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エッセイ

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#エッセイ

日々の暮らし、営み

日々の暮らし、営み

毎年9月6日には献杯をしている。今年もまた。たった1枚だけCDを残して、
それぞれの日々に消えていったバンドの歌にこの季節は耳を傾ける。
「今度、呑みましょう!」という約束の日がいつ来るのかなんて分からないけれど、その日を楽しみにしている。それが空の向こう側だろうと、もしかしたら
いま生きているこの世界でだろうと。
僕は夢想する。彼らのCDが、いつか世界のどこかで、時代さえもこえて鳴り響く事を。

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虹の彼方

虹の彼方

流行りの風邪から復帰して、この数週間、まだ体調は万全ではないまま走っている。

Netflixの「アート・オブ・デザイン」という50分弱のドキュメンタリーが面白くて、ゆっくり全話を観た。

ひとりのアーティストが、自分の作品に対してどう向き合っているか、そのアーティストがどういう背景を持っていて、何を考えながら作品を製作しているか、本人だけでなく関係者へのインタビューなどを踏まえて、丁寧に作られた

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夏の空と。

夏の空と。

日々、奇妙な事が起こっていた。
月初めに自分で引いたタロットで、「塔」というカードが出る。端的に言うと、「何かが終わる」というカード。翌週に引いたカードは、「ワンドの8」、意味は「これから忙しくなる」、「待っていた連絡が来る」。
なんとなく習慣で引いて、記録しておくタロット。

先週辺りかな?三件の身に覚えのない代引きの伝票が入っていて、一件は支払ってしまった。
開けてみたらやっぱり身に覚えのない

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夕焼けとおじいちゃん

おじいちゃんの容態が良くないという連絡を受けた僕は、
病院に駆けつけるために、母親から入金された仕送りの全財産をATMで
下ろして、朝一番の飛行機に乗るつもりだった。

「亡くなったよ。午前3時。だからあんたはゆっくり帰って来なさい」
明け方、母親が淡々と僕に言う。
「飛行機じゃなくていいから。新幹線にしなさい」
それで始発の電車に乗って、山陰地方を目指す。
僕が住む街からは、一度、東京駅に出て、

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7/19、朝のプレイリスト

7/19、朝のプレイリスト

ふと目に止まったハッシュタグに連れられて、
たまにはプレイリストでも作ってみよう!と思った出勤前。

まずは8曲の日本語詩で選んでみる。

まずはTHA BLUE HERBから。

10数年前に初めて聴いた時からずっと、何かにつけ、
自分を鼓舞したい時には聴いている。
ブルーハーツの「未来は僕らの手の中」へのオマージュで、トリビュートアルバムに収録されるために作られたけれど、事情があって、そのアル

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夢の跡、夢の続き

夢の跡、夢の続き

思えばもう1週間も経っている、
先週の日曜日。

久しぶりに友達のお家にお邪魔する。
2人の女の子たちが、大きくなっていて、
それぞれに、見ているだけで面白い。
思えば彼女たちが生まれてから、
彼ら夫婦の周りの友達がみな、
カメラを持ち出したんだった。
(僕の過去のポエムにも登場する)

1人、初めて会う女の子がいて、
たまたま風船を膨らませていた僕は、
入ってきて、手洗いをしたあと、
彼女に聞く

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いまはもういないあの場所に、いつかいた二人の幻を見る

いまはもういないあの場所に、いつかいた二人の幻を見る

アルノー・デプレシャン監督の、レア・セドゥのいつわりを観る。
いまやめっきり映画館で映画を観る時間も体力もなく(ゆえ、ダニエル・シュミットもブレッソンもアケルマンもリヴェットもロブ・グリエもほとんど観られていない…)、久しぶりの自宅での鑑賞。

デプレシャンについては、いやカラックスもべネックスもアサイヤスも、コンプリートして観てるわけじゃない(いつかそうしたいけど)。
あの頃、エッフェル塔の下で

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そうやって音楽を選んでいる時がいちばん楽しそうに見える

もう3年も前になるのか、記録を手繰れば、facebookの記事に、この季節の記事が残ってる。ストロベリームーンという、なんだかきらめいていた夜。

僕はちょっとどうかと思うくらいには、ひととうまく喋れないひどい状態で、その時にもだけど、いつものバーでiPhoneを繋いでYOUTUBEから、音楽をかけていた。無我夢中で午前0時からお店が終わる朝5時まで。

それがDJと呼ばれるものだろうが、はたまた

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小さな声を拾う

ここのところまた調子が良くない。

ひとりなのに、ひとりになりたいと思う。

誰といても、気付いたらずっと聞き役で、

今日も誰とも話してないな、と思う日が増えると尚更。

大きな声が鳴り響く時、そっと僕は音楽に逃げ込む。

大きな声が掻き消していく、小さな、まだ言語化されていない感情が更に乱れて、それはもっと静かに、あるいは消えていく。

死にたいと思ったことはない。消えたい、たまに思う。

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音の中だけが自分の居場所

久しぶりに(それはもう本当に久しぶりで、約20年振りになるだろうか)、
通勤中にヘッドフォンをしている。
ちょっとだけ、外の世界のノイズを遮断したい。
それで辿り着いた、YouTubeでのAndrew Weatherall live @
303 Liverpool Bithday という4時間半の動画を、携帯をポケットに入れて、
音を少しだけ大きくしたり、小さくしたり、左手で調整しながら、
先週、

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蛍の光りと煙草の火はどちらが明るいのかねぇ?

夕暮れ時、彼女のお姉さんが不意に呟く。
例えば三人と一匹で歩く道すがら。彼女は笑い出す。
彼女たちの飼っている犬のペコちゃんが、僕たちを振り返っては、
また歩き出す。
「お姉ちゃんとGちゃんはあたしの趣味なんだなって、思ったよ」
その晩、僕の小さな部屋で、お布団に寝っ転がって、彼女は呟く。

ふたりで選んだ映画を観ている。彼女はお布団から画面を見上げている。
その彼女の美しい背中を、僕はソファーか

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何を知り、何も知らなかったことを知る。

3月11日、午前、晴天。

もう14,5年は経つのだろうか?。

友達のバンドについて、宮城と岩手に何度か行った。

当時のあだ名は「島根」だった。

処方された薬とお酒のチャンポンで記憶が定かではないけれど。

最初に行ったのは志津川の港の丘のカフェだった気がする。

「DJ機材を用意しておきますね」というメールのもと、たくさんのCDを持って行った。現地について、機材を「これ使ってください」とい

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Still Changing~きみは美しい

Tシャツについて書こうとふと思い立ち(久しぶりに洗濯したので)、いまこうして文章を書いている。今日は良い天気になりそうだ。

何年も前の夏、友達の紹介でフェスティバルってやつにDJとして呼ばれる。地元のでっかい野外音楽ステージを使ったフェスティバル。もう最初の年が何年前だか、最後に呼ばれたのが何年前だかも、いまでは覚えてはいない。

嬉しくて仕方なかった。ギャラなどなかったし、確か最初の年には携帯

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永遠なるもの

近況にかえて

note自体の更新は一時期に比べたら減ってしまっている。けれども、インスタグラムに(なぜだろうとは思うのだけれど)大量の文章を写真にくっつけて、あげていたりはする。自分のなかでは、noteはカチリとした(自分のなかでは)エッセイを書きたい、インスタグラムはもうちょっとだけラフに書いている。それからこのパソコンに元々入っている文書ソフトに、少しずついくつかの小説を書きはじめている。と

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