柿山双葉

現代詩を書いています。たまに、思いついたことも。

柿山双葉

現代詩を書いています。たまに、思いついたことも。

最近の記事

【詩】ぼんぼり、咲いた

いやだなあ、インターネットをぼんぼりなんかにして。なんでも、黒曜石でできたボロボロのインターネットが土の中から出てきたという話で、博物館に飾られるはずだったのに、どういうわけか、そこのぼんぼりになったそうな。 ところで、ナウマンゾウはぼんぼりといかなる関係にあるのでしょうか?むくれてしわしわのぼんぼりは、どこからどう見てもナウマンゾウ。そして、ぼんぼりはインターネットでもあるので、インターネットはインターネットのままに、チュアブル錠として服用することもできますよ。 ナウマ

    • 【詩】天球の歯磨き(カラー版)

      すっきりミントクリーム。いばらのマロンクリーム。南半球はマーブルチョコレート、ぐるぐる回る絵筆、振り落とされないようにしっかりしがみついて。エメラルドグリーン。 水の表面に耳をそばだてて、ひび割れる音のすきまに垂らす色彩の熱湯、沸騰しながら6秒に1回45度ずつ回転する泡たち。ぼこぼこ、きゅるっ。サーモンピンク。 あの砂浜にへばりつくビニールの鳴き声はなんだろう、そう、歯ぎしりのような、それはきっと天球の歯磨きだと思う。土星の輪っか、つまり歯ブラシですね。太陽がまぶしすぎる

      • 【詩】イースト菌の夏

        切り干し大根を脇にはさんで熱をはかるときの音は、救急車をひきちぎるつむじ風の涼しさ。だからメロンパンもこんがり焼き上がるというわけで。焼き立ての平べったい耳心地をひとつください、くださいな。だって今日から鹿児島県、鹿児島のマチュ・ピチュがむくむく膨らみながら船に乗ってやってくるんだし。ただただ39.6℃。電子レンジの誕生日はもうすぐで、大好きなにんじんをひとつまみ、ふたつまみ、つまみ食い。 「ぷくっ」と指を鳴らす、イースト菌の夏よ。

        • 【詩】へべれけ紫信号

          レシートの裏にリュウグウノツカイがくっついていて、「どうしてこんなにしぼんでしまったのか、いっしょに考えてみませんかキャンペーン」のシールをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱にポイ!コンビニから逃げ出した。そして目の前の信号機はバクテリアだった。信号機としてのバクテリアは20歳になってから、そう教わってきた。なぜなら、飲むと酔っぱらうから。酔っぱらうと赤信号と青信号がまざって紫信号をわたることになる。わざわざ紫信号をわたろうとする人は、みんなそろってせつない。横断歩道を丸めて畳んでハ

        【詩】ぼんぼり、咲いた

          【詩】つまづき流し

          さっきからずっと黄色くて、もち運びようにもつるつるで、ひまわりのギックリ腰がはじけとんだせいか、びょうびょうと墨を垂らしながら川を流れていく、お人形。それは、冷めた中華料理にでもまぎれこんで、明日にでもごちそうさまでした、する?あ、しないんだ。で、たがいちがいの古い木材でおおわれていて、中のおはじきもたぷたぷの水銀を揺らす。そう、これまであったありとあらゆるつまづきを隠して。

          【詩】つまづき流し

          【詩】ぽっかりと梅雨

          のどのふちをギコギコ走る風船ガムの香りのバスは、毎週火曜日に窓が5センチずれていく。同じように、焦げ目のついた屋根を削ぐとボロボロとれる錦糸卵をお皿に並べて、ふと葉っぱの先に雨粒の赤紫と青紫が混じり合わずにべろんとめくれて、めくれの位置が5ミリずれていくのも知らずに、ぽっかりと6月の梅雨。

          【詩】ぽっかりと梅雨

          【詩】アメダマガエルと運動2(ツー)

          運動1(ワン)よりも、運動2(ツー)のほうがすきで、それはノルマからずいぶん遠く離れているから、どこまでも歩いてゆける。運動2が先にあって、運動1はあと。なので、運動2はだいぶ黄ばんでいる。運動2はアメダマガエルを通りすぎるものとして知られている。対して運動1は、アメダマガエルを反射して、見えないものにしてしまう。ほとんどのカエルがアメダマガエルであることを教わるのは、だいたい9歳のころ。カエルの口には飴玉3つ。なめられない、置くだけの飴玉。そういう枯山水。

          【詩】アメダマガエルと運動2(ツー)

          【詩】地球が若かったころのニュース

          くるぶしがかゆい。ポリ、ポリ、ポリ、ポリ、と爪でひっかく。きっとくるぶしは、銀河の歯車なんだろうね。そうだね。カーテンがひらひらと風になびいて、その調子です、と言われた気がするので、とりあえず300回かいてみる。なのに、267回目のポリを間違えてボリにしてしまった。あ、と思うと、太陽がうまれて、地球がうまれて、海のなかでびっくりするほど大きな声がこだまする。「光あれ。」あの、すみません、もう光はあります。「光あれ。」あの、あるんですけど。「光あれ。」相手に声が届かないようなの

