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ジェットコースター人生 その12

翌朝は、雲一つない青空で、「落ち着いて相手の話をよく聞こう。」と自分に誓って、家を出ました。いつもの道、いつもの電車ですが、なぜか新しい私!が始まるようで、歩いているうちに元気が出てきました。

まずは喫茶店に。モーニングの準備や、コーヒー豆の状態、ホールの清掃、すべてを整えてお客様を迎えます。8時からの開店ですが、30分も前から店の前で待っていてくださる方も数人いて、開店と同時にすべての物が動き出します。挨拶に始まってほとんどの方が常連なのでオーダーはインプットしています。9時前には皆さん出勤モードで足早に出て行かれます。

「いってらっしゃい!お気をつけて」と声掛けするのも習慣になりました。お昼までの間、少しゆっくりするのでその間に今日は3人と会うことにしました。最初は番頭さん。創業当時から父の片腕として、みんなを束ねてきた人です。私の知らない昔ばなしから始まって、「この仕事が好きだから、大変だろうけれど辞めずに頑張ってよ。」と逆に励まされました。「こちらもいろいろ教えてください。」と最初は軽いジャブの打ち合いです。

あとの二人は席に座る前から何を言い出すのだろうとばかりに不機嫌です。

今まで父を支えてくれたことに感謝して、まずは雑談から入りました。主人が学生の時から働いている二人ですから不慮の事故とは言え、「ほんとびっくりした!○○ちゃんがこんなことになるとはねえ。もし継ぐのが大変なら、暖簾分けしてもらってもいいよ。」

最初から攻めてきます。「はい、ありがとうございます。」とそこは濁して、ランチタイムの準備に今度は鉄板焼きの店に行きます。

二時までは大忙しですが、終わるとホッと一息。

マンデリンの深くて、コクのある熟成された一杯は疲れを解きほぐしてくれます。一息ついたら、今度は事務所に戻って一人だけの作戦会議です。

急に鍵っ子になった子供たちが気がかりでしたが、彼らを信じることができたのはありがたいことでした。

待たせることに罪悪感はありませんでしたが、おみやげのお菓子が小さな

「ごめんね。」でした。





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