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そらのうた

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#想い

9月を目前に控える君へ

9月を目前に控える君へ

言葉は人を傷つける
図らずも知ってしまった君へ

部屋の隅
両耳をイヤホンで塞いでいる君へ

小宇宙
スマートフォンを握りしめる君へ

君がもし笑えないなら
無理に明るく振る舞ったり
不器用な作り笑顔を浮かべたり
自分を騙さなくて良いと伝えよう

君がもし前を歩きたいなら
片隅で弛んだ身体を動かしたり
表情筋を鍛えるような笑顔を作ったり
ささやかな一歩に止まない喝采を送ろう

君はまだ朝を迎えてい

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海の声

海の声

張り裂けそうな胸の痛みを
分かってほしいと嘆くのは
あまりにも簡単だった

静寂を崩す波音は
時に強く
時に優しく
断続的に
浜辺に押し寄せる

濁りを知らない透き通るそれが

詩的な言葉は
音と色と自然と情で成り立つ

君は詩そのものだった
藍色に近い青い波が
声をかけてくれる
その日常に救われていた

有り難さに気付いた今
目を閉じて耳を傾ける
いつもの海が聴こえる

気持ちを綴った手紙を

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光の筋

注がれる光の筋は
光芒の二文字へ凝縮される

君にとっての僕は
普通名詞に収まるかい?
固有名詞として展開されるかい?

歌は詞があるから成り立つの
いつだったか君は得意気に口にした
新緑に風が吹き込まれて刹那揺れた

何かを構成するには
不要なもの
不可欠なもの
その二つが点在して

君との出会いは
君からの言葉は
君の魅せる表情は
埋まらない欠片を
ぴったり当てはめた

僕にとっての君が光芒で

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気球葬

気球葬

「僕の心臓が止まったら、気球葬してちょうだい」

従兄弟の君は普段と変わらない口そぶりで告げる。夕暮れ、陽は傾いて影は伸びる。

「なんで気球なの?」
「気球なら、物理的に星に近づくから。僕は死後、お星様になれるかもしれない。」

血が繋がっているのに時折突拍子もないことを口にする、不思議な人。

「大きな病を抱えていないのに、どうして死に耽るの?」
「保険だよ。自分が死んだ後、空に還るのか、違う

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窓から眺める桜(詩版)

窓から眺める桃色がひらひら踊った。病室のベッドで足を伸ばす私はそっと手を差し出して窓越しに春を掴む。

窮屈な日々が色褪せないのは、一年に一度、君に会えるから。年々、恰幅の良い出で立ちで私を驚かせる。

舞う桜との真反対ではドアを開ける音。君がこの小宇宙に入ってきた。今年もまた、一段と背丈が高くなったね。

「だって育ち盛りだから。」と切り返す、淡々とした君の言葉選びは嫌いじゃない。「桜が綺麗。」

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勿忘草

凍て風に身が晒されて
ふと思い出すのは君の笑顔

空の灯が映えない夜
眼を瞑り過ぎた日を想う

ああ
好きだったの
もう会えないことも分かってるのに

日がめくり陽が昇ると
記念日でもない今日が訪れる

ああ
我儘だったの
君がくれたものは煌めいていたのに

月は太陽があって始めて輝く
当たり前の事象が身に沁みる

ああ
忘れたくないの
花言葉一つに君への想いと後悔を重ねるだけ
#詩 #想い  #

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冬の空のような

眼を覚ますといつも通り
君からの「おはよう」が届く

だから寒さに負けないで
着替えるのも苦じゃない

君が愛して止まない
空を飾る冬の大三角形

昨日の夜
君は見つけられたかい

僕の住む街からは
少し離れた場所に現れる星彩たち

「冬は嫌いじゃない
かじかむ手も白い吐息も

季節の最後
思い出を振り返るには感傷的になれるから」

君がいつか言ったその言葉
僕なりの解釈を添えて君に返そう

「冬

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moment

緩やかに萎びるように生きるのが命なら
僕も君も大樹さえも今が最も美しい

躊躇いを忘れて駆けて行くのが人生なら
僕も君も光も綺麗な軌跡を残すだろう

水が弾く浸る潤いを齎す
風が舞う踊るこだまする
火が紅に揺れ熱く心灯す

足元や目に届くもの
静かに寄り添うもの

僕らの足跡には
いつだって当たり前が存在した

当たり前に支えられて
微かな生命が今を生きる

君にとって当たり前で
かけがえの無い存

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プロローグを経て

どこかで誰かが号泣必死の映画を観て泣く

「今日から人に優しくしよう」とSNSで決意した誰かは数日後、クラスメイトに平気な顔して罵詈雑言を浴びせる

物語は届かないの?
言葉は届かないの?
思いは届かないの?

私はそっと目を閉じた
私は部屋に閉じ籠った
私は前髪をより伸ばした

現実から逃げたくて
私は藍色の空を撮り始めた

明日なんて来るな
金輪際、夜は空けるな

祈りが通じるはずもなくて

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うたた寝

うたた寝から目覚めて思い出したのは君の横顔

ある時までは見慣れたその横顔
ある時を最後に見たその横顔

恋や愛を疎ましく思っていた僕に

溶けるような優しさ
壊れることのない強さ

教えたくれたのは君の微笑
教えてくれたのは君の美声

目が覚めたよ、中途半端な時間に
目が覚めても、忘れえぬ君の姿形

ああどうしよう、どうにかしよう

有り余った思いやりや想像力は誰のため?
行き場のないそれらを塞

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星屑

星屑

星を想う

あの星は一体
誰の生まれ変わり

非科学的で笑ってしまう
誰でもない ただそこに居るだけ
それが最もらしいはずでしょう

例えば夢破れたとき
例えば失恋したとき

その思いは
空に還るのだろうか

それとも
土に還るのだろうか

どこに行き着くまでもなく
見えないそれを抱える人

それこそ星の数ほどいるでしょう

君の抱えた想いは
君が抱きしめた想いは

過去にならない今でさえ
君を君

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飾らない言葉で君を飾る

飾らない言葉で君を飾る

言葉は想定通りの速度を帯びないから悲しい

直線に沿って君の心臓に届けばもどかしい気持ちにならないのに

僕の思いはスローボールで忘れた頃に君に届くのかな

もしかしたら届きもしないで地べたに着地するかもしれない

梢と梢の間から零れる光のように
すっと君の心臓に届いて、届け

伝えたいことは一つだけ
忘れて欲しくないことは一つだけ

どんな君も どんなときも
言葉には収まらないほどに
僕は君に惹

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