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#短編小説
『嘘の絵画』(超短編小説)
「なんだ、この奇妙な絵は」
「見ていると頭がおかしくなりそうだ」
街の美術館には、評判の悪い一枚の絵があった。数百年前に描かれたとされるその絵は「嘘の絵」と罵られ、街の誰からも忌み嫌われていた。というのも、その絵には存在しないはずのものが描かれていたのだ。
それは、夜空に浮かぶ無数の光だった。大陸の最果てにあるこの街の空は一年を通して万年雲に覆われている。空に光が浮いているはずがな
短編小説「ゆなさん」
「ゆなさんって、呼んでよ」
はじめて参加となった、職場での忘年会。くじ引きでたまたま隣席になった彼女に、苗字をさんづけで呼びつつビールを注いだら、そんなふうに即答された。
ぼくは瓶ビールをかたむけながら首をかしげた。ゆな。その名は彼女の本名とまったく異なっていた。苗字、名前となんのつながりも感じられない。ひと文字すら重なっていないのだ。
「ゆなさん、ですか」
「そう。みんなからもそう呼んでもら