          【詩】地球が若かったころのニュース

          【詩】ヒッチコックのエジソン

          ヒッチコックに会うのはやめたほうがいいと思います。なぜなら、もうエジソンになっているからです。この世界には、およそ500万人のエジソンがいます。そういうエジソンは、手がすべったり、滝から落ちたり、スリランカの大風でハイチまで吹き飛ばされたり、ささくれを海苔巻きのなかへ混ぜたりします。ここだけの話ですが、ささくれとシーチキンは似ているので、顕微鏡をつかってよく調べる必要があります。対物レンズはともかく、接眼レンズはマンドラゴラで、とんでもない大声を出します。もし、隣の家からこん

          【詩】ヒッチコックのエジソン

          【詩】1978年のことはわかりません

          くちびるは判子。コンパス歩きで押していくので、いちいち避けてください。スイカの種のぼんやりあかるい、えぇ、そんな、せっかくの寝転がる畳の上までびっしりと格子状の、それぞれのぴかぴか電話番号を握りしめているってさ、見たことも聞いたこともない〈1978年〉ホヤホヤの綿ぶくろに刺す針の先は火で炙っておいてくださると助かります、こんなふうに、こんがり。

          【詩】1978年のことはわかりません

          【詩】爪の裏で会いましょう

          ほんのささいな、ほんのささいな花瓶をください。大団円をむかえなかった昨日のように、まあるくおさまらなかった明日のように、今日もガビガビ。 落花生というものの、あずき色したペンダント。 もっと遅く、足の裏がガムテープになって、ぺたんと貼りつく、もっと遅く、蟻の行列にも追いこされ、いい天気だなぁ、この22℃を握りしめたり首に巻きつけたりしたい。 しだいに涼しくなってくる。 うたたねの線香花火ぱちぱち、まつ毛まっ黒焦げでもそのままで、もう眠いから誰とも会わない、どうしてもと

          【詩】爪の裏で会いましょう

          【詩】くるぶしをのぼったら、どこかなどこかな診察室

          くるぶしの階段をのぼると波止場についた。あのトウモロコシをちぎりながら、そうかもしれない、そうかもしれない、と納得した時間だけ広がる海。春のまぼろ橋、薬指からぺたんと座る。 この前、どこかなどこかな診察室でもらったリップクリームのふたを外すと、かぽん、かぽん、かぽん、こだまする。こだまはそのままカリフラワーでもいいし、すこし捏ねると舟になる。で、水の上に浮かべてみたり、ひっくり返して潜水艦に固めてみたり。 ふさふさのパジャマを着た、いびきをかいている朝焼けについて、なにも

          【詩】くるぶしをのぼったら、どこかなどこかな診察室

          【詩】買いものの名前

          買いものの名前はなんだろう。ハムカツをこすり合わせるように、つい、上から2番目の棚にある商品をぜんぶカリカリにしてしまった。ものすごい煙と、咳きこむキツネ。梅干しみたいにすっぱい煙のかすみから、グロッケンのラが、なみなみとこちらへ。あ、これが名前なんだ。 買いものの名前を焦がしちゃいます。 ボロボロの耳栓を捨てられないばかりに、ショッピングのものまねがヘタなまま大人になるなんて、おかしいね。でも、ボロボロは焼き魚と同じように火が通っていて、磁石になる。そういう磁石は、お支

          【詩】買いものの名前

          【詩】オセアニアを嗅いだら

          おしぼりを用意しました。こんなにも蒸し暑いのに、腕という腕がほかほかで、ねじってねじってねじります。そうすると、どうでしょう。ユーカリの木を植えたことになりませんか? なんでもかんでも、オーストラリア。ほら、思い出してみてはいかが、あの夕暮れのむくむくトランポリンを。すぐそばに置きウクレレが用意されていて、ご自由にお持ちください、とのこと。弾けないウクレレをつまびきながら、ぴょんぴょん跳ねる。ぴょん、ぴょん、ぴょん、オーストラリアがほぼニュージーランドになっていくし、ぴょん

          【詩】オセアニアを嗅いだら

          【詩】おしるこプール

          カボチャをくりぬきたい。カボチャをくりぬいてお椀をつくりたい。そのなかにおしるこを注ぐとちょうどいいのはわかっているから、とぷとぷ、ちょっと待ってて、とぷとぷ、焦らないで。べつに誰かから急かされているわけではないけど、ひとりごとのリズムってことで。 メモに書いてあるように、スプーンでおしるこをゆっくりかきまぜる。手順その一、手順その二、手順その三、OK、ええと次は、ひゃあ、べとべとの手でメモ用紙を触っちゃった。おしるこ色の指紋がじんわりしみていく。なんてしみじみしてる場合じ

          【詩】おしるこプール

          【詩】うつぼみ

          いるいる、いらない、やっぱりほしい、すべってころんで駐輪場、あわてる気持ちをまぶしたサラダはご自由にどうぞ、みたいなタップダンスの練習用につける花のかんむりです、と説明書には書いてあるけど、ふだん踊ったりするような趣味はないから、なんとなくお出かけしましょうか?なんていうときに使う。 この花のかんむりを、フラクラって呼んでる。 安いわりによくできたフラクラ。でも、そのままでは心細い。ということで、12束セットを買っていろいろ組み合わせていると、これ、フードになるかもと思っ

          【詩】うつぼみ