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詩の採集

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よいと思った詩・好きな詩などを勝手に採集していきます。作者の方でマガジン追加を希望されない方がいましたらご連絡ください
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マガジン「詩の採集」について

マガジン「詩の採集」について

私、浅浦 藻が個人的にいいなと思った詩を勝手に追加していくマガジンです。

目的としては
1いい(と浅浦的に思われる)詩を他の人にも読んでもらうこと
2浅浦が自分の知見を広めること
があります。

とはいえ浅浦に影響力や拡散力はほぼないので、1に関して詩の作者の方にはメリットはさしてなく、2に関して言うと完全に浅浦にしかメリットがありません。

浅浦が素朴にめちゃいいと思った詩を、勝手に追加してい

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詩:うにうき

雲丹がういているとして
この一歩目からすでに
戦いがはじまっているわけだ
だからぼくは何食わぬかおで
血の歩兵のマントになるだろう

はくいき

すういき

全てのいきに遺る
白亜の振動
たたかいはもうはじまっていた
指のうごき
すいめんを撫でる、叩く、込める
そこにもぼうっとして
野蛮なうにが
まとわりついてるわけだ

ちょうどのものを見ることができない

耳も、鼻も、味蕾も、発声も、
発生もた

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ひかりの角度で

ひかりの角度で

海と空の不透明な恋愛というものは
 フィルムカメラの天気予報では
 測れないから/春を一枚剥ぎ取って
 それは15時のひかりの角度で
 マンションのベランダから
 クジラに乗って/飛び降りてみた

  あめのひは一夜限りの紙タバコふかして
  はれのひでは構造色のオフィスから
  くもりのひは螺旋階段を駆け抜けて

 休日には/居留守だらけの遊園地で
 珈琲を片手に踊っている
 さてこの玄関には/

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[詩] 声

[詩] 声

テレビを突然消したものだから茶の間は混乱した。今夜、皆で歌番組を見ていると、爺の左手が急に電源を切ったのだ。姉や母や婆が〈いいところなのに〉と口々に小声を尖らせる。何が我慢できなかったのか、爺はもう土間に降りようとしている。〈点けてもいい?〉と中学生の姉。もう少し待ちなさい、と父。〈戦争から戻ってかれこれ三十年にはなるのにねえ〉蜜柑を取ろうとしていつも通りに婆が尻をあげる。女の声高い歌謡曲がつっと

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水膜から

最近ぼくは内側にいます。水膜に触れて、る、指先は僕の。ぼくもてをのばす。膜越しに手を合わせて、ね、だから、だからもう、さみしくないんだ。ぼくら。共鳴している。ひとつとひとつのゆびさき。故意に侵した蜃気楼の先へ。ゆける。ゆけるよ、ぼくらなら。ぼくたちなら。だからね、もう、だいじょうぶなんだ。
僕が寂しいときは、さみしくないよって、ぼくがいるからへいきだよって、いっしょにいるから。からだ、は、僕に預け

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【詩】いつもの終点

【詩】いつもの終点

列車の窓硝子を雨粒が穿って
都市に衝き進む
溶かす摩擦熱のように
外界の冷感に
内在する熱
かつかつと
削れつつ崩れ行くグレーの
歪から
不特定多数の指向性が過密する
圧力の足し算引き算に相殺される
無へ
飛び込んだ終点まで
吐き出される原形質の
なれの果ての塊になっても
考えるまもなくひきちぎれて
細やかな熱の粒になって
遊離
削れつつ

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【詩】永久凍土のクリスマス

【詩】永久凍土のクリスマス

12月の夜は部屋のあかりを消してヘッドホンをつける、そして壁にもたれかかる背中のあたたかさ、冷えたコーラを飲んで夢を見る、目をあけたままで眠る。

こんなふうに安らぐこと、こんなふうに息をすること、こんなふうに赦すこと、こんなふうに生きること、そして。

淡いグリーンの光を指先に感じる、まるで生まれる前の走馬灯、淡いパープルの光を唇にあてる、それは永久凍土の20世紀だね。

サンタクロースは麒麟や

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【詞】魚の斜陽

【詞】魚の斜陽

無限に耽る、寡黙な椅子で
カレンダーに記録を付ける
雨と永遠のノイズが先走る明日
軽やかに立ち竦む扉の夢の前

斜陽は高鳴って

消えそう魚になって

斜陽はただ待って消え

そう魚になって

柔らかな窓辺にまどろむ月の歌
カレンダーに既読を付ける
雨と宵闇のダンスが駆け抜ける明日
軽やかに待ち望む扉の夢の夢の前

斜陽は高鳴って

消えそう魚になって

斜陽は漂って消え

そう魚になって

どこ

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[詩]これはシエスタ

[詩]これはシエスタ

めざめたときには過ぎていた
ひこうき雲はもうすっかり青空に散って
見慣れない鉄塔だけがふぉんふぉんと光りそびえる
あれはゼットンみたいなものだ

空に線をえがいて通り過ぎたあなた
見送りになんていくはずなかった
灼熱の玉がこの星を終わらせるときがくる
赤い空の下で立ちつくすがいい
近所で出くわしたみたいに
素知らぬ顔して駆けつけてあげる
背中に手をあててあげる

これはうたた寝じゃない
シエスタだ

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江戸のシイラカンス

江戸のシイラカンス

やァシイラカンスといふものが
飾られていると聞いたのだが
(和服を着崩している、ちらりと見える脇差)
古代も古代の大神秘、アフリカなる地の珍物とな と語る彼の背には、幾人もの影

現代を生くる化石なのだよと父君からは教えられたものだ
鮭 商人はこっそりと見せたのだ それは見紛う事なきただの鮭であるが
詮方無いこと それは彼の真実である

アフリカから来たる白い歯の男は言う コントラストの

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