを知らせるみたいに

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ジェットコースター人生 その4

ジェットコースター人生 その4

乗務中は揺れがひどく天井に頭が当たるくらい急降下したり、

雷が翼に落ちたり、強風で着陸できず何度も東京湾を旋回して

ようやく車輪が地上にバウンドしながら着陸したりと、いろんなことがありました。

国際線はその当時1社だけだったので訓練も厳しくいつも国の代表できていることを忘れないようにと、なんだかオリンピックの代表選手みたいに

ちょっとしたプレッシャーも持たされました。

いつも口角をあげで

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ジェットコースター人生 その5

ジェットコースター人生 その5

新婚生活は大阪商人のしゅうとと船場のいとはんだったしゅうとめとの4人でスタートしました。                                                    同じ関西と言っても大阪と神戸は全く違います。よく大阪、京都、神戸の違いを面白おかしく取り上げている番組がありますが、内容はほぼ事実です。

大阪はラテン系でお祭り騒ぎのようにイベントを大切にします。母は病弱な

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ジェットコースター人生 その6

ジェットコースター人生 その6

主人は会社をさっさと辞めて、毎日部屋で考え中。突拍子もない思いつきに見えましたが急いで退職となったわけがありました。                         都心で新しくオープンするビルの1区画が知人のご厚意で使えることになったのです。これはチャンスと自ら引き金を引いたようです。「歯車の一つになるより自分で動きたい。」

しかし都会での商売は苦労知らずの若夫婦に出来るはずは多分ありません。

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ジェットコースター人生 その7

ジェットコースター人生 その7

内装はビジネス街なのでホッと一息できるように、店内の椅子と

三つに分けた小部屋は籐で仕切り、10人程座れる丸いベンチは大きな籐の鳥かごで囲みました。寄木で作ったカウンターは緩くカーブしています。

イメージはエーゲ海のリゾート地で、BGMは当時流行っていたイージーリスニングのポールモーリアやイーグルス、カーペンターズなど話し声の邪魔にならないように、浅く流しました。

6本並んだサイホンのフラス

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ジェットコースター人生その8

ジェットコースター人生その8

二件目は鉄板焼きの店になりました。

もともとのお店を最初は居抜きで始めることにしましたが、やはり

使い勝手が悪いのと今までにない内装の店にしようということで、

当時流行りのプールバーのように照明を落として、中央で調理する

シェフをライトアップしました。メインはお好み焼きと鉄板焼きでネーミングもあれこれ考えた末「世界のお好み焼」とし、日本なら豆腐と明太子、

キムチとおもちの入った韓国風、カ

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ジェットコースター人生 その9

ジェットコースター人生 その9

告別式は家の周りを何重にもお焼香に並んでくださった人で、いっぱいになりました。まさかの事態にご近所さんは、入院していた義父のお別れと思われたらしく事実を知って二度驚かれました。

いろんな人が事務的な段取りを尋ねてきたり、決めごとを矢継ぎ早に持ってきます。答えているのは喪主である私であってもそこに私はいなかったような、思考回路が遮断されたみたいにうわの空でした。

悲しみに浸っている時間はありませ

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ジェットコースター人生 その10

ジェットコースター人生 その10

入院中の義父の商売もスライドして私の元に放り込まれました。

若いころ脱サラして起こした仕事は、300件余りの取引先がありました。従業員は私の父親ぐらいの年齢の番頭と、頑固でこわもてがたくさんいて、私が後を継ぐといっても赤子の手をひねるようなものです。それぞれが個人事業主のようにやりたい放題。彼らにすれば、ますますのチャンス到来です。例にもれず、取引先と、勝手にやり取りして、ほとんどが給料以上の収

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ジェットコースター人生 その11

ジェットコースター人生 その11

半年も経つと全体の流れが見えてきましたが、相手もなかなかガードがきつく心を許してくれません。反対にこの仕事を今まで喫茶店の手伝いをしていたとはいえ、嫁ちゃんに出来る仕事ではないと、それぞれから諭されました。

「一からいろいろ教えてください。」「何とか私も役に立ちたいのです。」

毎日午前中は帳簿とにらめっこして、小学生の時に書いていたこずかい帳よろしく収支の合わせだけに集中しました。

事務員の

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ジェットコースター人生 その12

ジェットコースター人生 その12

翌朝は、雲一つない青空で、「落ち着いて相手の話をよく聞こう。」と自分に誓って、家を出ました。いつもの道、いつもの電車ですが、なぜか新しい私!が始まるようで、歩いているうちに元気が出てきました。

まずは喫茶店に。モーニングの準備や、コーヒー豆の状態、ホールの清掃、すべてを整えてお客様を迎えます。8時からの開店ですが、30分も前から店の前で待っていてくださる方も数人いて、開店と同時にすべての物が動き

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ジェットコースター人生 その13

ジェットコースター人生 その13

三日ほどで全員と話ができました。感じたことは全く受け入れられていないということ。私に出来るはずがない。本当は引っ込んでいてほしい。ちゃんと給料を払えるのだろうか。

一つとして希望の持てる内容ではありませんでした。しかし本当にごもっともなことであることは私が一番知っています。まあまあ最初はこんなもんだとあのいかついおじさんたちを相手に差しで話をした自分をほめることにしました。

喫茶店に戻ると、こ

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ジェットコースター人生 その14

ジェットコースター人生 その14

慣れない仕事と人間関係で毎日くたくたになりますが朝はいつもすがすがしく起きれるのは健康だからでしょう。                    事務所で帳簿を見ているとせわしなくおじさんたちが出入りします。特に夏はかき入れ時で毎年超のつく忙しさになる商売なので、「高校野球の時はみんな機嫌が悪くなる」と姑が言ってましたがまさにそのとおりです。

夕方には戻ってくるのでキンキンに冷えたビールを用意しまし

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ジェットコースター人生 その15

ジェットコースター人生 その15

その次の日も猛暑で注文の催促や追加のベルがけたたましくなっています。

その忙しさは、日が暮れても続きました。猫も犬もネズミの手も借りたいくらいです。

一件の電話は珍しいものでした。新装開店した寿司屋さんで、「大きなお祝いの花をありがとうございます。追加で、○○お願いします。」

お祝いの花?追加?ご挨拶ついでにそのお店に行ってみることにしました。

領収書も欲しいということだったので、小さな菓

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