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行ってきます。

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「じゃあ、行ってくるわ」
 玄関で靴を履く。
 パタパタと近付いてくる、スリッパの音。
「来年は家にいてね。……いてくれたら嬉しいなぁ」
 お母さんがちょっと寂しげに微笑んだ。
 珍しい。
「それはきついでしょ。来年から社会人なんだから。分からないよ」
 お父さんが自室から出て来た。
「でも……もし、この街から引っ越しても、帰って来て欲しいなぁ」
 靴を履き終え、
「じゃあ、行くわ」
「うん。よいお年を」
「よいお年を。気を付けてな」
 ドアを開ける背中を見守る両親に、
「行ってきます」
 そう言うと、夜風が吹く外へ。
 分かってる。両親の気持ちは。
 大学生になり、年越しを家で過ごすことはなくなった。今年は何の用事もなかったのだが、昨日、友達が一緒に年越しする為に、家に誘ってくれた。それをお母さんに伝えた時は何でもない顔をしていた。
 でも、さっきの玄関先での表情……。
 俺だって、家族で過ごさなきゃと思ってるよ。
 せめて、社会人になる前のこの年ぐらいは。
 でも、誰に向けてなのかは分からない妙な意地を張って、大晦日に外出する理由を必死に探して、結局、家を飛び出した。
 夜空を見上げる。
 風が強い。
 少しだけ、胸が痛んだ。

夜の街へ、作品のネタを集めに行く為の費用に出来ればと思います。