道徳：良いところカードで悩んだ話

こんばんは。特別支援学級で12年間教員をしています。Mr.チキンです。
今回は道徳で作った教材についてです。

誉め言葉のシャワーとは

誉め言葉のシャワーという言葉をご存じでしょうか。
子どもの自己肯定感を高めるために行う、割と有名な手法です。
手順としては以下の通りです。

1. 対象となる子が前に出る。

2. みんなでその子の良いところを考え、伝える

3. 伝えられた子はハッピーな気持ちになる

こんな感じです。
ともすれば友達の悪いところに気付きがちな子どもたち。
「○○くんが廊下走ってた」だとか
「○○さんが私の使ってたブロックを取った」だとか
教員のもとにはたくさんのネガティブ情報が集まります。

きっと、○○くんや○○さんは、
そのたびに自己肯定感が下がっているだろうなぁと思っていました。

そんな時に、道徳や学活の時間を使って行うのが
誉め言葉のシャワーなのです。

特別支援学級でやってみた

道徳の時間の中で行いました。
その時に懸念したのは、「誉め言葉が出てくるだろうか・・・」ということです。
私は念のため、

このような教材を作っておきました。
ラミネートして、少し丈夫にしておきます。
人数分７つ作ります。

実際にやってみると・・・

道徳の授業が始まりました。
対象となる子は「どんなことを言ってくれるだろう」と
ワクワクしながら前に出ます。
ただ、あえて、先ほどの教材は最初からは提示しませんでした。
できるだけ、子どもたちの言葉で伝えてほしかったからです。
一人目…

・姿勢が良い
・優しい
・一緒に遊んでくれる
・姿勢もかっこいい
・うちのクラスじゃないクラスにも優しい。僕が水を飲んでいて、Aくんが　知らない人としゃべって遊んでいるのを見た。
・Aくんが　成長してきたので良かった。

やっぱり、生の言葉は良い！
と思いました。これが2人目までは自分たちの言葉で出てきました。
3人目になると集中が切れたのか、

・優しいし、姿勢もすごく良い。
・給食も、めちゃくちゃ早い。

と、出力がだいぶ落とされた状態になります。
そこで、教材を投入！すると

・いっぱい笑って、いつも元気で、大好きなところ。
・図工が上手だし、聞き方も上手。係もがんばってる。
・かわいいし、頑張り屋だし、面白い。
・スピーチが上手。
・体育が頑張っている。頑張り屋さん。
・図工が上手だし、いっぱい食べるし、走るのが速いし歌も上手。

息を吹き返したかのように言葉がたくさん出てきました。

でも、それが良いことなのか

でも、それが良いことなのかという反省があります。
言葉はたくさん出てきました。
対象の子も喜んでいて、自己肯定感が高まりました。
でも

誉め言葉を考える過程で、その対象の子との思い出をたどったり、思い出を言語化したりする一所懸命な作業は無くなってしまった。

という、なんとなくの喪失感がありました。
「友達の良いところを考える」という日々の生活を深める活動が削られてしまったという考え方ができるからです。

支援教材の難しさ

こういうことは多々あります。
活動をスムーズにするために、支援教材を作るのですが、
スムーズなのが本当に良いことなのだろうか。
道徳って何なんだろうか。

この子の良いところはどこだろう。
何と伝えると喜ぶだろう

と必死に考えることに意義を置くと、
今回の教材は果たして成功だったと言えるだろうか。
特別支援学級教員の教材研究沼は、深い深い・・・