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【小説】イエローディープ
※この物語はフィクションです。細かい設定は実際と異なるものがあります。
風が少し開けた窓をすり抜けて、カーテンを揺らす。
『なにぼーっとしてんだよ』
『もうくすぐらないでよ』
あの子、あんなこと言いながらも楽しそう。
私もそばの席だったらよかったのに。そうしたら一緒に風にくすぐられながらカーテンと笑い合えるのに。羨ましい。
「…さん。…山吹さん?」
「あ、すみません…」
「36頁の
【小説】バーミリオン
※この物語はフィクションです
細かい設定は実際と異なるものがあります。
漆の独特な匂いが嫌いだ。
大抵の人間は漆になど縁がないはずだ。好きか嫌いかも考えたことがないだろう。だがこの村は過半数の家で工房を抱え、漆商品を扱っている漆が名産の村だ。俺の家ももれなくそうで、祖父がたった一人でいまだに工房を持ち、ごっつい手で細々と金になるとは思えないものを作っている。漆製品は基本高く値段を設定しているが