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「マッチング」としても機能していた「会社共同体」

一般的に会社組織というのは常にセクハラ・パワハラ・モラハラ・飲みハラなどが渦巻くブラックな巣窟のように語られることが多い。会社組織からの自由が肯定され、そこに帰属意識を示そうものなら忽ち社畜・奴隷・人生の無駄と揶揄されるようにまでなった。

かつての終身雇用があった頃の会社組織は「日本型経営」の擬似家族、要するに「会社が一生面倒見ます」的な共同体主義だったから社員の人間関係・家族関係、ひいては結婚にまで干渉してくる感じだったわけだがそのぶん職場結婚が多く、ある意味今の「マッチング」的な役割を担っていた面もあった。現に日本型経営が維持されていた80年代までは生涯未婚率が男女ともに5%以下だったが、今では男女ともに20%を超えている。

ただやっぱりあらゆるハラスメントとブラックの巣窟だったから多くの人は当然それを忌避するようになった。今では家族の話は「プライベート」だとして会社で言う必要はないし、女性社員に「まだ結婚しないの?」などと言えば一発でセクハラ認定される。それに加え90年代以降は規制緩和でアメリカ型の非正規で雇用を流動化させた首切り経営が支配的になり、終身雇用も崩壊して日本型経営はすっかり過去の遺物になった。当然職場結婚は激減し、婚姻数自体ももちろん下がり、少子化も進んでいる。

地域も崩壊・会社も崩壊で、帰属する共同体がどこにも無い状態で個人が孤独化し1人世帯も激増。「つきあい」を忌避したぶん寂しい人間も増え、その寂しさを「承認欲求」で埋めようとする人もまた増えた。共同体をうざいと思って解体させたものの結局それに代わるものも無く、その帰結としてマッチングサービスが台頭することにもなる。

そして共同体が無ければ個人と個人とを結びつける共通項も無くなっていくから、年収・身長・学歴・イケメン度・ワクチン接種歴など、全く知らない相手を「属性」で見るしかない感じにもなっている。


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