【32】 朝起きたら、鏡を見てにっこり笑う⁉ 最初は難しくて、引きつった!
カラダのあちこちに不具合が出る日々は、当たり前のように気持ちもひっぱられ下降していきます。
「なんか、だるいんですけどー」
ミソちゃんがいつものように不貞腐れています。
長らく沈み込んでいる私。
少しでも元気を出したい。
その想いは切実でした。
とはいえ、どうしたらいいものか。
まずは元気を出さなければ、ポジティブもクソもないのです。
一番簡単にできそうなことを探していた私は、「鏡の前の自分に向かってにっこり笑う」という、本に書いてあった通りのことを試してみることにしました。
なんでも、脳にはミラーニューロンという神経があり、他人に笑いかければ、相手から同じように笑顔を振り向けられる、それは鏡の前の自分に対しても同じなのだと。
笑顔を向けられたミソちゃんは、自然と「いい気分」になるメカニズムだそうです。
「人は楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」とはよく聴く言葉ですが、科学的な実験によっても証明されているそうです。
本によっては「朝、起きたら鏡の前で、まずは自分に今日もきれいだねってにっこり微笑みかけましょう。自分の顔を愛でていると、本当にキレイになれます」などと平然と書くツワモノも……。
「そんなことできるわけないじゃん。そんなんで気分がよくなったり、キレイになるとか、あり得ないから!」
ミソちゃんが白けた様子で私に抗議してきます。
「……まあね。でも騙されたと思って、なんでも柔軟にやってみようよ」
私はミソちゃんの主張をねじ伏せて、半ば強引に鏡の前でニコッ……と笑ってみました。
目の前には、照れ臭そうにやや引きつった笑顔がありました。
口角を上げるだけで精一杯。
髪の毛のない、シミだらけの顔。
笑うと、一層目尻のシワが露になりました。
「キレイだね」なんて、死んでも言えません。
「おばあさんみたいな顔じゃん」
ミソちゃんが悲しそうにつぶやくと、鏡の中の笑顔は消えてしまいました。
それでも私は、ミソちゃんを無視して、毎朝、鏡の前で「にこっ」と笑い続けました。「キレイだね」とは言えないままでしたが、「おはよう」と言ってあげると、以前は引きつっていた笑顔が、慣れてきて自然な笑みに。
長い人生、これまでも他者にはたくさん笑顔を見せてきたはずです。だから、他人に見せてきた笑顔を、自分にだって見せてあげたらいいじゃないか。
だって、今日も、こうして、頑張って生きているんだから。
もう、それだけで、私、すごいんだから。
そうしてある朝のこと。
いつものように鏡を見ると、鏡の向こう側から「ふふふ、頑張ってるじゃん」と、先に笑いかけてきたのです。
「あざーす」
私が元気よく見つめかえすと、あちらの私は、尚一層笑ってくれました。
以来、鏡の向こうの私と「今日もいい一日にしようね」と言い合える仲になった私。
ほんの小さな一歩でしたが、不貞腐れてばかりのミソちゃんが、少し機嫌を直してくれたようでした。
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