展覧会レポ:出光美術館「日本の美・鑑賞入門 しりとり日本美術」
【約3,200文字、写真約20枚】
初めて行った出光美術館で「しりとり日本美術」という展覧会を鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、非常に満足できました。特に、鑑賞者の立場に立った丁寧な説明と、センスの良いキュレーションは今年一番だと感じました。「わぁ、きれい」だけでなく「なるほど、勉強になる。日本美術をもっと知りたい」と、知的好奇心を刺激されながら楽しく鑑賞できる展覧会でした。もっと多くの人に出光美術館を知ってほしいと思いました。
▶︎アクセス
出光美術館は日比谷駅や有楽町駅から徒歩約5分。同じビルに帝国劇場などがあります。ビルの9階にあるため、通りすがりの人にとって、素敵な美術館があるとは、なかなか気づかないでしょう。
住所:東京都千代田区丸の内3丁目1−1
▶︎出光美術館とは
私は出光美術館に初めて行きました。
出光興産の創業者である出光佐三が蒐集した中には、国宝2件、重要文化財57件が含まれています。彼は特に仙厓義梵や田能村竹田の作品が好きだったそうです。
出光美術館は東京と福岡の門司(2000年開館)に2つあります。東京は2025年をメドにビルの全面建て替えが予定されているそうです。建て替え前に行くことができて良かったです。
私の中で「出光」と言えば『海賊とよばれた男』(百田尚樹)。小説の中で、九州や東京の事務所、美術品蒐集の話が載っていたため、小説を読んだ時の記憶が蘇りました。
▶︎「日本の美・鑑賞入門 しりとり日本美術」
この展覧会のテーマは「鑑賞入門」「楽しむ」。さまざまなジャンルの作品を「しりとり」で親しみやすく配置しています。展示作品の所蔵はすべて出光美術館。なお、全体を通して、しりとり感は薄かったです(「しりとり」以外のしっくり来るワードはなかったか…数珠繋ぎとか?)。
絵画に加えて、工芸品、応用美術もたくさん展示されていました。櫛や硯箱など、どれもものすごく芸が細かく、当時のこだわりが読み取れました。そのため、絵画以外の日本美術の良さも理解でき、興味が湧きました。
展覧会の様子はすべて撮影禁止でした。私は、作品よりも館内の展示の様子や説明書きを撮りたかったです(以下参照)。
この展覧会の最大の特徴は、説明の丁寧さとセンスの良さで、今年一番キュレーションが良いと思いました。美術館で働いている方にも是非意見を伺ってみたいです。
例えば、キャプションにおいて、わかりやすい言葉選び(ゲーム、スタンダード、デザインなど)、漢字の少なさ、ラインマーカーで強調、イラストアイコン、内容に即した文字の書体、英語タイトルをデザインとしてうまく入れることなど。読みやすい工夫が随所にありました。
また、所々に「鑑賞のヒント」があったり、屏風や掛け軸などの詳細な説明が勉強になりました。屏風は、六曲一双などフォーマットがあることを初めて知りました。屏風は絵画と違って自立します。丁寧な説明パネルによって、屏風の面白さを改めて感じることができました。
日本画のフラクタルなデザインには、ヨーロッパの左右対称な構図と違う、意味の対称(カラス⇄白さぎ、春⇄夏など)が散りばめられています。その奥ゆかしさ、デザインの工夫、遊びを説明書きから知ることで、日本画の心意気や趣き(ジャポニズム)がよく理解できました。
私は西洋美術があまり好きではありません。構図や散らばっている小物などに、聖書などから引用される意味をもたせているため、前知識がないと楽しめないからです。よく考えれば、日本画も同じだなと思いました😅
全体を通して自然と興味が湧く説明や構成だったことに加え、1)反射の少ないガラス、2)わかりやすい順路の表記、3)適度に暗い空間など、鑑賞しやすい環境も整えられていました。
また、作品の置き方にセンスを感じました。作品は広い空間をたっぷり使って展示されいることに加えて、作品と作品の間も十分でした。広い展示ケースにデン!と一つだけ屏風が置かれていると、インパクトや静けさ、重厚さが伝わってきました。一部高低がある部屋の構造も面白かったです。
セクションの説明は英語表記が充実していました。一方で、個別作品のキャプションには英語がなかったのはもったいないな、と思いました(どういう事情があるんだろう)。
私はセクションの説明を読んだ上、具体的に個別作品の説明を読むことで、日本美術の特徴を深く理解することができたからです。ただし、外国人観覧者はほとんど見ませんでした。外国人にも日本美術の良さ・面白さが分かりやすく理解できるため、外国へPRを強化した方がよいと思います。
作品の写真撮影は不可でしたが、フォトスペースがあることで、写真を撮りたい勢の不満も解消してくれていました。欲を言えば、1、2個の代表作品だけでも撮影できればベストでしたが…。
企画展以外に、常設としてルオーと陶片の部屋がありました。ルオーの作品は全7点。「聖書の風景」はパナソニック汐留美術館でも見た気がします。陶片の部屋は不思議でした。陶片を集めるのはキリがなさそうです…。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?印象的だったのは、丁寧な説明、センスの良いキュレーションでした。今年一番の分かりやすさだと感じました。そのため、鑑賞入門というテーマ通り、日本美術について、知識が深まり、楽しく鑑賞することができました。もっとたくさんの人に出光美術館について知ってほしいと思いました!
▶︎今日の美術館飯
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